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WAY HOME ――行き場をなくした僕らの、小さな食卓――  作者: 和泉發仙


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24/105

また来た

前書き


人は不思議なもので、


一回だけ会った相手より、


二回会った相手の方が、

ずっと気になる。


そして三回目になると、


少しだけ気にかけてしまう。


第24話です。


⸻


第24話 また来た


「また来た」


木戸が言った。


⸻


土曜日。


夕方。


高架下の事務所。


⸻


入口に。


⸻


長澤ますみが立っていた。


⸻


パーカー。


リュック。


無表情。


⸻


そして。


⸻


ものすごく帰りたそうだった。


⸻


木戸が笑う。


⸻


「入れよ」


⸻


「……帰ろうかな」


⸻


「来といて?」


⸻


正論だった。


⸻


ますみは少しムスッとする。


⸻


「敦さんいる?」


⸻


「いる」


⸻


「ならいい」


⸻


木戸がニヤニヤする。


⸻


「おぉ?」


⸻


「違うから」


⸻


「何が」


⸻


「全部」


⸻


敦が奥から出てくる。


⸻


「どうしたの」


⸻


ますみは少し黙る。


⸻


「……暇だった」


⸻


絶対違った。


⸻


でも敦は聞かない。


⸻


「そっか」


⸻


「うん」


⸻


それで終わる。


⸻


ますみは少しだけ安心した顔をした。


⸻


⸻


事務所の中。


⸻


藍がホワイトボードと戦っていた。


⸻


「違う」


⸻


「ここ王都」


⸻


「だから列車こっち」


⸻


航平が真顔で答える。


⸻


「地形的に無理」


⸻


「なんでよ!」


⸻


「山脈ある」


⸻


「ファンタジーだよ!?」


⸻


「でも物流は必要」


⸻


「物流言うな!」


⸻


ますみは目を丸くした。


⸻


「……何してんの」


⸻


木戸が即答。


⸻


「オタク会議」


⸻


藍がペンを投げた。


⸻


「うるさい!」


⸻


⸻


ますみは少し近づく。


⸻


ホワイトボード。


⸻


そこには。


⸻


巨大な地図。


⸻


国。


⸻


鉄道路線。


⸻


街。


⸻


港。


⸻


謎の生物。


⸻


そして。


⸻


大量の付箋。


⸻


ますみが呟く。


⸻


「すご……」


⸻


藍が振り向く。


⸻


「え」


⸻


ますみは慌てる。


⸻


「いや別に」


⸻


藍は少し笑った。


⸻


「ありがとう」


⸻


その反応。


⸻


ますみは少し戸惑った。


⸻


たぶん。


⸻


褒められると思ってなかった。


⸻


いや。


⸻


褒めたことを、

喜ばれると思ってなかった。


⸻


⸻


その時。


⸻


グエン登場。


⸻


「マスミ!」


⸻


「うわっ」


⸻


完全に覚えられていた。


⸻


グエンは嬉しそうだった。


⸻


「キタ!」


⸻


「来たけど」


⸻


「オナカヘッタ?」


⸻


「なんで」


⸻


「イツモヘッテル」


⸻


「失礼」


⸻


でも少し笑う。


⸻


グエンは満足そうだった。


⸻


⸻


しばらくして。


⸻


奈々恵が来た。


⸻


コンビニ袋。


⸻


ジャージ。


⸻


眠そう。


⸻


いつも通り。


⸻


「おはよう」


⸻


「夕方です」


⸻


敦が言う。


⸻


「私の朝だから」


⸻


強かった。


⸻


⸻


奈々恵はますみを見る。


⸻


「初めまして」


⸻


ますみは少し緊張する。


⸻


「……長澤です」


⸻


「奈々恵です」


⸻


少し沈黙。


⸻


奈々恵はなんとなく聞いた。


⸻


「絵描く?」


⸻


ますみが止まる。


⸻


完全に。


⸻


「……なんで」


⸻


「顔」


⸻


「顔で分かるの」


⸻


「分かる」


⸻


奈々恵は笑った。


⸻


「藍と同じ顔してる」


⸻


藍が反応する。


⸻


「どんな顔よ」


⸻


「ノート隠してそうな顔」


⸻


藍が吹き出した。


⸻


「分かる」


⸻


ますみは真っ赤になる。


⸻


図星だった。


⸻


⸻


木戸が立ち上がる。


⸻


「おぉ」


⸻


「何」


⸻


「仲間発見」


⸻


ますみは焦る。


⸻


「違う」


⸻


「描いてない」


⸻


「ほんと?」


⸻


「ほんと」


⸻


「嘘だな」


⸻


全員思った。


⸻


ますみはさらに焦る。


⸻


⸻


敦は少しだけ笑った。


⸻


藍も。


⸻


奈々恵も。


⸻


別に暴こうとしてない。


⸻


でも。


⸻


たぶん。


⸻


みんな分かる。


⸻


この子も。


⸻


何か持ってる。


⸻


まだ誰にも見せてないだけで。


⸻


⸻


帰り際。


⸻


ますみは扉の前で止まる。


⸻


振り返る。


⸻


藍は地図。


⸻


カナコはギター。


⸻


航平は路線図。


⸻


奈々恵はパソコン。


⸻


田中は資料整理。


⸻


木戸は寝てる。


⸻


前原は煙草。


⸻


敦はコーヒー。


⸻


変な場所だった。


⸻


本当に。


⸻


でも。


⸻


少しだけ。


⸻


居心地が良かった。


⸻


ますみは小さく言う。


⸻


「……また来てもいい?」


⸻


部屋が静かになる。


⸻


そして。


⸻


前原が言った。


⸻


「来るなら鍵閉めろ」


⸻


全員吹き出した。


⸻


ますみも。


⸻


初めて。


⸻


ちゃんと笑った。


⸻


後書き


第24話でした。


ますみはまだ、


「何が好きか」


を言えません。


言いたくありません。


言うと壊れる気がするから。


でも。


奈々恵は気づいています。


藍も気づいています。


この子もまた、


何かを作る側の人間だと。


そして次回。


ますみのノート。


あるいはスケッチブックが、

少しだけ姿を見せ始めます。

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