スケッチブック
前書き
好きなものって、
誰にも見せなかった時間が長いほど、
見せるのが怖くなる。
笑われるかもしれない。
否定されるかもしれない。
だから。
ずっと隠している。
第25話です。
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第25話 スケッチブック
「絶対ある」
藍が言った。
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「ない」
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「ある」
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「ない」
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「ある」
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「ない」
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高架下の事務所。
夕方。
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ますみは壁際に座っていた。
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リュックを抱えて。
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ものすごく警戒していた。
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藍はニヤニヤしている。
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「絶対描いてる」
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「描いてない」
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「その反応は描いてる」
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「描いてない」
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木戸が口を挟む。
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「描いてるな」
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「なんで!」
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「経験則」
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全然根拠なかった。
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ますみはリュックを抱き締める。
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かなり強く。
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敦は少し笑った。
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「別に無理に見せなくていいじゃん」
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ますみが少し安心する。
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「そう」
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「そのうちで」
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「うん」
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藍が不満そうだった。
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「気になるじゃん」
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「気になるけど」
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敦は言う。
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「見せたい時でいい」
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ますみは少し黙った。
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そして。
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小さく頷いた。
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その時だった。
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ガチャ。
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扉が開く。
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「うぃーっす」
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知らない男。
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二十代前半。
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金髪。
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ピアス。
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細身。
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めちゃくちゃ軽そう。
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全員が見る。
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木戸が即言う。
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「誰」
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男も即言う。
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「誰」
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川本が奥から出てくる。
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「あぁ来たか」
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知り合いだった。
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名前は
橘レン
二十三歳。
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動画編集。
配信。
デザイン。
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なんでも少し出来る。
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そして。
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仕事が続かない。
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木戸が頷く。
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「仲間だな」
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「お前誰だよ」
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レンは笑った。
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人懐っこい。
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でも。
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どこか疲れていた。
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レンは部屋を見回す。
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ホワイトボード。
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地図。
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設定資料。
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ギター。
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パソコン。
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そして。
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藍のノート。
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「なにここ」
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沈黙。
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全員考える。
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木戸。
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「知らん」
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前原。
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「知らん」
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敦。
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「なんなんでしょうね」
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レンが吹き出した。
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「最高じゃん」
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藍が少し笑う。
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レンはホワイトボードへ近づく。
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「これ誰作ったの」
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「私」
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「すげぇ」
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即答だった。
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藍が止まる。
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「え」
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「普通に面白そう」
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レンは本気だった。
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「ゲームの設定資料みたい」
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航平が嬉しそうになる。
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「地図は俺」
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「おぉ」
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「路線図も」
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「おぉー」
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航平、
少し照れる。
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奈々恵が小さく笑った。
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「また増えたね」
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「何が」
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「創作オタク」
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レンは頷く。
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「まぁそう」
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否定しなかった。
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その時。
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ますみが少しだけ動く。
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リュックの口が開く。
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ほんの少し。
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スケッチブックの端が見えた。
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藍が反応する。
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「見えた」
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「うわっ!」
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ますみが慌てる。
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全員見る。
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ますみ真っ赤。
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「違う!」
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「何が」
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「違う!」
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木戸が笑う。
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「あるじゃん」
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「ない!」
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「見えてる」
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「見えてない!」
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完全に見えていた。
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レンが笑う。
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「あるあるだなぁ」
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ますみが止まる。
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「え?」
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レンは椅子へ座る。
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「見せたくないんだよな」
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ますみは少し黙る。
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レンは続けた。
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「俺も昔そうだった」
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「描いても」
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「作っても」
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「人に見せるの怖い」
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「だって」
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「本気で作ったやつほど」
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「否定されると痛いから」
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部屋が静かになる。
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ますみはスケッチブックを抱えていた。
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少しだけ。
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力が弱くなる。
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レンは笑った。
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「まぁでも」
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「ここの連中」
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周囲を見る。
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藍。
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カナコ。
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航平。
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奈々恵。
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敦。
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「変な奴ばっかだから」
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「わりと笑わないと思う」
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木戸が言う。
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「失礼だな」
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「違う?」
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「違わない」
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大笑い。
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ますみも。
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少しだけ笑った。
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そして。
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その日の帰り際。
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ますみは扉の前で止まる。
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少し迷う。
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かなり迷う。
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それから。
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リュックを開ける。
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スケッチブックを少しだけ出す。
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ほんの少し。
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一ページだけ。
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敦へ見せる。
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そこには。
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鉛筆で描かれた。
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女の子の絵。
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驚くほど丁寧な線。
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驚くほど優しい表情。
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敦は少し息を呑む。
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「……上手い」
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ますみは耳まで赤くなる。
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「……一ページだけだから」
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「うん」
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「絶対みんなには見せないから」
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「うん」
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ますみは少しだけ笑った。
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でも。
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たぶん。
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もう決まっていた。
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いつか。
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この場所で。
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彼女もまた。
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自分の世界を開き始めることが。
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後書き
第25話でした。
今回は
橘レン(23)
* 動画編集
* デザイン
* 配信経験あり
* 人懐っこい
* 仕事続かない
を投入しました。
そして。
ついに、
ますみのスケッチブックが登場。
まだ一ページだけ。
でもこれは、
藍のノートが開かれた時と同じくらい大きな一歩です。




