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この話を読んでいただき、ありがとうございます。
短いですがこれにて終いです。今までありがとうございました。
あの後、私はライさんに連れられて王城へ行き、謁見許可も何も取っていないのに陛下と逢って、流れるように婚約者になりました。と言うか、ごり押し?ライさんのごり押しと言うか鶴の一声と言うか・・・・・・うん、なんかライさんが「結婚する相手」と紹介したら速攻でした。それでいいのか!
そして王弟妃としての教育が始まり――――あ、その最中にアウラディオ家が没落しました。
いやぁ、いったいどれだけの借金を重ねてたんだろう。人づてに聞いた話で屋敷中に赤札だらけなのに、それでも返済したりない金額だそうで。・・・正規の方法じゃ借金を返せないから、違法ギリギリで返すことになったらしいです。庶民として。
一生かかっても返せない金額は、両親が死んだら姉が返す予定になっているとか。
で、その姉は当然ながら婚約を破棄された。
元混釈者の家族が借金のあるアウラディオ家を嫌がり、そして何より、元婚約者が姉ではない女性を孕ませたことから婚約事態がなかったことにされた。あ、ちなみに元婚約者が孕ませた女性の名前はウンシェだそうです。――嫉妬の魔王を孕ませたのか。
さらにさらに、姉の取り巻きだった連中も関わるのはごめんだとばかりに距離を置き、掌を返した行動をとっているそうです。その筆頭がアクと言う伯爵令嬢らしい。――元命の聖女か・・・。
私にも借金の返済義務があるのかと思ったけれど、どうやら私・・・・・・書類上では存在しない人間らしい。認知はされても、他の人には私と言う存在が知られていても、書類上にリィン・アウラディオと言う人間がいないと言う。どいこと?
まぁ、その理由は姉が生まれたばかりの私に嫉妬し、我儘をごねにごねて書類上の家族にしなかったらしい。――意味が解らない。
後々で私の乳母・・・の、甥と名乗るイシェスから聞かされた話なのだけど。あ、イシェスは王国騎士団の第一師団に所属してました。花形師団ですね、元傲慢の魔王!・・・じゃ、なくて。イシェス曰く、私は生まれた時から神に愛された者らしいそうだ。その言葉を聞いた時点で嫌な予感がした。具体的に言うなら前の人生で最後の最後に落とされた爆弾を、その身に直接浴びるようなそんな予感。まぁ、当たってたけど。
私はかつて空の聖女であり、今世では空の乙女となってしまった。
誰かの害意を感じる。
むしろ悪意だ。もしくは殺意でもいいかもしれない。あれ?意味が違う?いや、私にはそう感じたんだから仕方がない。
空の乙女とは――空に愛されているため、空に関する全ての力を使えるらしい。
風は当然ながら空間にも関与できるって・・・言われたのでやってみたら、確かにできた。出来たけよ。何もないはずの空間を、階段を上るように歩けました。
わぁ、チート・・・!
乾いた笑みが出たのは仕方がない。そして隣で聞いていたライさんが「やっぱりリィンだったか」とか納得したように頷いたのが解せない。
まぁ、私の戸籍がないのは問題だけど、書類がないからアウラディオ家と関係ない。空の乙女にそんなことはさせられない!・・・とか言うことで、免除になりました。やったね。空の乙女であったことには正直、誰かに譲渡したいほどの気持ちだったけど。
逆にただの貴族、いや、人?とにかく姉は日夜、燃えカスのように一気に老け込んだ両親の代わりに汗水垂らし、似合わない労働で借金返済を頑張っているらしい。
・・・そんな根性はあったんだね。
思わず拍手をおくりたくなった。
私に頼らずとも、自分の力で返そうとする意気込みは凄い!と、素直に思った私とは裏腹に、姉を知る人達・・・猫友とエニマは「悲劇のヒロインぶってるだけ」と一刀両断した。いや、まぁ、否定は出来ないけどさぁ。
でも最近、その美貌を狙われて――――娼婦にされたらしい、両親の手で。
わぁ、あれだけ可愛がっていたのに酷い。その情報を聞いた時は他人事のようにそう思い、次いであの容姿ならすぐに借金は返せるだろうな。とは思った。両親が借金に借金を重ねなければ。まぁ、頑張れ。薄情ながらも私はそれしか思わない。
それよりも王弟妃としての勉強が忙しくて、そっちに気を取られる余裕がない!
ユフィーリアさんが侍女としてあれこれ世話してくれて、ルシルフルが護衛として傍にいることには2日目で慣れたけど!勉強には慣れそうにない!まったくね!
・・・でもここ最近、私の仕事はライさんに仕事をさせることなんじゃ?とか本気で思い始めた。
うん、第三師団の騎士達や何故か陛下とか王太子殿下に、ライさんが真面目に仕事をするよう発破をかけて欲しい。みたいなことを言われる。とりあえず、ライさんが来たらそれとなーく、仕事をするように勧めてはいる。けどまぁ、前が怠惰の魔王で現在も怠惰な男だからなー。
やる気にならなきゃ仕事しないよ。
とは伝えたけれど、それでも!と強くお願いされたら断れない。いや、断ることが出来ない雰囲気でした。必死すぎて怖かった。
特に宰相であるツヴァインさんの迫力・・・。泣くかと思った。真面目に。
前の世界であった人達の中で、まだ逢えてない人や名前を聞かない人はいるけれど、それでもこれだけ逢えたんだだからいるはずだ。そんな人達といつか逢えるといいなぁ。と思いつつ勉強を頑張り、姉が見受けされた話を聞き、姉の元婚約者が浮気をして修羅場になった挙句に男として再起不能になった事件を新聞で見ながら月日は流れ――――。
生まれ変わってから18年。
雲一つない晴れ渡る空の下、私はライさんと結婚をした。
これにより晴れて――――陰謀計略悪鬼巣窟その他云々が蔓延る、王宮と言う魔界に永住することになりました。
ライさんの妻、王弟妃として――。
前の世界で魔王陛下の恋人で、結婚をしていなかったから正直、今世で結ばれることが出来て嬉しい。・・・照れくささもあるけれど。
前の人生でも、今の人生でも、姉が結婚するから家を出てよかった。
家を出たからこうして愛する人――ライさんに出逢えた。
それだけは前の人生も、今の人生でも、姉に感謝しよう。
他のことでは何一つ、感謝なんてしないけどね!




