面倒な話
前書き
世の中には、
殴り合いより厄介な問題がある。
金。
保証人。
借金。
家族。
そして。
「放っておけない人間」。
第32話です。
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第32話 面倒な話
夜。
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高架下の事務所。
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珍しく。
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若い組が先に帰った。
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藍。
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ますみ。
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カナコ。
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真由。
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グエン。
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みんな帰った。
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残ったのは。
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前原。
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川本。
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黒岩。
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敦。
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田中。
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奈々恵。
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そして木戸。
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「俺帰った方がいい?」
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木戸が聞く。
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前原は即答。
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「好きにしろ」
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木戸は残った。
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理由は。
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面白そうだから。
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最低だった。
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黒岩が缶コーヒーを開ける。
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「さて」
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部屋が静かになる。
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「本題だ」
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前原は煙草を咥える。
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「で」
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「誰が死んだ」
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黒岩が吹き出した。
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「お前ほんと」
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「縁起でもねぇ」
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「だいたいその二択だろ」
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「金か死人」
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「今回は金だ」
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前原。
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「帰れ」
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全員笑う。
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でも。
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黒岩は笑わなかった。
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「マジだ」
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空気が変わる。
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黒岩は一枚の紙を出す。
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住所。
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名前。
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会社名。
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敦には分からない。
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川本は顔をしかめた。
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「うわ」
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前原も。
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珍しく。
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嫌そうだった。
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「まだ生きてたのか」
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黒岩が頷く。
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「生きてる」
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「最悪だな」
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敦は聞いた。
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「誰なんですか」
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黒岩は少し考える。
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「簡単に言うと」
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「人を食い物にしてる奴」
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部屋が静かになる。
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黒岩は続けた。
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「若い連中を集める」
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「夢見せる」
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「借金背負わせる」
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「逃げられなくする」
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敦の顔が変わる。
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思い出していた。
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自分が最初に引っかかった。
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あの裏バイト。
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あのハイエース。
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黒岩は気づいていた。
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「お前も似たようなもんだろ」
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敦は黙る。
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否定できない。
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前原は煙草を押し潰す。
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「今さらなんだ」
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黒岩は窓を見る。
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「ガキが一人死んだ」
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静かになる。
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誰も喋らない。
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黒岩は続ける。
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「二十歳」
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「借金」
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「失踪」
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「発見」
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短い言葉だった。
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でも。
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十分だった。
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木戸ですら笑わない。
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奈々恵も。
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田中も。
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黒岩が言う。
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「警察は動いてる」
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「でも」
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「たぶん逃げ切る」
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前原が聞く。
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「証拠は」
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「ない」
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「被害者は」
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「口開かない」
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前原は舌打ちした。
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珍しかった。
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かなり。
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敦は思った。
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この人。
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怒っている。
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本当に。
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黒岩は続けた。
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「だから」
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「頼みに来た」
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前原。
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「断る」
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即答。
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黒岩。
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「まだ最後まで聞け」
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「聞かなくても断る」
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「相変わらずだな」
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川本が苦笑する。
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昔かららしい。
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その時。
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木戸が聞いた。
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「なんでヨシさんなんですか」
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黒岩が止まる。
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少しだけ笑う。
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「昔な」
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「こいつ」
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前原を見る。
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「そういうガキばっか拾ってた」
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静かになる。
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敦が見る。
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前原は無言。
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黒岩は続ける。
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「家出」
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「半グレ」
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「チンピラ」
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「借金持ち」
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「外国人」
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「どこにも行けねぇ奴」
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「そういうのばっか」
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敦は少し息を呑む。
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今と同じだった。
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ただ。
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場所が違っただけで。
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黒岩は笑う。
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「だから」
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「今も変わってねぇなと思って」
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窓の外。
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電車が通る。
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高架下の事務所。
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藍。
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ますみ。
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カナコ。
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グエン。
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航平。
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森下。
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真由。
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みんな。
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少しずつ傷ついて。
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ここへ来た。
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そして。
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前原は何も言わず。
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居場所を作っていた。
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その時。
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敦が初めて思った。
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この人。
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もしかして。
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ずっと同じことやってるんじゃないか。
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若い頃から。
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ずっと。
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黒岩が立ち上がる。
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「考えとけ」
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「ヨシ」
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前原は返事をしない。
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でも。
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断らなかった。
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それだけで。
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川本は十分だった。
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そして。
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黒岩が帰ったあと。
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木戸がぼそっと言う。
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「面倒なことになる?」
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前原は窓の外を見る。
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しばらく黙る。
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それから。
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小さく言った。
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「もうなってる」
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その言葉は。
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誰に向けたものだったのか。
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誰にも分からなかった。
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後書き
第32話でした。
ここで物語は少し広がります。
今までは、
「居場所の話」
でした。
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ここからは、
「居場所を失う人間の話」
も始まります。
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そして前原。
実は昔から、
困った若者を拾う癖があります。
本人は絶対認めませんが。
次回は、
黒岩の話の続きと、
ますみ・藍側の創作組が交差し始めます。




