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WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


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38/105

白い名刺

前書き


世の中には、


正しいことをしているのに、

負ける人がいる。


逆に、


どう見ても怪しいのに、

上手くやっている人もいる。


だから厄介だ。


悪人は案外、

悪人らしい顔をしていない。


第38話です。


⸻


第38話 白い名刺


翌週。


雨。


⸻


高架下の事務所。


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珍しく静かだった。


⸻


藍はノート。


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ますみはスケッチブック。


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航平は地図。


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田中は資料。


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いつもの風景。


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しかし。


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前原と川本がいない。


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黒岩も。


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三日。


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帰りはしているらしい。


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でも。


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昼間は消えている。


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木戸が言う。


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「絶対なんかやってる」


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敦。


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「まぁ」


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⸻


「やってるだろうな」


⸻


⸻


⸻


その時。


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扉が開く。


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ガチャ。


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知らない男だった。


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二十歳くらい。


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金髪。


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背高い。


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ピアス。


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ブランド物。


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⸻


そして。


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めちゃくちゃ人懐っこい。


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⸻


「こんにちはー!」


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⸻


全員止まる。


⸻


⸻


「誰」


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木戸。


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⸻


男は笑う。


⸻


⸻


「リクっす!」


⸻


⸻


「知らん」


⸻


⸻


「でしょうね!」


⸻


⸻


元気だった。


⸻


かなり。


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⸻


名前は


真壁陸(まかべ りく)


21歳


⸻


元ホスト


⸻


現フリーター


⸻


職歴多数


⸻


定職なし


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⸻


木戸。


⸻


「仲間だな」


⸻


⸻


「違います」


⸻


⸻


「違わない」


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⸻


大爆笑。


⸻


⸻


⸻


話を聞くと。


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陸は黒岩の紹介だった。


⸻


⸻


「困ったらここ行けって」


⸻


⸻


またか。


⸻


⸻


敦が思う。


⸻


⸻


最近、


黒岩が紹介所みたいになっている。


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⸻


陸は部屋を見回す。


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⸻


ホワイトボード。


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⸻


絵。


⸻


⸻


地図。


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⸻


ギター。


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⸻


翔太。


⸻


⸻


ますみ。


⸻


⸻


藍。


⸻


⸻


「なにここ」


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⸻


全員。


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「知らん」


⸻


⸻


陸が爆笑する。


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⸻


「好き」


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⸻


⸻


その時。


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ますみが気づく。


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⸻


「その名刺」


⸻


⸻


陸が見る。


⸻


⸻


「あ?」


⸻


⸻


白い名刺だった。


⸻


⸻


会社名。


⸻


⸻


聞いたことのない会社。


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⸻


でも。


⸻


敦は止まる。


⸻


⸻


見覚えがあった。


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⸻


かなり。


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⸻


「それ」


⸻


⸻


陸が見る。


⸻


⸻


「ん?」


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⸻


「どこで貰った」


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⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


陸は少し不思議そうだった。


⸻


⸻


「シェアハウスの説明会」


⸻


⸻


全員止まる。


⸻


⸻


完全に。


⸻


⸻


翔太も。


⸻


⸻


川本たちが追っている。


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⸻


あの話。


⸻


⸻


⸻


陸は続ける。


⸻


⸻


「めっちゃ良い人でしたよ」


⸻


⸻


「社長」


⸻


⸻


「人生変えようって」


⸻


⸻


「仲間作ろうって」


⸻


⸻


「夢追おうって」


⸻


⸻


静かになる。


⸻


⸻


田中が眼鏡を外した。


⸻


⸻


珍しい。


⸻


⸻


かなり。


⸻


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陸はまだ気づいていない。


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⸻


「なんすか?」


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⸻


敦が聞く。


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「入ったのか」


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⸻


陸は笑う。


⸻


⸻


「いや」


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⸻


「怖かったから逃げた」


⸻


⸻


全員。


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「正解」


⸻


⸻


陸が驚く。


⸻


⸻


「え」


⸻


⸻


木戸。


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「えじゃない」


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「お前勘いいな」


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⸻


⸻


陸は頭を掻いた。


⸻


⸻


「いや」


⸻


⸻


「なんか変だったんすよ」


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⸻


「全員同じこと言うし」


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⸻


「全員笑ってるし」


⸻


⸻


「全員夢語るし」


⸻


⸻


「怖くて」


⸻


⸻


奈々恵が小さく言う。


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⸻


「宗教みたい」


⸻


⸻


「それ」


⸻


田中。


⸻


⸻


完全一致だった。


⸻


⸻


⸻


その頃。


⸻


別の場所。


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古い喫茶店。


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⸻


前原。


⸻


川本。


⸻


黒岩。


⸻


⸻


そして。


⸻


新しい人物。


⸻


⸻


五十代。


⸻


スーツ。


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白髪混じり。


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⸻


元刑事。


⸻


桜井正人


⸻


⸻


黒岩の知人だった。


⸻


⸻


桜井が言う。


⸻


⸻


「表向きは合法だ」


⸻


⸻


前原。


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「だろうな」


⸻


⸻


「だから厄介なんだ」


⸻


⸻


桜井は資料を机へ置く。


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⸻


「脅してない」


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⸻


「監禁してない」


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⸻


「契約も本人同意」


⸻


⸻


「警察じゃ動けん」


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⸻


川本が顔をしかめる。


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⸻


「でも実質」


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⸻


「囲い込みだ」


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⸻


桜井は頷いた。


⸻


⸻


「だから俺は嫌いだ」


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静かになる。


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⸻


桜井は前原を見る。


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⸻


「ヨシ」


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「なんだ」


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「お前昔」


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「こういうの一番嫌ってたろ」


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少し沈黙。


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前原は煙草を咥える。


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そして。


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小さく言った。


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「今もだ」


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⸻


夜。


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高架下。


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ますみは笑花を描いていた。


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その隣。


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新しい少年。


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⸻


名前はまだ無い。


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でも。


⸻


少しずつ。


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輪郭が出来ていく。


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そして現実でも。


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また一人。


⸻


真壁陸という。


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騒がしい新キャラが増えた。


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⸻


「お腹空いた!」


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「さっき食っただろ!」


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「別腹!」


⸻


⸻


木戸。


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「仲間だな」


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「嫌です!」


⸻


⸻


今日も事務所はうるさかった。


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でも。


⸻


少しずつ。


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確実に。


⸻


誰かの居場所になっていた。


⸻


後書き


第38話でした。


新キャラ追加です。


真壁陸(21)


* 元ホスト

* 人懐っこい

* 空気読まない

* 直感だけは鋭い

* 危険察知能力高め


そして新脇役。


桜井正人(58)


* 元刑事

* 黒岩の知人

* 現在は探偵事務所勤務

* 前原の過去も少し知っている


次回から、


前原・黒岩・桜井組が

「合法だけど人を壊す仕組み」


へ切り込んでいきます。


一方で、


ますみの創作世界も

少しずつ形になっていきます。

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