名前会議
前書き
名前を付けるというのは、
案外大事なことだ。
犬にも。
猫にも。
町にも。
物語にも。
そして。
ずっと心の中にいた誰かにも。
第36話です。
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第36話 名前会議
「会議を始めます」
藍が言った。
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ますみが即答する。
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「始めない」
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午後。
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高架下の事務所。
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ホワイトボード。
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大きく書かれている。
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【少女の名前会議】
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ますみ。
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「消して」
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藍。
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「却下」
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「なんで」
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「民主主義だから」
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「独裁国家じゃん」
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木戸が爆笑した。
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「王都だからな」
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航平。
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「お前まだそれ言うの」
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ますみは頭を抱える。
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なんでこうなった。
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元は翔太の一言だった。
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「名前ないの?」
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そこから。
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藍が暴走した。
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奈々恵がコーヒーを飲みながら言う。
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「じゃあ候補出そうか」
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「やらない」
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「やる」
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藍即答。
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ますみ敗北。
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木戸。
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「ミカ」
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「理由は」
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「響き」
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「雑」
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田中。
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「雨音」
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少し空気が止まる。
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「ちょっと良い」
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ますみが言う。
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田中が照れる。
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「ありがとうございます」
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木戸。
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「採用だな」
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「まだだ」
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グエン。
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「ドラゴン」
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全員。
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「違う」
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「ナンデ!?」
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大混乱。
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その時。
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翔太が言った。
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「笑ってるんだよね」
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静かになる。
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ますみが見る。
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翔太は続ける。
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「あの子」
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「泣きそうだけど」
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「笑ってる」
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ますみは少し黙る。
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そうだ。
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ずっとそうだった。
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昔から。
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何年も。
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翔太が考える。
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「なら」
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「なんだろ」
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「……笑花?」
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部屋が静かになる。
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笑う花。
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泣きそうで。
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笑っている。
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ますみが止まる。
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かなり長く。
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そして。
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スケッチブックを見る。
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少女を見る。
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小学生の頃から描いていた。
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ずっと。
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そして。
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小さく言った。
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「……いいかも」
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藍。
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「決定!」
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「早い!」
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事務所爆笑。
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その時だった。
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ガチャ。
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扉が開く。
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全員振り向く。
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前原だった。
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でも。
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少し違う。
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顔が。
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かなり機嫌悪い。
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川本もいる。
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そして。
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黒岩。
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空気が変わる。
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木戸が察する。
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「面倒なやつ?」
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黒岩。
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「面倒なやつ」
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前原。
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「最悪なやつ」
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かなり珍しい。
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敦が聞く。
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「何か分かったんですか」
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黒岩は頷く。
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一枚の封筒を出す。
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机へ置く。
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住所。
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名前。
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会社。
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そして。
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数枚の写真。
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若者たち。
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十代。
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二十代。
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笑っている。
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でも。
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どこか不自然。
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黒岩が言う。
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「シェアハウスって名目だ」
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静かになる。
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「仕事紹介」
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「住む場所紹介」
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「仲間紹介」
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「夢も応援」
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木戸。
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「胡散臭ぇ」
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黒岩。
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「正解」
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敦は写真を見る。
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嫌な予感。
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かなり。
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黒岩が続ける。
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「逃げ場なくなった若い連中集める」
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「借金背負わせる」
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「仕事辞めさせる」
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「依存させる」
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「逃がさない」
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部屋が静かになる。
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ますみも。
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藍も。
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話を聞いている。
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翔太の顔が少し変わった。
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「……」
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黒岩は気づく。
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「知ってる顔か?」
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翔太が少し俯く。
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長い沈黙。
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そして。
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小さく言った。
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「同じ高校の先輩」
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全員止まる。
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翔太は続ける。
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「いました」
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「そこ」
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空気が変わる。
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一気に。
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前原が見る。
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「会ったことあるか」
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翔太は頷く。
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「あります」
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「何回も」
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前原。
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「そうか」
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短い返事。
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でも。
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敦は分かった。
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前原の中で。
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何かが決まった。
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その頃。
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ますみはスケッチブックを開いていた。
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少女のページ。
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泣きそうで笑う少女。
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その横へ。
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鉛筆で。
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小さく書く。
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『笑花』
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少しだけ。
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少女が近くなった気がした。
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そして物語は。
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静かに。
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次の段階へ進み始める。
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後書き
第36話でした。
今回は二つの大きな前進があります。
創作組
* 少女の名前が「笑花」に決定
* ますみが初めて自分の創作を他人と共有
前原組
* 黒岩の調査が進展
* 問題のシェアハウスが浮上
* 翔太の過去と接点発覚
そしてここから、
創作組の「世界を作る話」と、
前原組の「居場所を守る話」が、
少しずつ一本の物語へ繋がっていきます。




