泣きそうで笑う少女
前書き
人は、
誰かに救われた瞬間よりも、
「見捨てられなかった」
瞬間を、
ずっと覚えている。
第29話です。
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第29話 泣きそうで笑う少女
駅から戻ったのは、
夜中だった。
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高架下。
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雨は少し弱くなっていた。
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敦とますみは、
ほとんど喋らなかった。
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でも。
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不思議と気まずくなかった。
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ますみはスケッチブックを抱えている。
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いつもより少しだけ。
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力が抜けていた。
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事務所の灯りが見える。
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まだ明るい。
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木戸たち、
帰ってないらしい。
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ますみが小さく言う。
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「……まだいる」
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敦が笑う。
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「いるな」
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「なんで」
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「知らない」
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本当に知らなかった。
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でも。
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前原も。
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川本も。
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奈々恵も。
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誰かが帰るまで、
なんとなく残る時がある。
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事務所の扉を開ける。
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ガチャ。
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全員いた。
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木戸。
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「おかえり」
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ますみ。
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「……ただいま」
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全員が止まる。
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ますみ本人も止まる。
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しまった。
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そんな顔。
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藍が吹き出す。
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「今、
ただいまって言った」
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ますみ真っ赤。
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「言ってない」
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「言った」
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「言ってない」
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木戸。
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「言った」
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グエン。
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「タダイマ!」
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「やめて!」
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大爆笑。
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ますみは頭を抱えた。
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でも。
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少しだけ笑っていた。
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その夜。
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珍しく。
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ますみは早く帰らなかった。
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みんなが残っていたから。
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藍はノート。
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航平は地図。
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田中は資料。
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レンはロゴ。
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カナコはギター。
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ますみは少し離れた席に座る。
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スケッチブック。
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鉛筆。
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そして。
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描き始める。
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奈々恵だけが気づいた。
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何も言わない。
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ただ。
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コーヒーを飲みながら見ている。
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ますみは描く。
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描く。
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描く。
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途中で。
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消す。
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また描く。
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消す。
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また描く。
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そして。
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一時間後。
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ページを閉じる。
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誰にも見せない。
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そのつもりだった。
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しかし。
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木戸が来る。
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「終わった?」
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「うわっ!」
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「見せろ」
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「嫌」
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「一秒」
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「嫌」
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「0.5秒」
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「変わらない」
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木戸は笑う。
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「じゃあいいや」
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意外だった。
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ますみが止まる。
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「え」
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「見せたくねぇんだろ」
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「……うん」
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「ならいい」
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木戸は戻る。
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ますみは少し不思議そうだった。
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その様子を見ていた前原が言う。
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「木戸」
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「ん?」
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「珍しくまともだな」
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「俺いつもまともだろ」
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全員:
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「それはない」
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また笑いが起きる。
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深夜。
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電車の本数も減った。
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カナコがギターを鳴らしている。
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藍が窓際へ行く。
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ますみの隣。
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しばらく黙る。
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それから。
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小さく言う。
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「今日さ」
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「ん?」
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「敦と何話したの」
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ますみは少し考えた。
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「別に」
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「嘘」
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「本当に」
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藍は笑う。
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ますみは窓の外を見る。
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電車。
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街灯。
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雨。
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それから。
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小さく言った。
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「私」
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「うん」
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「変じゃなかったみたい」
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藍が止まる。
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ますみは続ける。
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「理由なく苦しいの」
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「意味分かんないと思ってた」
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「甘えてるだけかと思ってた」
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少し沈黙。
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藍は笑わない。
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怒らない。
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ただ。
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頷く。
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「分かる」
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ますみの目が少し揺れる。
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「藍も?」
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「私も」
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「毎日」
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「意味分かんない時ある」
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ますみは何も言えなかった。
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そして。
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少しだけ。
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安心した。
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本当に少しだけ。
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その頃。
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奈々恵は、
ますみが置いていった消しゴムのカスを見る。
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机の上。
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大量。
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奈々恵は少し笑った。
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「描いてるなぁ」
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誰にも聞こえない声。
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本気で描いている人間だけが出す量だった。
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そして。
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その夜。
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みんなが帰ったあと。
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ますみのスケッチブックには。
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新しいページが増えていた。
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泣きそうで笑う少女。
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その隣。
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もう一人。
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別の少女。
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少しだけ強そうな目をした少女。
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まだ名前はない。
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でも。
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その横には。
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小さく鉛筆で。
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こう書かれていた。
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『友達』
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後書き
第29話でした。
今回は大事件ではありません。
でも、
ますみにとってはかなり大きな回です。
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初めて、
「ただいま」
が出た。
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初めて、
「自分だけじゃなかった」
を知った。
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そして藍との距離も少し縮まった。
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次回は、
ますみのスケッチブックを中心に、
藍・奈々恵・ますみの
“創作女子組”
が動き始めます。
そして裏では、
前原のところへ、
少し面倒な来客が近づき始めています。




