地獄の道徳
第一章:七十二の地獄門の判決
七月一日、火曜日。二〇二五年。
喧騒に満ちたバーの中で、五十八歳の男がVIP席にどっかりと腰を下ろしていた。新婚の十八歳の妻を迎えたばかりだというのに、男は浮気癖を捨てられなかった。この遊びのために、男はプライドも何もかも投げ捨て、二十歳の若造を「兄貴」と呼んで紹介を頼むほど卑屈になっていた。
「ここにティーンエイジャーの女は抱けるか?」
老いた男は唇を舐め、濁った目で欲望を露わにした。
「はい、ございます。」
店員は腰を低くして答えた。
「よし、呼んでくれ!」
男が得意げにしている最中、冷たい声が響いた。
「相変わらずだな。結婚したばかりだというのに、バーに来て女を抱こうとは。」
老いた男はびくりとして怒鳴った。「お前は何者だ? 警備を呼んで追い出せ!」
「美女が欲しいのか? 地獄に落ちて探せばいい。」
黒い影が現れた。少年は、金と地位を使って生きるこの男を、虫けらのように軽蔑の眼差しで見た。そして大きく手を叩いた。
「七十二の地獄門。」
バーの床が大きく裂け、鉄の扉が現れた。老人とその場にいた者たち全員を、奈落の底へと飲み込んだ。重さ数千キロの二枚の巨大な鉄扉が勢いよく閉まる。
ガシャン!
犠牲者たちは扉の間に挟まれ、数千キロの圧力で潰された。極限の痛みが正確に七十二回繰り返された。全ての回数が終わると、扉は空中に現れ、老人と店内の者たちのぐちゃぐちゃになった死体が地面に落下した。
血に染まった現場の中心に、テヒモシンが現れた。まるで死体を見るのが日常であるかのように平然とした表情で。
「お前がジョルドガンスマートだな。」テヒモシンは言った。「利己的で、腐敗し、権力を濫用し、国と民を害する害虫どもを抹殺する専門家だ。」
ジョルドガンスマートは振り返った。「お前は何者だ?」
「私は、ユモンカエドラが死んだことを伝えに来た。そして、お前と共に犯人を調べたい。」
「わかった。一緒に行こう。」
白い光と黒い光が爆発し、二人は現場から姿を消した。
同時刻、別宅では十八歳の妻が、老いた夫を金目当てに罵りながらライブ配信をしていた。傍らには二十歳の「兄貴」がいて、老人から渡された金で贅沢を満喫していた。二人は死神がすぐそこまで来ていることなど知る由もなかった。
「お前が気持ちいい時は一人で気持ちいいくせに、苦しい時は文句ばかり言うのか? 誰が無理やり愛せと言った? お前が自分で選んだんだろ?」
ジョルドガンスマートが部屋の真ん中に現れた。
「愚痴を言うなら死ね。」
手を叩く音が響いた。
「七十二の地獄門。」
二人の足元に鉄の扉が開いた。金目当ての若い妻と「兄貴」は深い穴に落ちた。鉄と肉が激しくぶつかる音が七十二回響き、肉体を粉々に砕いた。判決が終わり、二人の死体は天井から落ちてその場に倒れた。
ジョルドガンスマートはテヒモシンに向かって教えた。
「覚えておけ。美しい人間が必ずしも良い人間とは限らないが、良い人間は必ず美しく見える。」
テヒモシンが好奇心を込めて聞いた。「お前は美女が好きか?」
「俺にとって、美しさは全てではない。性格や才能の方が大事だ。外見だけで好きになるなら、相手が醜くなった時に捨てるのか? 結婚するのはただ眺めて『俺の女は可愛い』と自慢するためだけか?」
少年は拳を強く握り、軽蔑に満ちた目で言った。「結婚したなら幸せに生きるべきだ。外見だけに夢中になる馬鹿どもを心底軽蔑する。あいつらは糞に群がるウジ虫と何も変わらない。脳みそも糞ばかりだ。」
ジョルドガンスマートは嘲るように笑って付け加えた。「男と女の違いはここにある。男は女を『ブスだ』と言いながら、服を脱がせてやれば誰でも飛びつく。だが女は一度『ブス』と決めつけたら徹底的に見下し、触れれば強姦、服を脱げば変態扱いだ。実に滑稽な話だ!」
第二章:銀の館の幽霊
静まり返った密室の中で、金箔を貼られた壁と、山積みの機密書類に囲まれ、高級官僚が部下たちに囲まれながら賄賂の話をしていた。男は傲慢に笑い、民の金で不法な特権を手に入れ、真実を葬り去ってでも権力の座を守ろうとしていた。彼の目には、善良な市民などただの駒に過ぎなかった。
「計画通りに進めろ」
高級官僚は酒を一口飲み、尊大な声で言った。「下々の者どもに、この世界の仕組みなど理解できるわけがない。俺の利益を邪魔する者は誰であれ排除しろ」
周囲の取り巻きたちは媚びるように笑い、男を神のように持ち上げた。彼らは、自分たちのすぐそばに死神が立っていることなど知る由もなかった。
ジョルドガンスマートが現れた。少年の黒い影が部屋全体を覆う。冷たい刃のような視線が、権力を自慢する男を射貫いた。彼はこの種の害虫を心底嫌悪していた——地位を利用して正義を踏みにじり、へつらい、罪のない者を売り飛ばす卑劣な連中を。
テヒモシンは後ろに控え、死のような静けさを保っていた。彼は一枚のファイルを取り出し、この高級官僚が犯した腐敗、収賄、権力濫用の数々を淡々と示した。
「腐敗とは根深い病だ」テヒモシンが静かに言った。「しかし判決は常に公正である」
高級官僚の顔が青ざめ、助けを呼ぼうと叫びかけた瞬間、ジョルドガンスマートは機会を与えなかった。彼が手を振ると、床が大きく裂けた。
「七十二の地獄門」
一際大きな手の音が響いた。
「開け」
貪欲な者たちの足元で鉄の扉が開き、彼らを真っ暗な奈落へと吸い込んだ。直後、二枚の巨大な鉄板が左右から勢いよく閉じた。
ガシャン!
数千キロの重圧で潰される極限の痛みが繰り返される。扉が開き、また閉じ、残酷に繰り返された。傲慢さ、横暴さ、卑劣なおべっかは、判決の鼓動とともに粉々に砕かれていった。
正確に七十二回。
豪奢な部屋の天井が引き裂かれ、腐敗した官僚たちの死体が金箔の床に血まみれで落ちてきた。それは、未だのうのうと生きる者たちへの血塗られた警告だった。
ジョルドガンスマートは魔力を収め、冷たい光を宿した瞳で言った。
「まだ外にはあいつらと同じような奴がたくさんいる」
「そうだな」テヒモシンは表情一つ変えずに答えた。「全部、掃除してやる」
白と黒の光が交差し、二人は現場から消えた。豪奢な部屋だけが、死のような沈黙に包まれた。
第三章:華やかな殻の中の狩人
高級バーのネオンライトが、中央のテーブルに座る男の顔を照らしていた。男の名はヴィクター。内面は空虚そのものなのに、「冷たいバッドボーイ」を装うのが好きだった。周囲には子分たちがいて、軽い女たちを狩る遊びに手を貸していた。
ヴィクターは誰をも愛さなかった。彼が求めるのはただ、ゲームを支配する快感と、相手の自尊心を踏みにじることで得られる優越感だった。彼はわざと女性の持つグラスをはらい落とし、群衆の前で嘲笑うことで自分が「カッコいい」ことを示した。侮辱の言葉と傲慢な態度で女性が泣き崩れる様子を、残酷な愉悦をもって眺めていた。
「ほら見ろ、女なんて少し突っついただけでボロボロになる」
ヴィクターは口の端を歪めて笑い、バー中に響く声で言った。「男は生まれた時から支配するためにいるんだ。言うことを聞かないなら、自尊心なんて踏み潰してやればいい」
子分たちは下品に大笑いし、その偽りの「男らしさ」を称賛した。彼らは、店の暗がりでジョルドガンスマートが燃えるような憎悪の眼差しで観察していることなど気づいていなかった。
テヒモシンは柱に寄りかかり、周囲の喧騒から隔絶された空間を作っていた。
「こいつは腐敗政治家でもなければ権力者でもない」テヒモシンが小声で言った。「ただ、侮辱で獲物を狩るだけの男だ」
「腐敗は金だけにあるわけじゃない」
ジョルドガンスマートが歩み出た。一歩ごとに空気が重く淀んでいく。「人間が互いを踏みにじり、卑劣な自己満足を得るその心にもある」
ヴィクターは異変に気づいた。彼は振り返り、挑発的に目を細めた。「誰だお前? 俺に説教か?」
ジョルドガンスマートは何も答えなかった。ただ軽く手を振っただけで、バーの床が泥のように柔らかくなった。ヴィクターと子分たちは理解する間もなく、中央に開いた真っ暗な穴へと落ちていった。
巨大な鉄の扉が床から浮かび上がり、奈落のように口を開けた。
「七十二の地獄門。開け」
音楽が中断された中、単独の手の音が響いた。連中が闇に落ち、直後に分厚い鉄板が閉じた。
ガシャン!
金属がぶつかる音が静寂を切り裂く。扉が閉じるたび、ヴィクターの傲慢さが粉々に砕かれていった。彼が言葉で女性の自尊心を踏みにじったように、今度は彼自身の尊厳が冷たい鋼鉄で潰されていった。
鉄の扉が開き、閉じ、また開き……。
「カッコいい男」の傲慢は、闇の中で無力な叫びへと変わっていった。
正確に七十二回、徹底的に。
バーの天井が引き裂かれ、男のぐちゃぐちゃになった死体が冷たい床に落ちた。かつて高飛車に説教していた面影はどこにもなかった。店内の客たちは凍りつき、阿諛の笑いは瞬時にパニックへと変わった。
ジョルドガンスマートは埃一つ付いていない手で立ち、テヒモシンに向かって静かに言った。
「常に覚えておけ。詐欺師はいつも美しい顔をしている」
「こいつのショーはここで終わりだ」
テヒモシンが隣に寄り添った。二人は再び闇に溶け込み、警察も探偵も解明不可能な惨状を後に残した。
第四章:絶望の淵からの叫び
テヒモシンがショッピングモールの中で買い物をしている間、ジョルドガンスマートは外の街灯に背を預け、忙しなく行き交う人々を遠い目で見つめていた。突然、憔悴した顔の男が鋭いナイフを手に飛び出してきた。男は冷たい刃を少年の首にぴたりと押し当て、震えながらも凶暴な声で言った。
「お前、死ぬのが怖くないのか?」
ジョルドガンスマートは微動だにせず、静かな湖のような虚ろな瞳で答えた。
「俺にはもう失うものが何もない……だから死ぬのが怖いはずがないだろう?」
強盗は一瞬たじろいだが、すぐに低く笑った。
「なかなか言うじゃないか! じゃあ後で警察が来たら、お前を盾にしてやるよ?」
「構わない」
ジョルドガンスマートは声音を低く落とし、冥府から響くような声で言った。「死ぬ前に、一つだけ言ってもいいか?」
「遺言か? 言ってみろ!」
「七十二の地獄門。」
瞬間、強盗の足元の地面が真っ暗な深淵に変わった。巨大な鉄の扉が開き、男を闇に飲み込んだ。天地を揺るがす鉄の衝突音が七十二回響き渡り、悪人を粉々に砕いた後、廃棄物のような死体が虚空から落ちてきた。
ちょうどその時、テヒモシンが店から出てきて一部始終を目撃した。彼はしばらく無言で立ち尽くし、やがて尋ねた。
「……『失うものが何もない』と言っていたな。あれはどういう意味だ?」
ジョルドガンスマートは振り返り、遠い地平線を見つめながら、重い口を開いた。そこには「ハンコクォート」という国にまつわる痛ましい記憶があった。その国は、身長と容姿への異常なまでの崇拝に支配されていた。ハンコクォートでは、身長は単なる体格ではなく、キャリア、恋愛、そして人間の価値そのものを測る尺度だった。
「悪い人間でも美しければよく、太っていても痩せていても構わないが、背が低い者はどうやっても高くはなれない。だから身長は未来そのものと結びついている」
さらに、大衆文化では容姿だけでなく身長も優れたアイドルが氾濫し、身長は成功の象徴としてさらに強化された。
「そこで暮らす人間の100%が、『美しくて馬鹿で無能で役立たずな人間』を選ぶだろう。『優秀だけど醜い人間』ではなくな」とジョルドガンスマートは苦々しく語った。
容姿こそが社会の物差しだった。彼は過酷な基準を次々と挙げた。
黄金比1/8のプロポーション
女性はSライン必須
男性はチョコレートアブス
胸は大きくなくていい、しかしウエストは細く、脚はすらりと
セクシーだけでは足りない、ベーグル体型かグラディエーター体型
顔はVライン、小さければ小さいほど美しい
目:二重瞼、大きな涙袋、笑った時に下がる目尻
白く明るい肌
完璧な白肌、一切の傷やムラがない
極端に痩せていること
大きく丸い目
二重瞼
まっすぐな眉
左右対称の眉
高く細長い鼻
Vラインの顎
キュッと上がったヒップ
華奢で引き締まった体
小さな顔
薄い唇
これらが人々の魂を縛る鎖となっていた。
ハンコクォートでは、「背が高い=強い、背が低い=敗者」という言葉は嘲笑ではなく、残酷な現実だった。子供たちは身長を誇りに育てられ、低身長の者は嘲笑の的となった。
少年は海辺で人生を終わらせようと走り出した日のことを思い出した。波の音に混じって響いた自分の絶叫——
「なぜ俺を蔑むんだ!? 俺は何もしていないのに! ただ外見が悪いというだけで! 俺は低くて、醜くて、貧乏で、内気だというだけで、お前たちに嫌われる権利があるのか!?」
その時、95歳の老人が現れた。疲れ果てた声で老人は言った。
「女は低身長の男を嫌う。女は自分を守ってくれる高くて強くて逞しい男を求めるからだ。俺は女にとって何が『美しさ』なのか分からん。身長189cmでも『醜い』と言われる男がいるのに、女は好きになる。金持ちなら説明するまでもない。病弱で低身長で斜視でデブでも、女がいる奴はいる。ただ家が金持ちだからだ。
女は外向的な男を好む。面白い、楽しい、明るく、よく喋り、特に浮気上手だからだ。内向的な男はつまらない、味気ない、地味……そして浮気しない。だから嫌われる。
俺は95歳になるが今も一人だ。お前と同じように低身長で内向的で貧乏だったからだ。75年経っても社会は何も変わらん。女はまだ男に依存して生きている。男女平等を叫ぶ声は大きいが、あれは男のための平等ではないのだろうな」
ジョルドガンスマートは吐き捨てるように言った。「有害なフェミニズムだ。100年後も同じさ」
老人はそれだけ言うと去っていき、その背中は遠ざかっていった。
ジョルドガンスマートはテヒモシンを見つめ、怒りに燃える瞳で語った。
「求人広告を見てみろ。『身長170cm以上、明るく社交的、コミュニケーション能力が高く、積極的で元気、ユーモアがあり、容姿端麗』……これが内向的な人間を殺す圧力だ。内向的で貧乏で醜くて低身長なら、社会は即座にお前を淘汰する。残された道は死だけだ」
彼は自嘲の笑みを浮かべた。
「『外見なんて重要じゃない』と言う奴を信じるな。あれが最大の嘘だ。ハンコクォートでは、身長と容姿はそれ自体が一種の才能とみなされている」
テヒモシンは黙って聞き終え、静かに息を吐いた。
「『性格は美貌を殺す』という言葉を知っているか? それは美しさが無意味だと言っているのではない。人々が『目で恋をする』生き物だからこそ、あの言葉で思い出させるのだ。美しさの他に、性格、道徳、心、人徳……そうしたものがあることを」
ジョルドガンスマートは冷たい視線を収め、静かに答えた。
「心だと? ハンコクォートでは、人々は鏡で自分を見るのであって、心を見ることはないよ、テヒモシン」
二つの影は、華やかなショッピングモールの真ん中に立ち尽くしていた。まばゆい照明が、煌びやかな外殻の奥に潜む空虚な現実を、必死に隠そうとしていた。
第五章:真実であることの枷
ジョルドガンスマートは拳を強く握りしめ、長年積もり積もった憤りを声に滲ませながら語り続けた。彼は記憶の暗い部分を吐き出すように、努力して勉強し貧困から抜け出そうとした矮小で醜く、内向的で寡黙な人間の姿が、社会の目にはただの笑い話でしかなかったことを語った。
「ハンコクォートという国では、俺のような人間のコミュニケーション能力の低さを『心の欠陥』とみなしていた」
ジョルドガンスマートは疲れ果てた瞳で言った。「俺は口数が少なく、慎重で、感情をあまり表に出さず、穏やかだった。だからどれだけ勉強ができても、未来への扉はいつも閉ざされていた」
彼は屈辱的な就職面接の数々を語った。外向性を崇拝するその社会は、身長170cm以上で明るく活発、容姿の良い人間ばかりを求めていた。採用担当者たちは彼を見る目が、時代遅れの欠陥品を見るかのようだった——臆病で、内気で、不器用で、動作が遅いと。
「彼らは俺に一度も試用期間すら与えようとしなかった」
彼は苦々しく口の端を歪めた。「神のように断言するんだ。『君には無理だ』『この仕事は君に向いていない』と。その結果、俺は物乞いをし、友人には見捨てられ、家族からも嫌われ、見知らぬ女にまで『手足があるのに働かないの?』と嘲笑われた」
声が詰まった。
「あの女は何を知っているというんだ? プライドを捨てて物乞いをするということは、すでに苦痛の底に達しているということだ。誰も機会を与えてくれないのに、どうやって仕事など見つけられる?」
彼は労働市場の滑稽さを語った。皿洗い、土方、荷役、家事手伝い、コック見習いといった肉体労働でさえ、学歴、多年の経験、そして最も馬鹿馬鹿しいことに「容姿端麗・高身長・コミュニケーション能力が高いこと」を要求された。それはただ、彼のような人間を排除するための口実に過ぎなかった。
幸運にも道徳家を装った上司に雇われた時ですら、状況はさらに悪化した。
「俺を雇ったのは、社内の優秀な社員の歓心を買うためだけだった。そして理不尽な理由をでっち上げて給料を一銭も払わずにクビにした」
彼は冷たい声で続けた。
最初のボスは彼を辺鄙な場所へ出張させ、ネットも情報もないところで「ここに美味しい店はあるか?」と聞いてきた。彼が「私も初めて来たので分かりません」と答えると、「何を聞いても分からない」とクビにされた。
二番目のボスは狂ったような質問をした。彼がボスの好みに合わせて本場の四川火鍋屋に連れて行くと、「この四川火鍋屋で四川火鍋は売っているのか?」と聞かれた。彼が5秒固まっていると、「上司の質問に答えられない馬鹿」とクビにされた。
三番目のボスは裏切り者だった。Googleマップの誤りで会議に遅れた彼に、ボスは「投資家相手には嘘をつけ」と命じた。ボス自身が「蕁麻疹が出た」と嘘をついて会議をサボっていたからだ。しかし投資家は彼に理解を示し優しく対応した。翌日、ボスは「正直すぎる。嘘がつけない」と彼をクビにした。
「そして極めつけは四番目のボスだ」
ジョルドガンスマートは歯を食いしばった。「俺は全ての古い人脈を使ってその小さな会社を支えた。会社が軌道に乗った途端、即座にクビにされた。代わりに雇われたのは美人の女だった。ボスが女好きの極みだったからだ」
ジョルドガンスマートは荒い息を吐いた。
「仕事が良くてもクビ。正直でもクビ。馬鹿げた質問に答えられなくてもクビ。それ以来、俺はもう就職活動などしなくなった。この社会は能力など求めていない。ただ喋れる人形と綺麗な顔だけを求めている」
テヒモシンは静かに立ち尽くし、相棒から溢れ出る殺気と深い痛みを感じ取っていた。彼はジョルドガンスマートがなぜあそこまで「害虫」たちに残酷な判決を下すようになったのかを理解した。
「君は人の心の地獄をくぐり抜けてきたのだな……」
「そうだ」
ジョルドガンスマートは顔を上げ、懲罰の光を宿した瞳で言った。「そして今、俺はその地獄を、相応しい者たちに届けてやる」
第六章:見捨てられた者の食事
仕事がないため、食事も買えなかった。
何日も続く空腹がジョルドガンスマートを苛み、胃がナイフで抉られるような痛みに視界が揺れた。ハンコクォートの忙しない街中で、彼は道端に崩れ落ちた。過酷な運命に瘦せ衰えた体はすでに限界だった。
その時、一人の若い女性——この国が崇める美の象徴のような、磨き抜かれた容姿の女性——が持っていた熱々の食事の箱をうっかり落とした。
彼女の機嫌は最悪で、周囲の全てが目障りに見えた。「今日は最悪の日だ」と苛立っていた。
極限の空腹に耐えきれず、ジョルドガンスマートは這うようにして落ちた食べ物を拾おうとした。
「どうしたの? そんなに機嫌悪そうね」
恰幅の良い男が近づき、女性の腰に腕を回した。
「この乞食よ! わざとぶつかって食べ物を奪おうとしたの!」
女性は甲高い声で叫び、軽蔑の眼差しを向けた。
「このクソ野郎が!」
男は飛びかかり、力任せの拳を浴びせた。彼は自分を「上位の人間」であり、群衆の前で恋人を守る「紳士」だと誇示したかった。地面の食事の箱を踏み潰し、「俺は捨ててやる。お前になんか食わせない!」と叫んだ。
女性は手を叩いて狂ったように応援した。
「かっこいい! 最高! 最高にクール! 素敵! イケメン! 最高に紳士!」
激痛の中でジョルドガンスマートは体を丸め、失禁した。恐怖の極みに達した意識の中で、無言の叫びが響いていた——なぜ、ただ一欠片の食べ物のために、俺は殴り殺されなければならないのか?
男が誤って人を殺したと気づいた時、顔面蒼白になった。しかし女性はただ口の端を歪めただけだった。
「乞食一人の死なんて誰も気にしないわ。ちょうどいい教訓になったでしょう? 食べ物を得るのは簡単じゃないってね」
午前0時ちょうど、魂が消えかけた瞬間、暗闇が彼を包んだ。
指導者アンモルクザラフトが現れ、冷たい手でジョルドガンスマートの魂に触れた。
「同じ境遇の者たちを助けたいか? この腐りきった世界から、彼らを解放してやれ」
彼は激しい憎悪と共に蘇った。犯人を追ったが、すでに姿を消していた。後にテレビ画面で二人の顔を見た——女性は新進気鋭のミスコンテスト優勝者、男は離婚してその「美貌」を追う大富豪だった。
ジョルドガンスマートは自嘲の笑みを浮かべた。
「誰かと思えば、高級娼婦か。金持ち専用の高級品だ」
「女は自分を美人だという理由だけで上位だと信じ込み、何でも手に入る権利があり、男にちやほやされるのは当然だと思っている」
「金持ちになった男が最初に考えるのは浮気だ。美人はゴミのように腐るほどいるから、貞操を守る必要などないと思っているのだろう」
「毎日ミスコンテストがあり、毎日新しいミスが生まれ、街を歩けばミスだらけだ」
ジョルドガンスマートは続けた。「事業を始めたばかりの貧しい頃は糟糠の妻がいたのに、金ができると全てを捨てて『ミス』だけを追いかける」
「所詮、人間とはそういうものだ。どれだけ親しくても、結局は他人。どれだけ深く愛し合っても、忘れ去られる」
ジョルドガンスマートは大富豪の豪邸に侵入し、二人の命を驚愕の中で終わらせた。
「一時期はかなりネガティブになって、多くのミスを殺しまくっていたな」
ジョルドガンスマートは薄暗い街灯の下を歩きながらテヒモシンに語った。
その度に彼は言っていたという。
「君にだけは最高のものを与えるよ」
テヒモシンは落ち着いた様子で答えた。
「美貌は武器だ。武器を持って人を殺すなら、それは自業自得というものだ」
ジョルドガンスマートは呆然とし、疑いの目を向けた。「……何を言ってる?」
「冗談だよ」テヒモシンは軽く笑った。「ニュースで見たことがある。あんたが殺した連中は全員、寄生虫、金目当ての女、大富豪から金をむしり取る専門家、麻薬の密売、売春婦、売春組織の運営者ばかりだった」
テヒモシンは続けた。
「才能のあるミスは少ない。無能で無価値、中身が空っぽな無名のミスの方が、雑草のように溢れている」
ジョルドガンスマートは静かに頷いた。
このハンコクォートという国では、外見が一つの宗教となっていた。美しさが腐った脳を覆い隠し、「低くて醜くて貧しい」者たちである彼は、永遠にその美の偶像の下に踏みつけられる虫けらでしかなかった。
第七章:幻想の王冠
真昼の強い日差しがアスファルトを熱く焼いていた。ジョルドガンスマートが人混みの中を歩いていると、耳障りな声が静寂を切り裂いた。
前方で、高身長の青年がブランド物の光沢ある服を着て、通行人の襟を荒々しく掴んでいた。BD——かつての旧友だ。彼は些細な接触を理由に、相手を怒鳴りつけ、威圧していた。
「歩き方どうなってんだよ! 目がついてないのか!?」
BDは顔を歪めて罵倒した。「人にぶつかっておいて謝りもしないとは!」
ジョルドガンスマートは足を止め、冷たい視線を旧友に注いだ。声は低かったが、BDの動きを止めるのに十分だった。
「お前こそ前を見ろ。いつも顔を上に向けて空の雲でも数えているような歩き方じゃ、地面にいる人間なんて見えるはずがない」
ジョルドガンスマートは続けた。
「小さな学校のミスターコンテストで一位を取った程度で威張り散らすとは。たったそれだけの称号で自分を成功者だと思い込んでいるのか? 世界の運命を握っている総統気取りか? ただの虚しい肩書きに酔って、権力を勘違いするなんて、盲目にも程がある」
BDは素早く振り返り、自分がいつも見下していた人物だと気づいた。彼は口の端を歪め、侮蔑の笑みを浮かべた。
「誰かと思えば、乞食野郎じゃねえか」
彼は通行人の襟を離し、ジョルドガンスマートに近づいた。「その地位を得るのがどれだけ大変だったか知ってるのか? ああ、俺は傲慢だよ、いいだろ? 人に憧れられるのが好きなんだ。俺は頂点に立ちたい。 その称号が、俺がお前みたいなゴミどもより優れている証拠だ」
ジョルドガンスマートは、偽りの栄光に酔う青年を哀れむような目で見つめた。
「井の底の蛙か。お前がミスターになったから何だというんだ? この世界に何かを成し遂げたのか? 少しでも影響力があったのか? ただの安っぽい飾り物じゃないのか? 傲慢さを捨てろ。そんな卑劣な幻想の中で生きるのはやめろ」
周囲の通行人たちが足を止め、ぱらぱらと拍手が起き、やがて大きくなっていった。それはBDの病的な自尊心への平手打ちだった。BDの顔は赤から紫へと変わり、怒りと羞恥で歪んだ。
「この野郎! よくも俺を侮辱しやがったな!」
BDは拳を振り上げ、事実を暴いた相手を叩き潰そうと飛びかかった。しかしジョルドガンスマートの目には、その動きは死にゆく虫ののたうちのように遅く、無意味に映った。
彼は避けもせず、後退もしなかった。足元から濃い黒い殺気が渦巻いた。
「七十二の地獄門。」
地面が即座に裂け、叫び声を上げる「ミスター」を深い闇に飲み込んだ。鉄の扉が閉じる乾いた音が響き渡り、肉体と幻想の王冠を正確に七十二回、粉々に砕いた。
全てが終わると、BDの死体が虚空から落下し、道路の真ん中に血まみれで横たわった。それは、容姿と虚しい称号だけで万人を上回れると思い込む者たちへの、血塗られた警告だった。
ジョルドガンスマートは踵を返して歩き始めた。少年の影が長く道に伸びた。
「愚か者の王冠など……元々、腐敗だけで鋳造されたものに過ぎない」
第八章:最初の判決と上位者の死
午後の強い日差しが長く影を落とす道を、ジョルドガンスマートは世界に捨てられた乞食のような姿で歩いていた。トイール——特徴的なお団子頭の旧友の姿を見つけ、声をかけようと近づいた。
しかし彼女は彼の姿を遠くから見つけるや否や、慌てて顔を背け、足早に逃げようとした。これは初めてのことではなかった。学生時代から、彼女は常にジョルドガンスマートを避け続けていた。
今回、彼は黙っていなかった。素早く追いかけ、彼女の行く手を塞いだ。
「どうしていつも俺を避けるんだ?」
彼は感情を抑えた声で正面から聞いた。「俺が何かしたのか? それとも伝染病でも持っているとでも?」
トイールは足を止め、腕を組んで彼を頭のてっぺんから爪先まで見下ろした。まるでゴミの山を見るような目だった。
「お前が誰だと思って話しかけてくるの?」
ジョルドガンスマートは呆然とした。「……は?」
「はっきり言ってあげる」
トイールは傲慢な声で続けた。「醜くて低身長で内向的なお前みたいな男は、私みたいな美人で高身長で外向的な女に話しかける資格なんてないの。私は避けていたのに、自分で察しなさいよ。まだ付きまとってくるなんて、どういうつもり?」
「俺は君に何も悪いことをしていない。君の避け方が俺をすごく傷つけるんだ、わかるか?」
ジョルドガンスマートは必死に理性を探りながら答えた。
トイールは鼻で笑い、言葉をますます毒々しくした。
「男なんて結局、美人しか相手にしないんでしょ? 違うの?」
ジョルドガンスマートは言い返した。「男は顔で女を見るのか? じゃあなんでNyは結婚できたんだ?」
トイールは嘲った。「あいつは顔は悪いけど胸が大きくて尻もでかいからよ(バストとヒップが大きい)。それにセックスが上手いって聞いたわ」
「違う!」
ジョルドガンスマートは激昂して叫んだ。「あいつは物分かりが良くて気遣いができるからだ。お前みたいに高飛車で傲慢じゃないからだ」
トイールは反論した。「つまり男は女の性格で好きになるって? 笑わせないで。男はみんな美人を好きになるのよ、それが正しいんでしょ?」
彼女は続けた。「私なんて、学校時代から社会人になるまで、どれだけ男たちが争ってくれたか。『彼氏がいる』って言ってるのにね」
ジョルドガンスマートは答えた。「それはお前があまりにも軽々しいからだ。お前なら彼氏がいても浮気すると思われているだけだ」
トイールは吐き捨てた。「……とにかく、私があなたを避ける理由はもうわかったわね。次に会ったら自分から離れてちょうだい」
彼女はさらに言った。「最初からあなたを見た瞬間、嫌いだったの。低くて、醜くて、貧乏で、無表情で、無口で、笑わないで、奥ゆかしくて……そんなの格好いいとでも思ってるの?」
ジョルドガンスマートは答えた。「それが俺の性格だ。俺は内向的な人間だ」
トイールは続けた。「それが性格が悪いから嫌いなのよ」
「内向的であることが悪い性格なのか? じゃあ外向的であることが良い性格なのか?」
トイールは断言した。「そうよ。あなたが低身長で醜くて貧乏でも、外向的だったら普通の人として付き合ってあげたわ。でも今みたいに大嫌いにはならなかった。もっとコミュニケーションを取って、積極的で、明るくしなさいよ」
彼女は最後に言い切った。「この世界は内向的な人間なんて必要としていない。今の時代は外向的な人間が好まれるの。内向的な人間は社会に何の役にも立たないわ」
ジョルドガンスマートは言葉を失った。背筋に冷たい風が吹き抜けた。
「じゃあ内向的な人間は死んだ方がいいのか?」
彼は囁くように繰り返した。
トイールは答えた。「ええ、みんな死ねばいいの。内向的な人間なんて誰も必要としていないもの」
ジョルドガンスマートは言った。「世の中にお前みたいな考えの人間が多いから、内向的な人は自殺を選ぶんだ」
トイールは続けた。「要するに、美人は醜い人間が大嫌い。特に低身長の男は見ているだけで目障りなの」
「女は内向的な人間と話すのが嫌い。退屈で、味気なくて、つまらないの。内向的な男なんて、まるで精神病患者か、心に問題があるみたいに見えるわ」
トイールは最後に、焼き付くような冷たい視線を投げかけた。
ジョルドガンスマートは静かに頭を下げ、虚ろな笑みを浮かべた。
「わかった。説明してくれてありがとう。時間を無駄にさせて悪かった」
「頭おかしいんじゃないの? ありがとうとか言うなんて」
トイールは吐き捨てて背を向けようとした。「あなたと話して気分が悪くなったわ」
「それなら……」
ジョルドガンスマートが顔を上げた。瞳はもはや二つの深い暗黒の穴だった。「もう二度と俺を見なくて済むように……手伝ってあげよう」
「七十二の地獄門。」
それは彼がこの技を初めて使った瞬間だった。地面が大きく裂け、トイールを虚無へと飲み込んだ。彼は知っていた。最初の扉が閉じた時点で、彼女の肉体はすでに粉々になっていたはずだ。しかし長年積もり積もった憤りと屈辱が、彼にそれを止めることを許さなかった。彼は自分の存在を踏みにじった者に、人生で最も残酷な苦痛を味わわせたかった。
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
七十二回、鉄の扉が「美人で外向的な女」の傲慢を徹底的に粉砕した。
全てが終わった後、ジョルドガンスマートは賑わう街中を黙々と歩いた。彼は自問した。
「親や友人、社会は彼女に何を教えてきたのだろう……あんな残酷な言葉を平気で吐けるようになるまで」
「内向的な人間はこの世界に存在してはいけないのか……?」
彼は独り問うた。「なんて……不公平なんだ」
テヒモシンは後ろに立ち、孤独な背中を見つめていた。彼は知っていた。ジョルドガンスマートの魂は、人を殺し始めるずっと前に、すでに砕け散っていたことを。
第九章:夜の残響
夜風がハイライズの隙間を鋭く吹き抜け、骨まで凍えるような冷たさを運んでいた。ジョルドガンスマートは人通りのない橋のたもとに立ち、黒く濁った激流を見つめながら、苦々しい声で問いかけた。
「テヒモシン、なぜ内向的な人間の方が外向的な人間より自殺率が高いか、わかるか?」
テヒモシンは数歩離れた場所に立ち、孤独な背中を細めた目で見つめた。
「なぜだ?」
「簡単なことだ」
ジョルドガンスマートは口の端を歪め、目だけが笑わない薄笑いを浮かべた。「この社会はそもそも彼らを必要としていないからだ。自分の存在が無用だと感じた瞬間、人は死を選ぶ」
テヒモシンは一瞬沈黙した後、ゆっくりと隣に寄り、穏やかでありながら力強い声で言った。
「それは違う。もしそう思うなら、自分自身を見つめ直すべきだ。内向的な人間は決して余計な存在などではない。彼らは静かに、誠実に周囲の人を気遣い、守る優しい人間だ。まるで第二の父親や母親のような存在だと言える。内向的な友人がいるなら、それは幸運だ。深い魂に包まれているということだからな」
ジョルドガンスマートは言葉に詰まった。テヒモシンの言葉が、砕けた心のどこかに触れたようだった。しかし長年の憤りがすぐに蘇り、彼は別の話題に切り替えた。声には強い憎悪が滲んでいた。
「俺が一番嫌いなのは、無闇に『紳士ぶる』男どもだ」
彼は橋の欄干を強く握りしめ、怒りに震える声で続けた。
「女が間違っている時、本来なら正しく導き、改善してやるべきだ。ところが世間の男どもは全ての過ちに目をつぶり、何が悪いのか、何が間違っているのかを一切教えない。結果、女たちは自分が常に正しいと勘違いするようになる」
ジョルドガンスマートはテヒモシンを振り向き、憎悪の炎を宿した目で言った。
「あいつらは何をアピールしているつもりだ? 自分たちが上位で高潔だとか、優しい紳士だとか? あれは最低最悪の偽善だ。男どもには一刻も早く自分の過ちに気づいてほしい……俺がこの地球上の女を皆殺しにする羽目になる前に、な」
その過激で殺気のこもった宣言に、テヒモシンはただ沈黙を保つしかなかった。彼は理解していた。過去の痛みがジョルドガンスマートを、冷酷な審判者へと変えてしまったことを。そして彼は不正と深い憎悪のレンズを通して世界を見ているのだと。
暗闇が二人を包み、橋の下で波が静かに打ち寄せる音だけが、運命の溜息のように響いていた。
第十章:利己の光輪
眩しいステージライトと数万人のファンの歓声の中、K-Pop女性アイドルが女神のように傲然と立っていた。彼女は冷たい笑みを浮かべ、メディアのカメラに向かって「女権」と偽りの独立を叫んだ。
「私はあなたがどう感じようと興味ありません。あなたが私について何を考え、何を言おうと関係ない。私はあなたのために生まれて生きているわけじゃない。これが私という人間です。そして私は絶対に変わりません」
客席の暗がりに身を潜めていたジョルドガンスマートは、その言葉を聞きながら隠しきれない嫌悪感を浮かべていた。彼は闇から歩み出て、華やかな空気を切り裂くような鋭い言葉を投げかけた。
「なぜそんなに苦しい人生を選ぶんだ? なぜ皆に嫌われる人生を我慢して生きる? そんな大きな痛みを一人で背負うつもりか?」
女性アイドルは動きを止め、念入りにメイクされた目を警戒して細めた。ジョルドガンスマートは一歩近づき、鋼のような声で続けた。
「他人の感情を考えろ。自分だけを優先するな。なぜこの地球に何十億人も人がいるのに、みんながお前だけを憎むと思う? 自分自身をよく見直せ。お前は自分が宇宙の中心だと勘違いして生きている。周囲の全員が自分に合わせ、甘やかし、要求を満たすことを当然と思っている。注目を浴びることばかり求めながら、他人の感情を聞くことも、尊重することも拒否する」
彼は哀れむような笑みを浮かべた。
「傲慢で、自分が他人より優れていると思い込み、人が自分を嫌うのは嫉妬だと自己暗示をかけているのか? 幻想から醒めろ。人間など所詮、運命の戯れに過ぎない。自分を宇宙の中心だなどと思うな。お前に贈る言葉はただ一つだ。惨めなほど自己中心で、哀れなほど凡庸だ」
女性アイドルが反論しようと口を開いた瞬間、ジョルドガンスマートから放たれる目に見えない圧力が彼女の体を凍りつかせた。長年守り続けたプライドが、砂の城のように崩れ落ちた。
テヒモシンは少し離れた場所から様子を観察し、静かに息を吐いて近づいた。
「彼らは自分が正しいか間違っているかなんて気にしないよ、ジョルドガンスマート。有名人になることを選んだ以上、嫌われるのも仕事の一部として受け入れるしかない。残酷な現実だが、彼らを憎む人の方が、愛する人より常に多い」
テヒモシンは徐々に暗くなっていくステージライトを見つめた。
「普通の人でさえ嫌われるのを避けられないんだ。あのスポットライトの下に立つ者など言うまでもない。今の社会は反社会的な連中で溢れている。彼らはただ、自分の鬱憤を晴らすための標的を常に探しているだけだ」
ジョルドガンスマートは何も答えなかった。彼は背を向け、去っていった。女性アイドルは人気の消えたステージに一人、虚しく立ち尽くしていた。
彼にとって、完璧な外見の殻に包まれながら、心は空っぽで自己中心的な者たちは、いつか粉々に砕かれるのを待つだけの朽ちた扉に過ぎなかった。
第十一章:運命の待ち合わせ
二〇二五年十二月二十四日、水曜日。
クリスマスイブの夜だったが、二人の間に祭りの温もりなど微塵もなかった。テヒモシンはジョルドガンスマートを誘い、人里離れた山奥へキャンプに行った。
テヒモシンの胸には二つの重い目的があった。第一に、自然の静けさでジョルドガンスマートの殺意を和らげ、これ以上死を撒き散らすのを止めさせること。第二に、そして最も重要なこと——テヒモシンは死の予感を強く感じていた。誰かがジョルドガンスマートを必死に狙っている。友を守るため、その相手と直接対決するつもりだった。
揺らぐ焚き火の前で、テヒモシンは瘦せ細ったジョルドガンスマートの背中を見て静かに聞いた。
「本当にわからない。マルクールヴィストがグループのために稼いだ金はとんでもない額だ。なぜそれを使わない? なぜこんな放浪者みたいな生活を選ぶんだ?」
ジョルドガンスマートは炎を見つめながら言った。
「この世の金は稼ぐのが本当に難しいんだ、テヒモシン。俺は他人の汗と涙に頼って生きたくない。少しだけ個人的な必要で使わせてもらうが、あいつの好意を悪用して怠け者で腐った人間になる気はない」
ジョルドガンスマートの言葉は重く、静かだったが、最後に残ったプライドを必死に守るような響きがあった。その夜、テヒモシンは一睡もせず、テントの周囲の濃い闇をずっと見張り続けた。
二〇二五年十二月三十一日、水曜日。
年の最後の日。
木々の隙間から朝日が差し込む頃、疲れ果てて短い眠りから目を覚ましたテヒモシンは慌ててテントから飛び出した。
周囲は不気味なほど静まり返っていた。
ジョルドガンスマートの姿が消えていた。
争った跡も、叫び声も何も残っていない。ただ死んだような沈黙だけがキャンプ地を覆っていた。
テヒモシンは地面に崩れ落ち、冷たい土を強く握りしめた。心の繋がりが完全に切れたのを感じた。ジョルドガンスマートは殺されたのだ。
「くそったれ!」
テヒモシンの怒号が山中に響き渡った。
胸の中で激しい怒りが爆発した。完璧に計算して守ろうとしたのに、死はやはりやってきた。犯人は彼の警戒を完全に突破するほど狡猾で残忍だった。
悲しみが心を引き裂いたが、テヒモシンの目は次第に冷たく、鋭くなった。彼は立ち上がり、服の土を払った。
旅はまだ続く。もはや止めるための旅ではない。追うための旅だ。
彼はジョルドガンスマートの魂を、冤罪のまま消えさせるつもりはなかった。
テヒモシンは古い焚き火の灰を残し、血と復讐の匂いがする新年の霧の中へ歩き出した。




