↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/8

これが人間の『道徳』だと?

第1章 死神のプラグ

消毒薬と絶望の臭いが濃く立ち込める空間。

錆びついた鉄製のベッドが、薄暗い病院の廊下の隅に置かれていた。

その上で、皮と骨だけになったやせ細った体が、途切れ途切れの呼吸に合わせて震えていた。

老人が経験したのは恐ろしい事故だった。しかし今、彼を蝕んでいるのは折れた骨の痛みだけではない。世間の冷たさだった。

家族は見捨て、病院は治療費がないという理由で治療を中止した。

老人は濁った目で天井をじっと見つめ、骨髄を抉られるような激痛に耐え続けていた。

静かに、一つの影が近づいてきた。

少年は老人の傍らに立ち、下を見下ろす。その瞳に同情の色はなく、ただ静かな理解だけがあった。

「生きるの、辛かったでしょう?

 僕が、その苦しみから解放してあげますよ」

言葉が終わると同時に、彼は手を差し伸べた。

音も光もなく、ただ一瞬で——現実が、小さく欠けた。

老人のうめき声が止んだ。

痛みで歪んでいた眉がゆっくりとほどけ、長い長い十数年ぶりの安らかな息が、静かに吐き出された。

「君は……フリキミルヴィルか」

暗闇の中から、テヒモシンが出てきた。

「お前は人々を殺して、苦しみから逃がしてやっている。貧しい者、孤独な老人、搾取される子供たち、障害者や慢性疾患を抱えた者……皆を虚無へと導いている」

フリキミルヴィルは振り返らず、静かに答えた。その声は不思議なほど平坦だった。

「僕に、誰かを殺す権利なんてあるわけないでしょう?

 ただ、彼らがあまりにも苦しそうだったから、安らかに逝けるように手伝ってあげてるだけです。

 金持ちは高いお金を出して、豪華な病室で穏やかな死を買う。

 僕はそれを……ただ無料で提供しているだけですよ」

「人道的な殺人、と言うのか?」

テヒモシンは目を細めた。

フリキミルヴィルは問い返した。

「僕に何か用ですか?」

「君を守りに来た。

 ユモンカエドラとジョルドガンスマートはすでに死んだ。

 次は君を狙っている」

フリキミルヴィルはかすかに微笑んだ。その笑みは濁り一つなかった。

「死ぬことを、怖がる必要なんてありますか?

 生きることを受け入れた時点で、いつか終わることも受け入れているはずです」

テヒモシンは目の前の少年をまっすぐ見つめ、心の中で感嘆した。

「勇敢だな……。でも一つ聞きたい。

 君が彼らを『解放』する方法は、実際どんなものなんだ?」

フリキミルヴィルは青白い自分の手を上げ、親指と人差し指をゆっくりと閉じる動作をした。

「彼らを解放するのは、コンセントを抜くのと同じくらい簡単ですよ」


第2章 沈黙の交響曲

テヒモシンは、長い長い廃病院の廊下の真ん中に立っていた。

冷え切った空気の中で、彼の吐息が白く煙る。

彼はフリキミルヴィルの背中を見つめていた——聖人のような顔をした殺人者、あるいは殺人者の手を持つ聖人。

「僕にも、がんを患った身内がいた」

テヒモシンの声は低く、重かった。周囲の剥がれ落ちた壁と同じように。

「死ぬ直前まで、骨の髄まで痛むという苦しみを味わっていた。

 毎日、毎時間、『痛い』『ああ、神様』『なんでこんなに苦しいんだ』『母さん、助けてくれ』……

 その叫び声が、今でも僕の耳にこびりついている」

フリキミルヴィルは足を止めたが、振り返らなかった。

彼はわずかに首を傾げ、灰色のコートの裾を、割れた窓から入る風に揺らせた。

虚無を見つめながら、彼の特殊な視界には、生物電気の残滓がまだ弱々しく瞬いていた。

「それが、僕が彼らを苦しみから解放してあげる理由です、テヒモシン」

フリキミルヴィルは静かに振り向き、深い瞳で相手を正面から見つめた。

「叫び声はもうない。ただ、沈黙だけが残る。

 彼らが何十年も求め続けていた、甘い沈黙です」

彼はゆっくりと集中治療室の跡地へと歩を進めた。

そこには最も「故障の激しい装置」が安置されていた。

小さな部屋の前で立ち止まり、曇ったガラス越しに、十歳くらいの子供が横たわっているのを見た。

全身を白い包帯でぐるぐる巻きにされ、古い人工呼吸器に繋がれて、弱々しい「カチ……カチ……」という音だけが響いていた。

「この子は」

フリキミルヴィルは冷たいガラスに手を当てた。

「物乞い組織に脊椎を折られて、金儲けの道具にされていたんです。

 もう価値がなくなったから、ここに捨てられた。

 この子の脳が今、どんな信号を発しているか分かりますか?」

フリキミルヴィルの特別な視界では、世界の色彩が消え、代わりに生物電気のネットワークが浮かび上がる。

子供の首の周りで、神経の痛みの赤い光が、激しく火花を散らしていた。

「回路が痛みで焼き切れそうです。

 一秒ごとにショートしている」

フリキミルヴィルはドアをすり抜け、ベッドサイドに立った。

触れる必要すらなかった。

ただ一つの意志で、遠隔から延髄を直接「切断」する。

カチ。

人間の耳には聞こえないほどの、小さな音。

人工呼吸器はまだ動いていたが、子供の胸はもう上下しなくなった。

苦痛で歪んでいた小さな顔が、ゆっくりと緩み、波一つない湖のような平穏を取り戻した。

「死は……時には、貧しい者がタダでもらえる、最後の贈り物なんですよ」

フリキミルヴィルは手を下ろし、静かに言った。その声は夜の寺の鐘のように響いた。

テヒモシンは部屋に入り、小さな遺体を見つめた。

「本当に……穏やかだな。

 お前は、運命が記録する間もなく殺す」

「運命なんて、ずっと前に彼らを見捨てたんですよ」

フリキミルヴィルはテヒモシンの横を通り過ぎ、病院の出口へと向かった。

夜の闇が、すべてを飲み込もうとしていた。


第3章 生命維持装置

病院の門をくぐり出ても、外の世界は少しも明るくならなかった。

激しい雨がアスファルトの道路を洗い流していたが、このスラム街を覆う腐敗の臭いまでは洗い流せなかった。

フリキミルヴィルが突然足を止めた。

視線が、ずっと前に閉店した店の軒先に向く。

そこに、中年男性が古びた車椅子に座っていた。

その光景を見ただけで、テヒモシンでさえ身震いした。

その男はもはや人間とは呼べなかった。

プラスチックとゴムの混沌に囚われた存在だった。

鼻から胃袋まで一直線に伸びた栄養チューブ、腰に固定された排泄物の濾過バッグ、そして喉に開けられた人工孔に繋がったプラスチック製の気管チューブが、息を入れるたびに「ゴロゴロ……」と湿った音を立てていた。

「あの人は末期の食道がんに加え、暴動の後遺症で全身麻痺になったそうです」

テヒモシンが苦々しい声で言った。

「家族に入院させる金がないので、道端でこんな安物の管だけで生命を維持している。

 話すことも、食べることも、自分で排泄することもできない……ただ『存在し続けている』だけです」

フリキミルヴィルはゆっくり近づいた。

彼の特殊な視界では、その男の生物電気回路はもはや滑らかな糸などではなかった。

結びつき、引きちぎれ、赤黒い痛みの火花を絶え間なく散らしていた。

「見てご覧」

フリキミルヴィルは虚空を指差した。

「彼の電気は、錆びついた『部品』の中を無理やり流れ続けている。

 生きているんじゃない。あの管に強制的に動かされているだけです。

 愛情という名目での、長い長い拷問ですよ」

彼は片手を上げ、指を素早く閉じた。

タチッ。

最後のプラグが抜かれた。

老人は静かに目を閉じ、長い息をゆっくりと吐き出した。

全身の筋肉が弛緩し、顔が穏やかに緩む——まるでずっと失っていた宝物を見つけたかのように。

平和。

男は胸に顎を落とし、唇の端にかすかな微笑みを浮かべた。

無機質なプラスチックの管たちは、もはや何の役にも立たなくなっていた。


第4章 絶対停止命令

夜の静寂を切り裂く、複数のエンジン音が響き渡った。

暗い路地や隙間から、完全武装した傭兵が数百人単位で雪崩れ出てきた。

黒い銃口が一斉にフリキミルヴィルに向けられる——まるで血に飢えた獣の群れだった。

傭兵たちが引き金を引き、荒々しい怒声がスラム全体に響く。

しかしフリキミルヴィルは微動だにしなかった。

彼はただ、深いため息をついた。

暴力だけを信条とする者たちへの、底知れぬ悲しみを帯びた息だった。

彼は銃口など見ていなかった。

彼が見ていたのは、眼前で蠢く巨大な生物電気のネットワーク——数百の「プラグ」が憎悪で震えている光景だった。

フリキミルヴィルは右手を天に掲げ、五本の指を大きく広げた。

百メートル以内のすべての電気信号を捉え——

突然、握り締めた。

「電源オフ」

絶対停止命令。

爆発も、血しぶきも、悲鳴もなかった。

ただ、数百の肉体が同時に地面に崩れ落ちる、軽く無力な音だけがした。

数百の脳が同時にプラグを抜かれ、痛みを感じる間すらなく、永遠の眠りへと落ちた。

恐ろしいほどの静寂が訪れた空間を、フリキミルヴィルはゆっくりと歩いていった。

弱い月明かりが、地面に横たわる無数の顔を照らす。

彼らは戦死した兵士には見えず、激しい人生の後に与えられた長い長い休暇を得た者のように、穏やかで安らかだった。

テヒモシンは山積みの死体を見つめ、声を震わせた。

「彼らは……一体何者だったんだ?」

「病院が僕を殺すために雇った傭兵だよ」

フリキミルヴィルは静かに答えた。

「これで、誰も病気を治療するために病院に行く必要がなくなる」

テヒモシンは息を詰まらせた。

「……なるほどな。

 病院は患者の苦痛を商売にしている。重い病気は、莫大な金に等しい。

 お前は奴らの金鉱を、根こそぎ奪おうとしているんだ」


第5章 偽りの出発点の記憶

雲一つない澄んだ空に、巨大な炎の塊のような太陽が浮かんでいた。

容赦ない正午の陽射しがアスファルトを焼き、地面から熱気が立ち上る。

空気は砂埃と乾いた臭いで重く淀み、息をするだけで喉が焼けるようだった。

フリキミルヴィルは、崩れかけた古い建物の薄い日陰に立っていた。

遠くに見えるガラス張りの高層ビル群を、ぼんやりと眺めている。あの場所は、こことは比べ物にならないほど華やかで贅沢に見えた。

「昔の僕は、こんな人間じゃなかった」

フリキミルヴィルがぽつりと呟いた。声は今にも切れそうな細い電線のように弱々しかった。

「とても楽観的だったよ。当時の僕の信条はシンプルだった。

 人生が痛みを与えるなら、笑ってそれを受け取ればいい——まるで贈り物のように」

テヒモシンは黙って耳を傾けた。

一人の楽観的な少年が「プラグを抜く死神」になるまでに、この世界がどれほど残酷だったのか、彼には想像がついた。

「でも、笑顔は誰一人救えなかった」

フリキミルヴィルは続けた。

彼の視界の中で、現実が一瞬ぼやけ、時間を逆行させた。

田舎から都会へ、電気工学科の大学に進学した、あの頃の記憶へ。

「あの頃、僕の田舎のクラスは僕を含めてたった五人だった」

声は乾いた空気のように乾いていた。

「みんな本当の兄弟のように仲が良かった。村の人たちはお互いを思いやり、果物一つ、野菜一つ、エビやカニでも少しでもあれば分け合った。大切なのは気持ちだった。

 でも、この街に足を踏み入れた瞬間、すべてが内側から腐っていることに気づいた」

彼は拳を強く握りしめた。講義室の記憶が、不正に満ちて蘇る。

「都会の学生たちは怠惰で遊び好きで、救いようがなかった。

 ほとんどの宿題を、僕一人でやっていた。終わった後、みんなに提出するよう強要された。

 でも返ってきた結果は? 教授の露骨な点数操作だった。

 理由は簡単だ。『四十人全員が百点満点では困る』と」

フリキミルヴィルは嘲るように笑った。

「奴らは勉強しない理由が馬鹿馬鹿しいことばかりだった。

 家業を継ぐ予定の奴、企業や役所にコネがある奴、教授の親戚や身内……。

 勉強する代わりに、恋愛、飲み会、喧嘩、女を巡る争い、高級車、最新のスマホ、電子タバコに明け暮れていた」

「クラスには普通の家庭の学生もいた。資産もコネもない、教授とも無関係な者たちだ。

 しかし彼らも都会の金持ちの真似をして遊び呆け、勉強を怠けた」

テヒモシンは隣で、フリキミルヴィルの周囲に揺れる憤怒の周波数を感じていた。

「一番吐き気がしたのは、堕落した女子たちだ。

 彼女たちは露出度の高い服を着て、教授や男性教員と『関係』を持つだけで、自動的に百点満点をもらっていた。

 一方で、僕のように実際に課題をやって提出した人間は、せいぜい八十点。

 しかもあの女は僕の答案を丸写しして出していたというのに。

 男性教授が女子を贔屓するのは当然で、女性教授は『ジェンダー平等』の名の下に女子に加点していた。

 ただ女であるだけで、五十点、百点が上乗せされる世界だった」

フリキミルヴィルの瞳が、冷たく凍てついた。

「あの女は毎日恋愛とセックスに溺れ、課題など一切やらず、提出すらしないのに高得点を維持していた。

 この国がもっと発展し、豊かになれたはずなのに……こんな汚い贔屓がすべてを腐らせている。

 不正は、学校の椅子に座った瞬間から——いや、家族の中から already根付いていたんだ」


第6章 外見の裏側と白髪交じりの頭

その歪められた点数こそが、腐った講義室の中で、残酷な偏見のシステムを築き上げたのだ。

「知ってるかい」

フリキミルヴィルは遠くの輝く高層ビルを見つめ、吐き捨てるように言った。

「どんなグループ学習でも、僕は最初から一番低く評価される。

 グループに入った瞬間、『あいつは頭が悪い』というレッテルを貼られる。

 一方で、女子たちはどれだけ怠けていても、賢くて大切に扱われる」

テヒモシンは黙って聞き続けた。

「教壇に立つのは、四十代後半から五十代のベテラン教師たちだ。

 頭は白髪交じりなのに、思考は腐りきっている。

 彼らはひどい偏見の塊で、男の子は『愚かで怠惰』、女の子は『優秀で勤勉』と最初から決めつけていた。

 彼らは外見だけで人間の学力を判断する。

 田舎から出てきた貧しい一人の男の子——僕を見て、初見で『役立たず』の烙印を押した」

拳がますます強く握りしめられた。

不正の記憶が滝のように溢れ出す。

「本当に滑稽だ。『知識を授ける者』と呼ばれる人間たちが、先人の教え『人を見た目で判断するな』を真っ向から否定している。

 おしゃれで愛想が良く、外面だけを取り繕った中身空っぽの女子たちを、優秀な見本のように扱う。

 僕の本当の努力など、外面が地味で口が上手くないというだけで、ゴミ箱に捨てられた」


第7章 偽りの騎士道と黒板拭き

「偏見が血に染みついたとき、奴らは僕を本物の労働奴隷に変え始めた」

フリキミルヴィルは冷たい目で続けた。

「教師たちが女子生徒を『優等生』扱いするシステムの中で、彼らは怠惰を隠すために、馬鹿馬鹿しい騎士道劇を上演し始めた。

 性別が、最高権力の切符になったんだ」

不正が頂点に達したのは、ある運命的な授業でのことだった。

Meeという女子が教壇に上がり、自分の仕事——黒板拭き——をしようとしたとき。

彼女が黒板拭きに手を伸ばした瞬間、教師は哀れむような顔で慌てて言った。

「女の子がそんな力仕事をしてはいけない」

教室に死のような沈黙が落ちた。

男子生徒たちは顔を見合わせ、不満を露わにした。

黒板拭きがそんなに重労働なのか?

あの黒板拭きが何キロあるというのか? 大人でさえ持ち上げられないほどか?

そんな疑問が頭の中で叫んでいたが、誰も口にできなかった。

教師は「ジェンダー平等」の名の下に、女子生徒が何もさせないよう徹底した。

しかしフリキミルヴィルは知っていた。これは平等などではない。

ただの好色教師による、安っぽい贔屓と見せかけの騎士道だ。Meeのような女子の気を引くための浅ましい芝居に過ぎない。

「あの日、Meeは遅刻してきた」

フリキミルヴィルは拳を強く握った。

「本来は彼女の当番だった。僕は教室を掃除し、ゴミを捨て、一番汚い仕事を全部やった。

 そして最後に、一番簡単な黒板拭きまで、教師は僕にやらせるように命じた」

結果、その一年間、Meeは一切何もやらなかった。

彼女は他人の汗の結晶を当然のように享受し、白髪交じりの男の欲望によって与えられた特権を満喫した。

フリキミルヴィルは、女子に夢中になる教師たちを心底嫌っていた。

彼らにとって、教師は知識の導き手などではなく、性欲によって乱れた回路が、教育システム全体を腐らせ、漏電させているだけの存在だった。


第8章 天使の皮を被った蛇

「あの甘やかしが、一匹の怪物を作り上げた」

フリキミルヴィルは言った。

「僕が疲れ果て、Meeの怠惰の道具になることを拒否した瞬間、『天使』はたちまち毒蛇の本性を現した」

彼は虚空を見つめた。記憶の中で、群れが自分を引き裂こうとする光景が蘇る。

「Meeは僕の背後を突くキャンペーンを始めた。

 知り合いだろうと知らない者だろうと、先輩だろうと後輩だろうと、僕の悪口を吹聴して回った。

 果ては僕の家族にまで連絡して、毒を吐くような中傷を浴びせた」

「彼らのルールはシンプルだった。

 『Frikimilvirと関わる者は嫌われる。Frikimilvirと関わる者はいじめられ、罵倒され、呪われる』

 彼らは群れを使って僕をいじめ、僕が『奴隷』になることを拒否するたび、みんなの前で罵倒した。

 Meeは僕の汗で卒業し、僕の答案を丸写しして提出し、教師の盲目な贔屓で僕を追い抜いた」

彼は歩きながら、熱で溶けかけたアスファルトを踏みしめた。

「その悪意の理由? 簡単だ。

 あの女子たちは、外見だけを人間を測る唯一の基準にしていた。

 ブランド品、最新スマホ、億単位の高級車……家族が持っていなければ、容姿を使って成功した男を誘惑する。

 この技術の時代に、彼らはSNSで虚飾の美しさを晒し続け、嫉妬と比較の無限ループに陥っている」

「彼女たちは人間じゃない。故障した回路だ。

 貪欲と自己中心の周波数を垂れ流し続け、他人の力を利用して上り詰めると、汚れた足で自分を助けた者を蹴落とす。

 Meeは、この腐ったシステムの典型だ。

 そして、そんな毒を垂れ流す回路になった以上、してやれることは一つしかない——プラグを抜くことだ」


第9章 嘘をつく数字たち

不正の鎖は、最も緊張感のある試験の時期に、ついに固く締め付けられた。

「僕とMeeは隣同士で座り、答案はカンマ一つ、文字の一つまで完全に同じだった。

 それでも結果は現実への平手打ちだった。Meeは100点、Frikimilvirは80点」

フリキミルヴィルは、まるで糸が切れそうな弱い声で言った。

「この講義室では、理不尽なことが当然だった。

 彼らは顔見知りや、おべっかを使い、外見で中身の空っぽさを隠す者を贔屓する。

 それは公然の秘密で、誰もが知っていたが、誰も声を上げなかった」

周りにも同じ不正を味わった者たちがいた。

しかし彼らは臆病だった。

頭を垂れ、踏みにじられるままに、屠殺場に連れられる羊のように勉強を続けた。

彼らはそれを「適応」と呼んだ。

しかし僕は、違った。

フリキミルヴィルはテヒモシンを見つめ、瞳に強い光を宿した。

「僕は両親に嘘をつき始めた。

 毎朝バックパックを背負って家を出るが、足は二度とあの腐った講義室に向かわなかった。

 街をさまよい、暗い路地を歩き、この世界が根元から壊れている様子を眺めた。

 僕はシステムの中の歯車になるくらいなら、浮浪者になった方がましだと思った」

彼は雲一つない空を見上げた。

「両親はまだ大学卒業を夢見ていただろう。

 しかし彼らは知らない。あの場所では、知識のプラグはとっくに抜かれ、代わりに私利私欲と欲望のプラグが差し込まれていたことを。

 その瞬間から、僕は誓った。

 二度と、誰かにいじめられる側にはならないと」


第10章 卵の頃から歪んだ周波数

フリキミルヴィルは賑やかな通りを目的もなく歩いていた。

両親に心配をかけないため、毎日バックパックを背負って家を出るが、足はあの不正に満ちた講義室ではなく、街の様々な路地へと向かっていた。

彼は心の暗さを洗い流そうと、他者を助けることでわずかな安らぎを見出そうとした。

しかしこの社会は、彼により残酷な現実を突きつけてきた。

「君、名前は? どうしてここで一人で泣いているの?」

フリキミルヴィルは、六、七歳くらいの幼い男の子が立ち尽くす交差点でしゃがみ込んだ。

迷子だとわかると、最寄りの警察署まで連れて行くことにした。

緊張を和らげようと、彼は優しく尋ねた。

「暇なときは家で何してる?」

「スマホとタブレットとテレビを見るだけです」

子供は妙に平然とした声で答えた。

フリキミルヴィルは微笑み、共通の話題を探した。

「アニメとか特撮とか見る? 僕、昔は大好きだったよ」

子供は早熟した大人びた目で彼を軽蔑するように見た。

「そんなの子供向けの動画でしょ。僕、見ません」

フリキミルヴィルの足が一瞬止まった。

「じゃあ……スマホでは何を見てるの?」

「大人の動画です」

子供はあっけらかんと答えた。

「胸が大きくてお尻の大きいお姉さんが、踊ってるやつ」

フリキミルヴィルは言葉を失った。

背筋に冷たい電流が走る。

彼の脳裏に、田舎での純粋な幼少期の記憶が白黒映画のように蘇った——

かくれんぼ、目隠し鬼、ビー玉、独楽やヨーヨーの音が響く地面。

「友達と一緒に遊べるおもちゃとか持ってる?」

彼は悲しみを帯びた声で聞いた。

子供は唇を尖らせた。

「おもちゃは貧乏な子がやるものです」

「……今の子供たちは、大人になりたがっているのか?」

フリキミルヴィルは苦く思った。

「技術のせいで幼少期を失い、まだ文字も読めないうちから安い肉欲に毒されている」

その時、高級車が急ブレーキで路肩に止まった。

夫婦が飛び降り、顔を怒りで歪めていた。

しかし感謝の言葉はなく、代わりにフリキミルヴィルの顔に拳が飛んできた。彼は熱いアスファルトに倒れ込んだ。

「このクソ野郎! 俺の息子を誘拐しようとしたな!?」

激しい罵声が往来に響き渡った。

助けたはずの子供は、無表情で自分を助けた男が殴られるのをただ見つめていた。

その瞬間、フリキミルヴィルは悟った。

この世界では、善意こそが最も滑稽なものであり、恩知らずは技術と金によって育てられているのだと。

彼は顔のあざを押さえ、よろよろとその場を去った。

「自分の接し方が悪かったのかもしれない」——そう自分に言い聞かせたが、数日後、彼はさらに血塗られた出来事と向き合うことになる。


第11章 救済のナイフ

「子供誘拐未遂」事件のあざはまだ疼いていたが、フリキミルヴィルは瀕死の命を見捨てることができなかった。

人気のない交差点で、恐ろしい事故の後、少女が血だまりの中に倒れていた。

通行人たちは巻き込まれるのを恐れて遠巻きに見ているだけだったが、彼は違った。

彼は慌てて少女を抱き上げ、血が古びたシャツを真っ赤に染めた。

救急車は間に合わず、彼は手持ちのわずかな金でタクシーを止め、少女を病院へ運んだ。

仮払いの治療費を済ませ、少女が救急室に運ばれるのを見届けた後、フリキミルヴィルは震える手で少女のスマホを取り、家族に連絡した。

「……もしもし、お嬢さんが事故に遭われました。今、病院に……」

電話を切り、彼は病院の廊下のベンチにぐったりと座り込んだ。

両手にはまだ乾いた血がこびりついていた。

「今度こそ、正しいことをした」——彼はそう思った。

せめて感謝の言葉か、安堵の視線くらいはもらえるだろうと。

しかし現実は、再び彼の顔を平手で叩いた。

中年男と白髪の老人が、獣のように廊下に飛び込んできた。

血まみれの服を着たフリキミルヴィルと、少女のスマホを持った彼を見て、目が憎悪に濁る。

「このクソ野郎! うちの娘に何をしやがった!?」

フリキミルヴィルが説明する間もなく、白髪の老人——本来なら慈悲を持つはずの祖父——が近くの木製の椅子を掴み、彼に叩きつけた。

中年男はさらに凶暴で、ポケットから小型のナイフを取り出し、盲目的な憎悪の亡霊のように襲いかかってきた。

グサッ!

脇腹に激痛が走った。

フリキミルヴィルは目を見開き、自分の体に深く刺さったナイフを見つめた。

傷口から血が溢れ出し、さっきまで助けていた少女の血と混じり合った。

「や……やめて……僕は彼女を助けただけ……」

声は喉で詰まった。

彼らは聞いていなかった。聞く気すらなかった。

近くにいた人間は自動的に犯人だと決めつけ、すべての恐怖と怒りを最も弱い者にぶつけた。

フリキミルヴィルは冷たい病院の床に崩れ落ちた。

彼の血と他人の血が混ざり合い、肉体だけでなく心にも深い傷跡を刻み込んだ。


第12章 善意が自らを隠すとき

数日間の入院を終え、フリキミルヴィルは再び街へ出た。

今度は若い男が意識を失い、痙攣しながらアスファルトに倒れ、血を流していた。

前回の救命でできた脇腹の傷跡が警告のように疼いたが、彼の本能は震える手で行動させた。

またタクシーを呼び、被害者を病院へ運び、費用を立て替え、家族に連絡した。

今度こそ慎重にしなければ——彼は自分に言い聞かせた。

男の母親が慌てて駆けつけてきたとき、フリキミルヴィルは必死に訴えた。

「おばさん、僕が事故を起こしたわけじゃないんです。ただ通りかかって、息子さんを病院に運んだだけです」

拳やナイフを防げることを願った。しかし無駄だった。

「何を言ってるの? お前じゃないなら誰なのよ!」

女性は倒れた息子ではなく、フリキミルヴィルに燃えるような怒りの目を向けた。病院の廊下で大声を浴びせた。

彼は呆然としながらも平静を保とうとした。

「本当に……僕はただ助けただけで……」

「じゃあ事故を起こした犯人はどこ? なぜ捕まえなかったの? 被害者を見て犯人を逃がすなんて、どういう神経してるの!?」

フリキミルヴィルの喉に苦い憤りが込み上げた。

授業をサボり、自分の金を費やして彼女の息子を助けたというのに、今は罪人のように罵倒されている。

説明すればするほど女性はヒステリックになり、彼をすべての不幸の元凶のように責め立てた。

彼は静かに背を向け、女性の罵声が背後に響く中、病院を後にした。

「いい人になること……こんなに難しいことだったのか」

夕陽が彼の影を長く地面に伸ばしていた。

フリキミルヴィルは荒く上下する胸を押さえ、うっ積した憤りを石のように感じた。

この社会では善意が疑われ、親切が罰せられる。

真っ当な人間に残された選択肢は一つ——自らを隠すことだけだった。

しかし、善意という重荷はまだ彼を解放しなかった。


第13章 心の内出血

車と人の流れが途切れなく続く中、一人の妊婦が激しい衝突事故の後、倒れていた。

通行人たちは一瞬足を止め、好奇の目を向けるだけで、冷たくアクセルを踏んで去っていった。

母と胎児の命など、道端の安い芝居に過ぎないかのように。

フリキミルヴィルは再びその場に立っていた。

足が震え、古い傷が警告するように痛んだが、貧しい田舎で育った本能が恐怖に勝った。彼は妊婦のもとに駆け寄り、必死に助けようとした。

しかしその救いの代償は、再び憎悪の拳だった。

被害者の家族が狂ったように襲いかかってきた。

彼らは犯人が誰かなど興味がなく、ただ八つ当たりできる生贄を求めていた。

拳と蹴りが頭、胸、腰に容赦なく降り注いだ。

フリキミルヴィルは地面に倒れ、冷たいアスファルトが頰に張り付き、罵声がぼやけて聞こえた。

その後の記憶は激痛の混沌だけだった。

「前頭部硬膜外出血……多発外傷……」

医師の声が、冷たいX線フィルムの間で遠く響いた。

フリキミルヴィルはベッドに横たわり、吐き気と激しい頭痛に苛まれ続けた。

目を閉じるたび、無関心な群衆と、自分が命を救った者たちの拳が浮かんだ。

退院の日、彼は体をずたずたにして歩いた。

頻発する頭痛が彼を疲弊させ、心の奥底には恐怖が根を張り、最後の善意の芽を締め付けていた。

「自分の身の安全を最優先にしろ、息子よ」

父は新しい傷跡を見て、声を詰まらせながら言った。

「助けられる状況で、自分が無事なら助けろ。

 お前が何かあったら、家族と自分だけが苦しむんだ」

父の言葉は、フリキミルヴィルの「いい人」時代に終止符を打った。

鏡に映る自分は、魂の抜けた見知らぬ人間だった。

田舎の少年の誇りだった善良さは、今や肉体と精神を蝕む悪性腫瘍となっていた。

この社会では、人を助けることは自殺行為なのだ。

頭痛が再び襲ってきたが、彼はもう恐れていなかった。

ただ、人間という存在に対する、底知れぬ軽蔑だけを感じていた。

父の言葉を聞くべきか——自分を守るべきか?


第14章 救済が罪になるとき

いや、まだだった。

体内に残る善意の血が、無意識に目障りな出来事に介入させてしまった。

数週間後、彼は再び誰かを救った。

慌ただしい車道に、小さな影が不用心に飛び出した。

ブレーキの甲高い音が響き、次の瞬間には小さな体が車輪の下で潰されるはずだった。

残された善意の亡霊のように、フリキミルヴィルは飛び出した。

彼は子供を抱きかかえ、熱いアスファルトの上で転がり、死の衝突を避けた。

二つの心臓が、埃と焼けたゴムの臭いの中で激しく鼓動した。

恐怖のあまり、子供は泣き叫んだ。

その泣き声は、守られた命の証のはずだった。

しかし駆けつけた家族の目には、それは罪の証拠に映った。

「お前、うちの子に何をした!?」

怒声が上がった。

事故現場の確認も、事情聴取もなく、家族は刺激された獣のようにフリキミルヴィルに襲いかかった。

「道で子供を虐待するなんて!」

拳が顔に、蹴りが自分を守ったばかりの胸に叩き込まれた。

フリキミルヴィルは地面にうずくまり、救った瞬間の埃にまみれた手を見つめた。

説明する気力もなかった。

子供の泣き声と周囲の罵声が混じり合い、残酷に彼の心を締め付けた。

口の端から血が滴り、アスファルトに落ちた。

指の隙間から見ると、家族は子供を抱き、偽りの愛情で慰めている。

その命を救った自分は、容赦なく踏みつけられていた。

彼は冷たい群衆の中でゆっくり立ち上がった。

脇腹の古傷、硬膜外出血による頭痛、そして新しいあざ——すべてが憤怒の回路となって繋がった。

今、彼はもう痛みを感じていなかった。

ただ、底知れぬ虚無だけがあった。

彼は服の埃を払い、冷たい目で子供の家族——感謝の代わりに痛みを与えた者たち——を見つめた。


第15章 救済が罪になるとき

夕陽が公園の寂しい道に、フリキミルヴィルの影を長く伸ばしていた。

彼は力なく歩き、脇腹の古い傷が時折疼いて、善意の代償を思い出させた。

突然、嗚咽が聞こえた。

フリキミルヴィルは足を止め、木の根元で縮こまって泣いている五歳くらいの女の子に目を向けた。

少し離れたところで、小さな犬が唸り、毛を逆立てていた。

理性が「無視しろ」と叫んでいたが、足は本能に従って動いた。

彼は女の子の前にしゃがみ、優しい声をかけた。

「どうしたの? 何かあった?」

女の子は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げ、泣きながら言った。

「犬が……犬が噛んだの……」

フリキミルヴィルは小さな犬を見て事情を理解した。

可愛いと思って触ったら噛まれたのだろう。彼は優しく女の子の頭を撫でた。

「泣かないで。大丈夫だよ、見せてごらん。

 小さな犬だから、傷は深くないよ」

彼は女の子を慰め、最も優しい言葉で恐怖を和らげようとした。

今度こそ正しいことをしたと思った。

せめて微笑みか、安堵の表情を期待した。

しかし現実は、再び彼の顔を平手で打ち据えた。

女の子の父親が現れ、娘の傷を確認する前に、フリキミルヴィルの顔に拳を振るった。

彼は当然のように「自分の可愛い娘をいじめた」と決めつけていた。

一撃ごとに、フリキミルヴィルの中の人類への信頼が一本ずつ断ち切られていった。


第16章 鎖に繋がれた導き手

フリキミルヴィルは、自分の魂を救うための最後の善行を探していた。

家路につく途中、小学校低学年の男の子が一人で寂しげに歩いているのを見つけた。

重いランドセルを背負った小さな肩が、危険に満ちた街中で痛々しかった。

田舎で育った温かな共同体意識が、再び彼の中で目を覚ました。

彼は優しい笑顔を浮かべて近づいた。

「もう暗くなってきたね。兄ちゃんが家まで送ってあげようか?」

子供は無邪気に頷いた。

道中、フリキミルヴィルは男の子の手を引いて丁寧に家まで送り届け、門の前で静かに別れた。

彼は安堵の息を吐き、少なくともこの子を本物の悪人から守れたと思った。

しかし、それは大きな間違いだった。

「おい! さっき俺の息子がこいつと一緒に歩いてたぞ!」

後ろから叫び声が上がった。

フリキミルヴィルが振り返る間もなく、中年男が暴風のように飛びかかり、何の警告もなく拳を顔面に叩き込んだ。

「この野郎! 俺の息子をどこに誘拐したんだ!?」

人だかりが瞬く間に集まり、猜疑と非難の視線が鉄の檻のようにフリキミルヴィルを囲んだ。

男は狂ったように彼の襟首を掴み、必死に連れ帰った子供について詰問した。

「息子さんは家にいますよ!」

フリキミルヴィルは声がかすれるほど憤りを込めて叫んだ。

「さっき門の前まで送り届けたばかりです!」

男は動きを止め、疑いの眼差しを向けた。

震える手で妻に電話をかけ、数秒の緊迫したやり取りの後、腕をだらりと下ろし、顔色を変えた。

「……本当に、家にいるらしい」

謝罪の言葉はなかった。

後悔の視線もなかった。

男は背を向け、人だかりも何事もなかったかのように散っていった。

残されたのは、顔から血を滴らせ、完全に砕けた魂を抱えたフリキミルヴィルだけだった。

彼は立ち尽くし、自分の手を見つめた。

ついさっき、無事に子供を家まで導いたその手が、今は濡れ衣の恥辱にまみれていた。

真実はもう重要ではなかった。

この社会では、善意は即座に犯罪と同等とみなされる。

人々は質問する前に、まず見知らぬ者の顔を殴る。

彼は決意した。この世界を、自己中心と猜疑の歯車に任せようと。

しかし、善意は彼の本性だった。

おそらく死ぬまで、それは変わらないのだろう。


第17章 無恩の響きと闇の中の再生

血。

今度は他人の血ではなく、フリキミルヴィル自身の血が、冷たい救急室のタイルの床に広がっていた。

すべては、交通事故に遭った幼い女の子を抱きかかえて病院に駆け込んだことから始まった。

彼は奇跡を期待したが、待っていたのは獣の群れだった。

被害者の家族が雪崩れ込み、証拠も考えもなしに彼を犯人だと叫んだ。

拳、鉄パイプ、ベンチ……すべてが貧しい大学生の細い体に降り注いだ。

彼は、救済の象徴であるはずの場所で倒れた。

フリキミルヴィルは死んだ。

自分が全力で助けようとした者たちの手によって、極限の無念の中で死んだ。

しかし闇は彼を容易く行かせなかった。

無限の虚無の中で、冷たい手が彼の魂を掴んだ。

暗黒の指導者アンモルクザラフトが虚空から現れ、邪悪な力で彼を死の淵から引き戻した。

フリキミルヴィルは目を開け、荒い息の下で囁いた。

「なぜ……僕はいつも人を助けるのに、彼らが返すのはいつも拳ばかりなのですか?」

アンモルクザラフトは深淵のような瞳で彼を見下ろした。

「事故の犯人を殴るというのはただの口実だ、フリキミルヴィル。

 問題は、血に飢え、好戦的で、弱者をいたぶることに快楽を覚える本性にある。

 それが人間の低俗な本質だ」

指導者はゆっくりと歩き、雷鳴のように響く声で語った。

「無恩は事故ではない。それは遺産だ。

 何千年も前から、裏切りを語る民謡や諺が存在し、忘恩の性質が血の中に深く根付いていることを証明している。

 世代から世代へ、腐敗と悪臭を放ちながら受け継がれている。

 人間に感謝を求めるとは、糞を食わせて成長させろと言うようなものだ」

アンモルクザラフトは薄く笑った。その笑みには深い軽蔑が宿っていた。

「だからこの国の人間は、世界中から嫌われるのだ。

 他の国の人々が愛し合い、団結し、支え合う一方で、この国の人間は互いを傷つけ合う。

 『動物を助ければ恩を返す、人を助ければ恨みを返す』という言葉が、この国の決まり文句になったのは偶然ではない。

 残酷な真実だ。誰もが知っている真実だ」

フリキミルヴィルの周囲に、古い文字が幽霊のように浮かび上がった——

恩を仇で返す、食い扶持を忘れる、恩知らず、利用したら捨てる……

「この世界は小人ばかりだ」

アンモルクザラフトは続けた。

「利益を得れば恩人を噛みつく。恩を仇で返す。

 故障したシステムは、浄化される必要がある」

フリキミルヴィルは立ち上がった。

体の傷は癒えていたが、心は真っ黒な石となっていた。

瞳の光は消え、代わりに重苦しい処罰の電流が流れていた。

彼はもう、楽観的な田舎の少年ではなかった。

彼は、極限まで抑圧された憤怒の化身だった。

「わかりました」

フリキミルヴィルは、過負荷になった回路が軋むような声で言った。

「善意は過ちだった。

 そして僕は、この命のプラグを抜くことで、その過ちを正す者になります」


第18章 忘恩の遺産

フリキミルヴィルは静かに佇み、冷たい紫色の瞳で、慌ただしく行き交う人々の偽りの仮面を貫いた。

指導者の言葉が、まだ頭の中で死刑宣告のように響いていた。彼は口の端を歪め、この現実の秩序に対する軽蔑の笑みを浮かべた。

「無恩は自然に生まれるものじゃないよ、テヒモシン」

フリキミルヴィルは静かだが力強い声で言った。

「それは家族の中で育てられる劇毒だ。

 自分の人生の苦しみに囚われた親たちが、子供を過度に甘やかし、何でも与えて他人に負けさせないようにする。

 彼らは無意識に子供から努力する力を奪い、子供たちに『世界は自分に仕える義務がある』という思考を植え付ける。

 そんな子供たちにとって、善意は当然の権利であって、覚えておく必要すらない」

テヒモシンはため息をついた。

「甘やかしは忘恩の子供を生むんだな」

フリキミルヴィルは、服の下で黒い電流が唸るのを感じた。

「親が残す遺産は、勤勉さや努力ではなく、享楽、怠惰、臆病だ。

 もっと悪いのは、『親が与えられなければ、他人のものを奪えばいい』という最低の思考を教えることだ。

 他人の労働成果でも、友人の恋人ですら、彼らにとってはただの戦利品だ」

テヒモシンは低い声で答えた。

「俺たちは自分で幸せを作れる。他人のものを奪う必要はない」

「幸せだって?」

フリキミルヴィルは、道端で縮こまる乞食を指差した。

「あの人を見てくれ。優秀な天才が、会社で『コネ』のある馬鹿者に場所を譲るために路頭に放り出されたんだ。

 彼はかつて最高の才能を持ち、最も勤勉だった。

 しかしおべっかを使わず、『家柄』がなかったために排除された。

 代わりに就いたのは、勉強もできないが父親が偉い奴だ。

 この社会は誠実さや知性を求めていない。

 口が上手く、上司に媚び、強力な後ろ盾を持つ者を採用する。

 『親から子へ』で回る仕組みの中で、遊び呆け、文身をし、酒を飲み、女遊びをし、タバコを吸うような連中が、父親が部長だから安定した地位に就ける。

 ここでは、真面目に努力する者の労力はすべて無駄だ」

「発展した社会と貧しい社会の違いはそこにある。一方は人間を資源と見なし、もう一方は国家機構を一族が食い物にする場所と見なす」

フリキミルヴィルの瞳に残酷な意志が宿った。

無能で役立たずの金持ちの息子たちが豪邸、高級車、美しい妻を手に入れ、有能な人間が排除される不正を、彼は痛感していた。

「人間が忘恩なのは、自尊心が過剰だからだ。

 後ろ盾があれば何でもできると思い込み、他者を利用することを『賢さ』だと勘違いする」

フリキミルヴィルはきびすを返し、コートの裾を翻した。

「もう見過ごさない。

 社会に捨てられた才能ある者たち——路頭に放り出されても、否定できない才能を持つ者たちを探し出す。

 俺たちは結託し、独自の方法で彼らの力を引き出す。

 ゴミと蔑まれた者たちが、この腐った社会が決して手に入れることのできない偉業を成し遂げる」


第19章 神々の沈黙

国家を変えるための人材集めの夢は、完全に失敗に終わった。

フリキミルヴィルは死んだ。

彼の死は現実にあいた大きな虚無を残し、何も埋められない深い傷跡となった。

恐ろしいほどの静寂の中で、テヒモシンは激しい怒りの炎を瞳に宿して立っていた。

彼は歯を食いしばり、広大な虚無に響く声で叫んだ。

「誰だ……誰がこんなことをした!?」

「我々だ」

空間の裂け目から、威厳に満ちた声が雷鳴のように響いた。

五体の輝く実体が現れ、息を詰まらせるほどの重圧を放った。

彼らの光はあまりに眩しく、この世の暗さと完全に対照をなしていた。

テヒモシンは目を細め、鋭い視線で相手を即座に認識した。

「……やはり、お前たちか。ハイゴッダー」

先頭に立つカイテイコアが一歩踏み出し、冷たい声で問い詰めた。

「テヒモシンよ、なぜ『神の子』たちがあの怪物どもを滅ぼすのを邪魔する?」

「あいつらは怪物じゃない」

テヒモシンは神威の前に立っても動じず、言い返した。

「あいつらは人間だ」

「人間?」

ラングハンセントが剣のように鋭い声で言った。

「奴らが毎日殺す人間の数は膨大だぞ。そんな屠殺者を人間と呼ぶのか?」

「あいつらはアンモルクザラフトという男の命令で殺している!」

テヒモシンは声を荒げ、周囲の電流を爆発させた。

その名を聞いた瞬間、空気が激しく揺れた。

神々は顔を見合わせた。

バラウツェアミが眉を寄せた。

「アンモルクザラフト? そんな名は神々の年代記にないぞ」

「だからこそ、僕が調べなければならないんだ!」

テヒモシンは最高神たちに近づき、燃える瞳で訴えた。

「あいつは謎の存在だ。

 神々の名を借りて、人類を粛清している。

 お前たちは知らぬ間に、汚いゲームの駒にされているんだ!」

沈黙が落ちた。

グラサルジェシが静かに頷き、光を和らげた。

「なるほど……そういうことか。

 だから『神の子』たちが我々の直接命令を拒否したのか」

「このゲームはもう行き過ぎている」

テヒモシンは声を低くしたが、力強く続けた。

「『神の子』たちは『四聖』を滅ぼした。

 お前たちも『三神』を滅ぼした。

 盤上の駒は減り続けている。今残っているのは『時空の双子』だけだ。

 警告する。あの二人には絶対に手を出さないでくれ」

ブンゴンドクはため息をつき、神の威圧を収めた。

「わかった。我々もこの世界が予想以上に混沌としていることは理解した。

 では、今後我々はどうすればいい?」

テヒモシンは背を向け、遠い地平線——主犯の影がまだ雲の向こうに潜む方向——を見つめた。

「お前たちは何もする必要はない。

 ただ力を温存してくれ。これ以上利用されるな。

 今必要なのは、忍耐だけだ……真の黒幕が姿を現すまで」

ハイゴッダーの神々は互いに視線を交わし、最後に一斉に頷いた。

次の瞬間、彼らの姿は霞み、虚空へと完全に消え去った。

焼けつくような陽射しと、砂埃の濃い空気の中、テヒモシンただ一人がそこに残された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。