任せるということ
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前書き
人は、
「任せる」
と言われた時が一番緊張する。
信用されるというのは、
嬉しい反面、
少し怖い。
第45話です。
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第45話 任せるということ
翌日。
高架下の事務所。
朝十時。
珍しく全員が集まっていた。
ホワイトボード。
今日は路線図ではない。
大きく一行だけ。
【作戦会議】
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木戸が見る。
「文化祭?」
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「違う。」
敦が答える。
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「説明会。」
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空気が少し静かになる。
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前原。
川本。
黒岩。
桜井。
佐伯。
全員揃っていた。
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前原は煙草を灰皿へ置く。
「まず確認だ。」
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「乗り込む訳じゃねぇ。」
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「喧嘩もしねぇ。」
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「正義の味方もしねぇ。」
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木戸。
「え。」
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「じゃ何すんの?」
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前原。
「見る。」
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「聞く。」
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「帰る。」
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全員。
「……」
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木戸。
「地味。」
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「一番大事だ。」
桜井が静かに言う。
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「証拠がない。」
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「だからまず知る。」
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佐伯も頷く。
「行政も同じです。」
「事実が必要なんです。」
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その時。
陸が手を挙げた。
「俺行けます。」
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翔太も。
「俺も。」
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敦は黙っていた。
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前原が見る。
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「敦。」
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「はい。」
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「お前も行け。」
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敦が少し止まる。
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「俺……ですか。」
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「一番近かった。」
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「……。」
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「だから分かる。」
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静かになる。
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敦は少し考えた。
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そして。
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「……分かりました。」
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前原はそれ以上言わなかった。
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そこへ。
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「ちょっと待った。」
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藍だった。
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全員見る。
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「危なくない?」
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前原。
「危ない。」
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「じゃあ。」
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「だから俺らもいる。」
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藍はまだ納得していない。
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ますみも。
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翔太を見る。
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翔太は笑う。
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「大丈夫。」
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でも。
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その笑顔。
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少しだけ硬かった。
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その空気を壊したのは。
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グエンだった。
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「ワタシモイク!」
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全員。
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「ダメ。」
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即答。
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「ナンデ!?」
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「お前絶対喋る。」
木戸。
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「ソウ!」
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「認めるな!」
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爆笑。
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少し空気が軽くなる。
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その時。
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詩織がカメラを置いた。
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「じゃあ。」
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「帰ってきたら。」
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「みんな写真撮ろう。」
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「え?」
藍が聞く。
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「今を残そう。」
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「成功しても。」
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「失敗しても。」
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「この時間は戻らないから。」
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静かになる。
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奈々恵が笑う。
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「いいね。」
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「集合写真。」
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ますみが少し笑う。
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「まだ早い。」
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「そう?」
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「もう少し。」
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「増える気がする。」
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その一言で、
部屋が静かになる。
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前原が小さく笑った。
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「……そうだな。」
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その笑顔は。
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誰にも見られていなかった。
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会議が終わる。
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翔太は外へ出た。
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一人。
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高架橋の下。
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深呼吸する。
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怖い。
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正直。
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またあの世界を見る。
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また思い出す。
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でも。
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後ろから声がした。
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「翔太。」
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振り返る。
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ますみだった。
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無言で。
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小さな封筒を渡す。
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「?」
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開ける。
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中には。
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笑花の小さなイラスト。
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裏には、
たった一行。
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『ちゃんと帰ってきて。』
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翔太は少し笑った。
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「うん。」
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「帰ってくる。」
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ますみは照れ臭そうに頷く。
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「約束。」
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「約束。」
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遠くで電車が通る。
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高架下に、
いつもの音が響く。
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でも。
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誰も知らなかった。
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この約束が、
これからの物語で、
翔太にとって一番大切な約束になることを。
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後書き
第45話でした。
今回は「戦う準備」ではなく、
「信じて任せる準備」の回です。
そして、ますみが翔太に渡した小さなイラスト。
これは恋愛ではありません。
「居場所へ帰ってきてほしい」
という、仲間としての約束です。
次回、第46話からはいよいよ、
敦・翔太・陸の三人が説明会へ向かう潜入編が始まります。
一方で、前原・川本・黒岩・桜井は、少し離れた場所から彼らを見守ることになります。ここから物語は、静かな緊張感をまといながら次の章へ進んでいきます。




