↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/105

名前会議

前書き


名前を付けるというのは、


案外大事なことだ。


犬にも。


猫にも。


町にも。


物語にも。


そして。


ずっと心の中にいた誰かにも。


第36話です。


⸻


第36話 名前会議


「会議を始めます」


藍が言った。


⸻


ますみが即答する。


⸻


「始めない」


⸻


⸻


午後。


⸻


高架下の事務所。


⸻


ホワイトボード。


⸻


大きく書かれている。


⸻


【少女の名前会議】


⸻


⸻


ますみ。


⸻


「消して」


⸻


⸻


藍。


⸻


「却下」


⸻


⸻


「なんで」


⸻


⸻


「民主主義だから」


⸻


⸻


「独裁国家じゃん」


⸻


⸻


木戸が爆笑した。


⸻


⸻


「王都だからな」


⸻


航平。


⸻


⸻


「お前まだそれ言うの」


⸻


⸻


⸻


ますみは頭を抱える。


⸻


⸻


なんでこうなった。


⸻


⸻


元は翔太の一言だった。


⸻


⸻


「名前ないの?」


⸻


⸻


そこから。


⸻


藍が暴走した。


⸻


⸻


⸻


奈々恵がコーヒーを飲みながら言う。


⸻


⸻


「じゃあ候補出そうか」


⸻


⸻


「やらない」


⸻


⸻


「やる」


⸻


⸻


藍即答。


⸻


⸻


ますみ敗北。


⸻


⸻


⸻


木戸。


⸻


「ミカ」


⸻


⸻


「理由は」


⸻


⸻


「響き」


⸻


⸻


「雑」


⸻


⸻


田中。


⸻


「雨音(あまね)」


⸻


⸻


少し空気が止まる。


⸻


⸻


「ちょっと良い」


⸻


⸻


ますみが言う。


⸻


⸻


田中が照れる。


⸻


⸻


「ありがとうございます」


⸻


⸻


木戸。


⸻


「採用だな」


⸻


⸻


「まだだ」


⸻


⸻


⸻


グエン。


⸻


「ドラゴン」


⸻


⸻


全員。


⸻


「違う」


⸻


⸻


「ナンデ!?」


⸻


⸻


大混乱。


⸻


⸻


⸻


その時。


⸻


翔太が言った。


⸻


⸻


「笑ってるんだよね」


⸻


⸻


静かになる。


⸻


⸻


ますみが見る。


⸻


⸻


翔太は続ける。


⸻


⸻


「あの子」


⸻


⸻


「泣きそうだけど」


⸻


⸻


「笑ってる」


⸻


⸻


ますみは少し黙る。


⸻


⸻


そうだ。


⸻


⸻


ずっとそうだった。


⸻


⸻


昔から。


⸻


⸻


何年も。


⸻


⸻


⸻


翔太が考える。


⸻


⸻


「なら」


⸻


⸻


「なんだろ」


⸻


⸻


「……笑花?」


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


⸻


笑う花。


⸻


⸻


泣きそうで。


⸻


笑っている。


⸻


⸻


ますみが止まる。


⸻


⸻


かなり長く。


⸻


⸻


そして。


⸻


スケッチブックを見る。


⸻


⸻


少女を見る。


⸻


⸻


小学生の頃から描いていた。


⸻


⸻


ずっと。


⸻


⸻


そして。


⸻


小さく言った。


⸻


⸻


「……いいかも」


⸻


⸻


藍。


⸻


「決定!」


⸻


⸻


「早い!」


⸻


⸻


事務所爆笑。


⸻


⸻


⸻


その時だった。


⸻


ガチャ。


⸻


⸻


扉が開く。


⸻


⸻


全員振り向く。


⸻


⸻


前原だった。


⸻


⸻


でも。


⸻


少し違う。


⸻


⸻


顔が。


⸻


⸻


かなり機嫌悪い。


⸻


⸻


川本もいる。


⸻


⸻


そして。


⸻


黒岩。


⸻


⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


⸻


木戸が察する。


⸻


⸻


「面倒なやつ?」


⸻


⸻


黒岩。


⸻


「面倒なやつ」


⸻


⸻


前原。


⸻


「最悪なやつ」


⸻


⸻


かなり珍しい。


⸻


⸻


⸻


敦が聞く。


⸻


⸻


「何か分かったんですか」


⸻


⸻


黒岩は頷く。


⸻


⸻


一枚の封筒を出す。


⸻


⸻


机へ置く。


⸻


⸻


住所。


⸻


名前。


⸻


会社。


⸻


⸻


そして。


⸻


数枚の写真。


⸻


⸻


若者たち。


⸻


⸻


十代。


⸻


二十代。


⸻


⸻


笑っている。


⸻


⸻


でも。


⸻


どこか不自然。


⸻


⸻


黒岩が言う。


⸻


⸻


「シェアハウスって名目だ」


⸻


⸻


静かになる。


⸻


⸻


「仕事紹介」


⸻


⸻


「住む場所紹介」


⸻


⸻


「仲間紹介」


⸻


⸻


「夢も応援」


⸻


⸻


木戸。


⸻


「胡散臭ぇ」


⸻


⸻


黒岩。


⸻


「正解」


⸻


⸻


⸻


敦は写真を見る。


⸻


⸻


嫌な予感。


⸻


⸻


かなり。


⸻


⸻


黒岩が続ける。


⸻


⸻


「逃げ場なくなった若い連中集める」


⸻


⸻


「借金背負わせる」


⸻


⸻


「仕事辞めさせる」


⸻


⸻


「依存させる」


⸻


⸻


「逃がさない」


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


⸻


ますみも。


⸻


藍も。


⸻


話を聞いている。


⸻


⸻


翔太の顔が少し変わった。


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


黒岩は気づく。


⸻


⸻


「知ってる顔か?」


⸻


⸻


翔太が少し俯く。


⸻


⸻


長い沈黙。


⸻


⸻


そして。


⸻


小さく言った。


⸻


⸻


「同じ高校の先輩」


⸻


⸻


全員止まる。


⸻


⸻


翔太は続ける。


⸻


⸻


「いました」


⸻


⸻


「そこ」


⸻


⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


一気に。


⸻


⸻


前原が見る。


⸻


⸻


「会ったことあるか」


⸻


⸻


翔太は頷く。


⸻


⸻


「あります」


⸻


⸻


「何回も」


⸻


⸻


前原。


⸻


「そうか」


⸻


⸻


短い返事。


⸻


⸻


でも。


⸻


敦は分かった。


⸻


⸻


前原の中で。


⸻


何かが決まった。


⸻


⸻


その頃。


⸻


ますみはスケッチブックを開いていた。


⸻


⸻


少女のページ。


⸻


⸻


泣きそうで笑う少女。


⸻


⸻


その横へ。


⸻


鉛筆で。


⸻


小さく書く。


⸻


⸻


『笑花』


⸻


⸻


少しだけ。


⸻


少女が近くなった気がした。


⸻


⸻


そして物語は。


⸻


静かに。


⸻


次の段階へ進み始める。


⸻


後書き


第36話でした。


今回は二つの大きな前進があります。


創作組


* 少女の名前が「笑花(えみか)」に決定

* ますみが初めて自分の創作を他人と共有


前原組


* 黒岩の調査が進展

* 問題のシェアハウスが浮上

* 翔太の過去と接点発覚


そしてここから、


創作組の「世界を作る話」と、


前原組の「居場所を守る話」が、


少しずつ一本の物語へ繋がっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。