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WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


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30/105

創作女子会

前書き


人は、


誰かと仲良くなった瞬間よりも、


「自分の好きなものを見せても大丈夫だった」


瞬間の方を、

案外覚えていたりする。


第30話です。


⸻


第30話 創作女子会


「見せなさい」


奈々恵が言った。


⸻


ますみは即答した。


⸻


「嫌です」


⸻


朝だった。


⸻


珍しく。


⸻


土曜日。


⸻


高架下の事務所。


⸻


藍が笑っている。


⸻


「頑張れ奈々恵さん」


⸻


「他人事だと思って」


⸻


奈々恵はコーヒーを飲む。


⸻


ますみはスケッチブックを抱えている。


⸻


絶対に渡さない構えだった。


⸻


⸻


木戸が小声で言う。


⸻


「警察の取調べみたい」


⸻


⸻


田中。


⸻


「完全に」


⸻


⸻


グエン。


⸻


「ガンバレ!」


⸻


⸻


「どっちを!?」


⸻


⸻


大混乱だった。


⸻


⸻


その時。


⸻


藍が立ち上がる。


⸻


⸻


「じゃあ私から」


⸻


⸻


全員見る。


⸻


⸻


藍はノートを開く。


⸻


⸻


かなり厚くなっていた。


⸻


⸻


最初の頃の何倍も。


⸻


⸻


地図。


⸻


国。


⸻


人物。


⸻


宗教。


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列車。


⸻


都市。


⸻


⸻


航平が少し誇らしげ。


⸻


⸻


「路線図増えた」


⸻


⸻


「増やした」


⸻


⸻


「増えすぎ」


⸻


⸻


⸻


藍はページをめくる。


⸻


⸻


一枚の絵。


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⸻


雨の街。


⸻


⸻


高架線。


⸻


⸻


巨大な駅。


⸻


⸻


無数の灯り。


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⸻


ますみが止まる。


⸻


⸻


「……すご」


⸻


⸻


藍は少し照れた。


⸻


⸻


「レンがロゴ作った」


⸻


⸻


「カナコが曲つけてる」


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⸻


「航平が路線図作った」


⸻


⸻


「田中さんが整理した」


⸻


⸻


少し沈黙。


⸻


⸻


藍は笑った。


⸻


⸻


「なんかもう私だけじゃないんだよね」


⸻


⸻


その言葉。


⸻


ますみは少し考えた。


⸻


⸻


自分の絵。


⸻


⸻


ずっと一人だった。


⸻


⸻


誰にも見せない。


⸻


⸻


誰にも触らせない。


⸻


⸻


だから。


⸻


傷つかなかった。


⸻


⸻


でも。


⸻


ずっと一人だった。


⸻


⸻


⸻


奈々恵が言う。


⸻


⸻


「創作ってさ」


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⸻


「うん」


⸻


⸻


「怖いけど」


⸻


⸻


「一人でやるより楽しい時ある」


⸻


⸻


ますみは黙る。


⸻


⸻


かなり長く。


⸻


⸻


その時。


⸻


グエンが突然。


⸻


ますみの前へ。


⸻


⸻


紙を置く。


⸻


⸻


「?」


⸻


⸻


そこには。


⸻


謎の絵。


⸻


⸻


丸い顔。


⸻


棒人間。


⸻


⸻


謎のドラゴン。


⸻


⸻


ますみが吹き出す。


⸻


⸻


「なにこれ」


⸻


⸻


「ワタシ!」


⸻


⸻


「下手!」


⸻


⸻


「ヒドイ!」


⸻


⸻


事務所爆笑。


⸻


⸻


グエンは本気だった。


⸻


⸻


「マスミモ!」


⸻


⸻


「え」


⸻


⸻


「カケ!」


⸻


⸻


ますみが固まる。


⸻


⸻


奈々恵が笑う。


⸻


⸻


「そう来たか」


⸻


⸻


⸻


ますみは紙を見る。


⸻


⸻


みんな見ている。


⸻


⸻


逃げたくなる。


⸻


⸻


でも。


⸻


少しだけ違った。


⸻


⸻


前なら。


⸻


絶対描かなかった。


⸻


⸻


でも。


⸻


今は。


⸻


⸻


鉛筆を持つ。


⸻


⸻


少しだけ。


⸻


線を引く。


⸻


⸻


丸。


⸻


目。


⸻


髪。


⸻


⸻


数十秒。


⸻


⸻


完成。


⸻


⸻


可愛い女の子。


⸻


⸻


全員止まる。


⸻


⸻


木戸。


⸻


「うま」


⸻


⸻


航平。


⸻


「うま」


⸻


⸻


田中。


⸻


「うま」


⸻


⸻


グエン。


⸻


「ウマ!」


⸻


⸻


「馬じゃない!」


⸻


⸻


ますみが思わず突っ込む。


⸻


⸻


大爆笑。


⸻


⸻


そして。


⸻


ますみ自身も。


⸻


笑っていた。


⸻


⸻


その時だった。


⸻


ガチャ。


⸻


⸻


扉が開く。


⸻


⸻


知らない男。


⸻


⸻


四十代後半。


⸻


スーツ。


⸻


短髪。


⸻


目つき鋭い。


⸻


⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


前原だけが顔を上げる。


⸻


⸻


「……あぁ」


⸻


⸻


知っていた。


⸻


⸻


川本も止まる。


⸻


⸻


木戸も察する。


⸻


⸻


この人。


⸻


そっち側だ。


⸻


⸻


男は部屋を見る。


⸻


⸻


若者たち。


⸻


絵。


⸻


ギター。


⸻


地図。


⸻


笑い声。


⸻


⸻


そして。


⸻


前原を見る。


⸻


⸻


「ヨシ」


⸻


⸻


昔の呼び方だった。


⸻


⸻


前原の顔が少しだけ変わる。


⸻


⸻


男は笑う。


⸻


⸻


「ずいぶん面白ぇもん作ってんな」


⸻


⸻


静かになる。


⸻


⸻


ますみは気づかない。


⸻


藍も。


⸻


グエンも。


⸻


⸻


でも。


⸻


敦は気づいた。


⸻


⸻


この人。


⸻


たぶん。


⸻


前原の過去を知っている。


⸻


⸻


そして。


⸻


その過去は。


⸻


まだ終わっていない。


⸻


⸻


後書き


第30話でした。


前半は、


ますみが初めて人前で絵を描く回。


⸻


そして後半。


⸻


ついに、


前原の過去編へ繋がる人物が登場しました。


黒岩誠司(48)


* 前原の昔の兄貴分

* 元組関係

* 川本とも面識あり

* 現在は表の仕事をしているらしい


ただし。


本当に表だけなのかは、

まだ分かりません。


次回から、


創作組と並行して、


「前原正義とは何者だったのか」


も少しずつ見えてきます。

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