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WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


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32/105

面倒な話

前書き


世の中には、


殴り合いより厄介な問題がある。


金。


保証人。


借金。


家族。


そして。


「放っておけない人間」。


第32話です。


⸻


第32話 面倒な話


夜。


⸻


高架下の事務所。


⸻


珍しく。


⸻


若い組が先に帰った。


⸻


藍。


⸻


ますみ。


⸻


カナコ。


⸻


真由。


⸻


グエン。


⸻


みんな帰った。


⸻


残ったのは。


⸻


前原。


⸻


川本。


⸻


黒岩。


⸻


敦。


⸻


田中。


⸻


奈々恵。


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そして木戸。


⸻


⸻


「俺帰った方がいい?」


⸻


木戸が聞く。


⸻


前原は即答。


⸻


「好きにしろ」


⸻


⸻


木戸は残った。


⸻


理由は。


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面白そうだから。


⸻


⸻


最低だった。


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⸻


黒岩が缶コーヒーを開ける。


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「さて」


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部屋が静かになる。


⸻


⸻


「本題だ」


⸻


⸻


前原は煙草を咥える。


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⸻


「で」


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「誰が死んだ」


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黒岩が吹き出した。


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「お前ほんと」


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「縁起でもねぇ」


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「だいたいその二択だろ」


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「金か死人」


⸻


⸻


「今回は金だ」


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⸻


前原。


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「帰れ」


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⸻


全員笑う。


⸻


⸻


でも。


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黒岩は笑わなかった。


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⸻


「マジだ」


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⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


黒岩は一枚の紙を出す。


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住所。


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名前。


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会社名。


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⸻


敦には分からない。


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川本は顔をしかめた。


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「うわ」


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⸻


前原も。


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⸻


珍しく。


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嫌そうだった。


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「まだ生きてたのか」


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⸻


黒岩が頷く。


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「生きてる」


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「最悪だな」


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⸻


敦は聞いた。


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「誰なんですか」


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⸻


黒岩は少し考える。


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⸻


「簡単に言うと」


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「人を食い物にしてる奴」


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


⸻


黒岩は続けた。


⸻


⸻


「若い連中を集める」


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「夢見せる」


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「借金背負わせる」


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⸻


「逃げられなくする」


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敦の顔が変わる。


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思い出していた。


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自分が最初に引っかかった。


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あの裏バイト。


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あのハイエース。


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⸻


黒岩は気づいていた。


⸻


⸻


「お前も似たようなもんだろ」


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⸻


敦は黙る。


⸻


⸻


否定できない。


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⸻


前原は煙草を押し潰す。


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⸻


「今さらなんだ」


⸻


⸻


黒岩は窓を見る。


⸻


⸻


「ガキが一人死んだ」


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⸻


静かになる。


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⸻


誰も喋らない。


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⸻


黒岩は続ける。


⸻


⸻


「二十歳」


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⸻


「借金」


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⸻


「失踪」


⸻


⸻


「発見」


⸻


⸻


短い言葉だった。


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⸻


でも。


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十分だった。


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⸻


木戸ですら笑わない。


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⸻


奈々恵も。


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⸻


田中も。


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⸻


黒岩が言う。


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⸻


「警察は動いてる」


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「でも」


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「たぶん逃げ切る」


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⸻


前原が聞く。


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⸻


「証拠は」


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「ない」


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「被害者は」


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「口開かない」


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⸻


前原は舌打ちした。


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珍しかった。


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かなり。


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敦は思った。


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この人。


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怒っている。


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本当に。


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⸻


黒岩は続けた。


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⸻


「だから」


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⸻


「頼みに来た」


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前原。


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「断る」


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⸻


即答。


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⸻


黒岩。


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「まだ最後まで聞け」


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⸻


「聞かなくても断る」


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⸻


「相変わらずだな」


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⸻


川本が苦笑する。


⸻


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昔かららしい。


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⸻


その時。


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木戸が聞いた。


⸻


⸻


「なんでヨシさんなんですか」


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黒岩が止まる。


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⸻


少しだけ笑う。


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⸻


「昔な」


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⸻


「こいつ」


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⸻


前原を見る。


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⸻


「そういうガキばっか拾ってた」


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⸻


静かになる。


⸻


⸻


敦が見る。


⸻


⸻


前原は無言。


⸻


⸻


黒岩は続ける。


⸻


⸻


「家出」


⸻


⸻


「半グレ」


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「チンピラ」


⸻


⸻


「借金持ち」


⸻


⸻


「外国人」


⸻


⸻


「どこにも行けねぇ奴」


⸻


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「そういうのばっか」


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⸻


敦は少し息を呑む。


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⸻


今と同じだった。


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⸻


ただ。


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場所が違っただけで。


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⸻


黒岩は笑う。


⸻


⸻


「だから」


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⸻


「今も変わってねぇなと思って」


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⸻


窓の外。


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電車が通る。


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⸻


高架下の事務所。


⸻


⸻


藍。


⸻


ますみ。


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カナコ。


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グエン。


⸻


航平。


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森下。


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真由。


⸻


⸻


みんな。


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少しずつ傷ついて。


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ここへ来た。


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⸻


そして。


⸻


前原は何も言わず。


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居場所を作っていた。


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⸻


その時。


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敦が初めて思った。


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この人。


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もしかして。


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ずっと同じことやってるんじゃないか。


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若い頃から。


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ずっと。


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⸻


黒岩が立ち上がる。


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「考えとけ」


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「ヨシ」


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前原は返事をしない。


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⸻


でも。


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断らなかった。


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⸻


それだけで。


⸻


川本は十分だった。


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⸻


そして。


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黒岩が帰ったあと。


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木戸がぼそっと言う。


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⸻


「面倒なことになる?」


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⸻


前原は窓の外を見る。


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しばらく黙る。


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⸻


それから。


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小さく言った。


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「もうなってる」


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その言葉は。


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誰に向けたものだったのか。


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誰にも分からなかった。


⸻


後書き


第32話でした。


ここで物語は少し広がります。


今までは、


「居場所の話」


でした。


⸻


ここからは、


「居場所を失う人間の話」


も始まります。


⸻


そして前原。


実は昔から、


困った若者を拾う癖があります。


本人は絶対認めませんが。


次回は、


黒岩の話の続きと、


ますみ・藍側の創作組が交差し始めます。

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