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WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


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33/105

完成しない世界

前書き


居場所というのは、


作った瞬間から、

終わる可能性を抱えている。


だから人は、


本当に大事になる前に、

少し距離を置こうとする。


傷つきたくないから。


第33話です。


⸻


第33話 完成しない世界


日曜日。


午後三時。


⸻


高架下の事務所。


⸻


珍しく昼。


⸻


そして珍しく。


⸻


全員いる。


⸻


木戸。


⸻


ソファ。


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藍。


⸻


ホワイトボード。


⸻


カナコ。


⸻


ギター。


⸻


航平。


⸻


地図。


⸻


レン。


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パソコン。


⸻


奈々恵。


⸻


コーヒー。


⸻


田中。


⸻


資料。


⸻


グエン。


⸻


お菓子。


⸻


ますみ。


⸻


スケッチブック。


⸻


そして。


⸻


敦。


⸻


コーヒー係。


⸻


⸻


「なんで俺だけ役割弱いんだよ」


⸻


木戸が言う。


⸻


「寝る係」


⸻


藍。


⸻


「必要」


⸻


ますみ。


⸻


「必要なの?」


⸻


⸻


大爆笑。


⸻


⸻


その時。


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レンがモニターを回した。


⸻


⸻


「見ろ」


⸻


⸻


全員集まる。


⸻


⸻


画面には。


⸻


藍の世界。


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⸻


タイトルロゴ。


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地図。


⸻


キャラクター。


⸻


簡単な紹介ページ。


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⸻


まだ未完成。


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でも。


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確かに。


⸻


“形”


になっていた。


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⸻


藍が固まる。


⸻


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「……え」


⸻


⸻


「え?」


⸻


⸻


「え?」


⸻


⸻


レンが笑う。


⸻


⸻


「だから作った」


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⸻


「なんで」


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「面白そうだから」


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⸻


いつもの答え。


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⸻


でも。


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藍の目が少し潤んでいた。


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⸻


頭の中だけだった世界。


⸻


⸻


誰にも見せなかった世界。


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⸻


それが。


⸻


画面の中にある。


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⸻


「うわぁ……」


⸻


⸻


グエンが一番感動していた。


⸻


⸻


「ウワァァァ!!」


⸻


⸻


「お前毎回リアクションでかいな」


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木戸。


⸻


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「スゴイ!」


⸻


⸻


グエンは本気だった。


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⸻


⸻


航平が少し照れながら言う。


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⸻


「路線図も入れた」


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「見た」


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「駅名考えて」


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⸻


「増やすな!」


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⸻


藍が叫ぶ。


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大混乱。


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その時だった。


⸻


ますみが。


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静かに言った。


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⸻


「いいな」


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⸻


部屋が少し静かになる。


⸻


⸻


藍が振り返る。


⸻


⸻


ますみは画面を見ていた。


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⸻


「こういうの」


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⸻


「形になるの」


⸻


⸻


小さい声。


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⸻


奈々恵だけが気づく。


⸻


⸻


藍も。


⸻


⸻


これは。


⸻


羨ましい。


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⸻


そういう声だ。


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⸻


⸻


藍は少し考える。


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⸻


それから。


⸻


ホワイトボードの前へ行く。


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⸻


ペンを持つ。


⸻


⸻


そして。


⸻


大きく書いた。


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⸻


【ますみ担当】


⸻


⸻


ますみ。


⸻


「え?」


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⸻


【キャラクターデザイン】


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⸻


沈黙。


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⸻


ますみ。


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「は?」


⸻


⸻


藍。


⸻


「決定」


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⸻


「待って」


⸻


⸻


「却下」


⸻


⸻


「却下できるでしょ!?」


⸻


⸻


木戸が吹き出した。


⸻


⸻


「独裁国家だ」


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航平。


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「王都だからな」


⸻


⸻


「関係ないでしょ!」


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⸻


ますみ真っ赤。


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⸻


でも。


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誰も笑っていなかった。


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本当に。


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⸻


藍は言う。


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⸻


「私さ」


⸻


⸻


「うん」


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⸻


「その子好きなんだよね」


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⸻


ますみが止まる。


⸻


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「え」


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⸻


藍はスケッチブックを指差した。


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⸻


あの少女。


⸻


⸻


泣きそうで笑う少女。


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⸻


「ずっと描いてるじゃん」


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


「だから」


⸻


⸻


「描いて」


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


⸻


ますみは何も言えない。


⸻


⸻


たぶん。


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初めてだった。


⸻


⸻


「描いてほしい」


⸻


と言われたのが。


⸻


⸻


⸻


その時。


⸻


ガチャ。


⸻


⸻


扉が開く。


⸻


⸻


全員見る。


⸻


⸻


そこにいたのは。


⸻


見知らぬ少年だった。


⸻


⸻


十七歳くらい。


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痩せている。


⸻


パーカー。


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顔色悪い。


⸻


⸻


そして。


⸻


明らかに怯えていた。


⸻


⸻


「……あの」


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


⸻


少年は前原を見る。


⸻


⸻


そして。


⸻


小さく言った。


⸻


⸻


「黒岩さんに」


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⸻


「ここ行けって」


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⸻


前原の顔が変わる。


⸻


⸻


川本も。


⸻


⸻


敦も気づく。


⸻


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来た。


⸻


⸻


黒岩が言っていた。


⸻


⸻


“居場所を失った側”


が。


⸻


⸻


少年は震えていた。


⸻


⸻


「……泊まる場所」


⸻


⸻


「なくて」


⸻


⸻


その一言で。


⸻


部屋の空気が変わった。


⸻


⸻


創作。


⸻


地図。


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音楽。


⸻


絵。


⸻


⸻


その向こう側にある。


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もっと現実の話。


⸻


⸻


それが。


⸻


初めてこの場所へ入ってきた。


⸻


⸻


そして前原は。


⸻


しばらく少年を見たあと。


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いつものように言った。


⸻


⸻


「入るなら鍵閉めろ」


⸻


⸻


少年は少しだけ泣きそうになった。


⸻


⸻


後書き


第33話でした。


ここで物語は二つの流れになります。


創作組


* 藍

* ますみ

* カナコ

* 航平

* レン

* 奈々恵


「世界を形にする話」


⸻


前原組


* 前原

* 川本

* 敦

* 黒岩

* 新登場の少年


「居場所を失った人間の話」


⸻


そして実はこの二つ。


後で一つに繋がります。


リトバスでいうなら、


ここからが本当の共通ルート後半です。

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