↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/105

スケッチブック

前書き


好きなものって、


誰にも見せなかった時間が長いほど、

見せるのが怖くなる。


笑われるかもしれない。


否定されるかもしれない。


だから。


ずっと隠している。


第25話です。


⸻


第25話 スケッチブック


「絶対ある」


藍が言った。


⸻


「ない」


⸻


「ある」


⸻


「ない」


⸻


「ある」


⸻


「ない」


⸻


高架下の事務所。


夕方。


⸻


ますみは壁際に座っていた。


⸻


リュックを抱えて。


⸻


ものすごく警戒していた。


⸻


藍はニヤニヤしている。


⸻


「絶対描いてる」


⸻


「描いてない」


⸻


「その反応は描いてる」


⸻


「描いてない」


⸻


木戸が口を挟む。


⸻


「描いてるな」


⸻


「なんで!」


⸻


「経験則」


⸻


全然根拠なかった。


⸻


⸻


ますみはリュックを抱き締める。


⸻


かなり強く。


⸻


敦は少し笑った。


⸻


「別に無理に見せなくていいじゃん」


⸻


ますみが少し安心する。


⸻


「そう」


⸻


「そのうちで」


⸻


「うん」


⸻


藍が不満そうだった。


⸻


「気になるじゃん」


⸻


「気になるけど」


⸻


敦は言う。


⸻


「見せたい時でいい」


⸻


ますみは少し黙った。


⸻


そして。


⸻


小さく頷いた。


⸻


⸻


その時だった。


⸻


ガチャ。


⸻


扉が開く。


⸻


「うぃーっす」


⸻


知らない男。


⸻


二十代前半。


⸻


金髪。


⸻


ピアス。


⸻


細身。


⸻


めちゃくちゃ軽そう。


⸻


全員が見る。


⸻


木戸が即言う。


⸻


「誰」


⸻


男も即言う。


⸻


「誰」


⸻


⸻


川本が奥から出てくる。


⸻


「あぁ来たか」


⸻


知り合いだった。


⸻


⸻


名前は


橘レン


二十三歳。


⸻


動画編集。


配信。


デザイン。


⸻


なんでも少し出来る。


⸻


そして。


⸻


仕事が続かない。


⸻


木戸が頷く。


⸻


「仲間だな」


⸻


「お前誰だよ」


⸻


レンは笑った。


⸻


人懐っこい。


⸻


でも。


⸻


どこか疲れていた。


⸻


⸻


レンは部屋を見回す。


⸻


ホワイトボード。


⸻


地図。


⸻


設定資料。


⸻


ギター。


⸻


パソコン。


⸻


そして。


⸻


藍のノート。


⸻


「なにここ」


⸻


沈黙。


⸻


全員考える。


⸻


⸻


木戸。


⸻


「知らん」


⸻


⸻


前原。


⸻


「知らん」


⸻


⸻


敦。


⸻


「なんなんでしょうね」


⸻


⸻


レンが吹き出した。


⸻


「最高じゃん」


⸻


⸻


藍が少し笑う。


⸻


⸻


レンはホワイトボードへ近づく。


⸻


「これ誰作ったの」


⸻


「私」


⸻


「すげぇ」


⸻


即答だった。


⸻


藍が止まる。


⸻


「え」


⸻


「普通に面白そう」


⸻


レンは本気だった。


⸻


「ゲームの設定資料みたい」


⸻


航平が嬉しそうになる。


⸻


「地図は俺」


⸻


「おぉ」


⸻


「路線図も」


⸻


「おぉー」


⸻


航平、

少し照れる。


⸻


⸻


奈々恵が小さく笑った。


⸻


「また増えたね」


⸻


「何が」


⸻


「創作オタク」


⸻


レンは頷く。


⸻


「まぁそう」


⸻


否定しなかった。


⸻


⸻


その時。


⸻


ますみが少しだけ動く。


⸻


リュックの口が開く。


⸻


ほんの少し。


⸻


スケッチブックの端が見えた。


⸻


藍が反応する。


⸻


「見えた」


⸻


「うわっ!」


⸻


ますみが慌てる。


⸻


全員見る。


⸻


ますみ真っ赤。


⸻


⸻


「違う!」


⸻


「何が」


⸻


「違う!」


⸻


⸻


木戸が笑う。


⸻


「あるじゃん」


⸻


「ない!」


⸻


「見えてる」


⸻


「見えてない!」


⸻


⸻


完全に見えていた。


⸻


⸻


レンが笑う。


⸻


「あるあるだなぁ」


⸻


ますみが止まる。


⸻


「え?」


⸻


レンは椅子へ座る。


⸻


「見せたくないんだよな」


⸻


ますみは少し黙る。


⸻


レンは続けた。


⸻


「俺も昔そうだった」


⸻


「描いても」


⸻


「作っても」


⸻


「人に見せるの怖い」


⸻


⸻


「だって」


⸻


「本気で作ったやつほど」


⸻


「否定されると痛いから」


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


ますみはスケッチブックを抱えていた。


⸻


少しだけ。


⸻


力が弱くなる。


⸻


⸻


レンは笑った。


⸻


「まぁでも」


⸻


「ここの連中」


⸻


周囲を見る。


⸻


藍。


⸻


カナコ。


⸻


航平。


⸻


奈々恵。


⸻


敦。


⸻


⸻


「変な奴ばっかだから」


⸻


「わりと笑わないと思う」


⸻


⸻


木戸が言う。


⸻


「失礼だな」


⸻


「違う?」


⸻


「違わない」


⸻


⸻


大笑い。


⸻


⸻


ますみも。


⸻


少しだけ笑った。


⸻


そして。


⸻


その日の帰り際。


⸻


ますみは扉の前で止まる。


⸻


少し迷う。


⸻


かなり迷う。


⸻


それから。


⸻


リュックを開ける。


⸻


スケッチブックを少しだけ出す。


⸻


ほんの少し。


⸻


一ページだけ。


⸻


敦へ見せる。


⸻


そこには。


⸻


鉛筆で描かれた。


⸻


女の子の絵。


⸻


驚くほど丁寧な線。


⸻


驚くほど優しい表情。


⸻


敦は少し息を呑む。


⸻


「……上手い」


⸻


ますみは耳まで赤くなる。


⸻


「……一ページだけだから」


⸻


「うん」


⸻


「絶対みんなには見せないから」


⸻


「うん」


⸻


ますみは少しだけ笑った。


⸻


でも。


⸻


たぶん。


⸻


もう決まっていた。


⸻


いつか。


⸻


この場所で。


⸻


彼女もまた。


⸻


自分の世界を開き始めることが。


⸻


後書き


第25話でした。


今回は


橘レン(23)


* 動画編集

* デザイン

* 配信経験あり

* 人懐っこい

* 仕事続かない


を投入しました。


そして。


ついに、

ますみのスケッチブックが登場。


まだ一ページだけ。


でもこれは、


藍のノートが開かれた時と同じくらい大きな一歩です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。