HIMCIELDEUS
第1章:裁きの炎と突然の邂逅
繁華街の真ん中で、「路地の掟」を自称する者たちが堂々と人々の血と汗で稼いだ金をむしり取っていた。彼らはそれを「税金」と呼んでいた——卑劣な搾取を美しく飾った言葉だ。
しかし、その傲慢さが許されるのもここまでだった。
虚無から響くような冷たい声が、血の匂いと金臭さが混じった重い空気を切り裂いた。
「死の刻限だ。死神がお前たちの名を呼んでいる。」
次の瞬間——最も鋭敏な感覚を持つ者たちでさえ反応できないほどの速さで——先ほどまで喚いていた数千人の犯罪者たちが灰色の塵と化し、風にさらわれて跡形もなく消え去った。
煙と埃が立ち込める中、テヒモシンが悠然と歩み出てきた。
その眼前には、犯罪界の亡霊――人々の平穏を脅かす組織を粛清し続ける存在、ソガンストマイルムがいた。
ソガンストマイルムの眼光が鋭く警戒を帯びる。
「……お前は、誰だ?」
テヒモシンは微動だにせず、まるで当然のことをしたかのように落ち着いて答えた。
「『三神』と『四聖』は完全に消滅した。ここで時間を無駄にする余裕はない。早くオプマルテイクと合流しよう。」
その名を聞いた瞬間、ソガンストマイルムの瞳孔が縮まった。彼は重心を下げ、驚きと喜びが入り混じった声で震えながら言った。
「虎……? お前はあいつも知っているのか? ということは……味方か……」
空間を覆っていた殺気が一瞬で霧散した。ソガンストマイルムは背筋を伸ばし、頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
「疑って悪かったな。」
「構わない。」
テヒモシンは相手の目を見つめ、確認するように尋ねた。
「君の力……は時間操作だな?」
ソガンストマイルムはわずかに唇の端を上げた。
「その通りだ。」
「その特別な力で何かしたことは?」
「もちろん。」ソガンストマイルムは肩をすくめ、日常の些細なことを話すような軽い調子で答えた。「時間を操れる力があれば、誰だって俺と同じことをするさ。」
「具体的には?」
「時間旅行だ。百年後の世界がどうなっているか知りたくて、2119年まで飛んでみた。」
テヒモシンは目を細め、頭の中で散らばった断片を繋ぎ合わせ始めた。
「つまり、君は過去へも戻ったのか?」
「その通り。しかしな、テヒモシン。時間旅行というものは非論理的で、決して我々の望む通りに起こるものじゃないんだ。」
「どういう意味だ?」
ソガンストマイルムは深いため息をつき、顔に無力感を浮かべた。
「未来に到着して数秒も経たないうちに、もの凄い力で前方から蹴飛ばされるような感覚がして、即座に現代へ押し戻された。あの時はまだ力が足りないせいだと思ったんだが……」
彼は再び息を吐き、続けた。
「それから2、3年後、もっと強くなってから今度は250万年前——旧石器時代へ飛んでみた。しかし結果は同じだった。到着した瞬間に、今度は後ろから強く蹴られるような感覚がして、即座に現在へ押し戻された。」
(テヒモシンの思考:なるほど、わかった。あいつが未来へ行こうが過去へ行こうが、最終的には必ず現実へ戻される。あいつの干渉が偶然、時間に穴を開け、未来のフルヴィスティマンや旧石器時代の人々をこの世界へ引きずり込んでしまったのだ。)
テヒモシンは小さく頷いた。
「それは宇宙の保存則のようなものだろう。時間は、お前が属さない場所に存在することを許さない。元の流れを乱す『変数』を排除するための自己防衛機制だ。」
ソガンストマイルムは再び真剣な表情に戻り、尋ねた。
「ところで、オプマルテイクの現在地は確実に把握しているんだな?」
テヒモシンはわずかに唇を歪め、遠い地平線を見つめた。
「もちろん知っている。行こう。」
第2章:高き空からの審判
ある極端な思想に締め付けられた国家で、「保護」という概念は吐き気を催すほどに捻じ曲げられていた。国民を守るはずの軍隊と警察の銃口は、今や無力な市民の胸に突きつけられている。権力者たちにとって、国民の命などただの塵芥に過ぎず、体制の永続という目的のためなら安い代償でしかなかった。
悲鳴と泣き声が路地という路地に響き渡る。
「逃げろ! 奴らが来るぞ!」
狂ったように生きる道を求めて逃げ惑う人々の流れの中で、一つの影だけが静かに逆方向へ歩いていた。オプマルテイクは黒々とした銃口に向かって真っ直ぐ進み、風にたなびくコートを誇らしげに翻らせた。
彼は足を止め、弾を撃とうと意気込む警察の壁の前に立った。
「やる気があるなら来い。俺の前に立ちはだかる度胸のある奴がいるならな!」
即座に、弾丸の豪雨が空間を引き裂いてオプマルテイクへと襲いかかった。しかし血が流れる代わりに、恐ろしい光景が広がった。彼の周囲の空間が突然歪み、虚無の穴がいくつも開き、見えない怪物が全ての弾丸を飲み込んでしまった。
一呼吸後、その穴は警察隊の背後に再出現し、全ての火力を倍増した速度と量で返した。銃声が空を裂いたが、今度は悪党たちの絶叫が響き渡った。
市民たちは呆然とし、やがて爆発的な歓声が上がった。
「救世主だ! 俺たちの英雄が現れた!」
しかしその抵抗は、支配体制の怒りを頂点に押し上げただけだった。戦車のキャタピラが轟音を立て、正規軍が続々と投入され始めた。緊張が高まる中、一つの馴染みのある影がオプマルテイクの傍らに降り立った。
ソガンストマイルムが小さく微笑んだ。
「手伝おうか?」
オプマルテイクは一瞥すらくれず、迫り来る軍隊に視線を固定したまま答えた。
「必要ない。この茶番劇を終わらせるのに、俺一人で十分だ。」
オプマルテイクは片手を高く掲げ、指を軽く鳴らした。雲の上空に、競技場ほどの巨大な空間門が突然開いた。虚無の中から、軍事衛星の巨大塊が燃える隕石のように落下し、民衆を殺す軍隊の陣形を一瞬で粉砕した。地面を揺るがす大爆発が響き渡った。
煙が晴れると、戦いは恐ろしいほどの静寂の中で終わっていた。オプマルテイクは瓦礫の山に背を向け、まるで何事もなかったかのように落ち着いた息遣いで言った。
彼はソガンストマイルムを見て、静かに告げた。
「ここから離れよう。この場所の空気は……息苦しくてたまらない。」
二つの影は夜の闇に溶けるように消えていった。その背後には、内側から崩れ始めている帝国が残されていた。
第3章:信頼を盗む者たち
衰退していく街の薄暗い街灯の下、三人の会話は華々しい戦果ではなく、人類の暗く淀んだ側面を重く映し出していた。
ソガンストマイルムは軽く頷きながらテヒモシンをオプマルテイクに紹介した。
「オプマルテイク、こちらはテヒモシン。新たな仲間だ。」
オプマルテイクは新顔を軽く観察した後、ソガンストマイルムに向き直った。友人の顔に深く刻まれた疲労を見て取り、低い声で尋ねた。
「顔色が優れないな。最近はどうだ?」
ソガンストマイルムは長く重いため息をつき、肩を落とした。先ほど倒した軍隊などよりも遥かに重いものを背負っているかのようだった。彼は苦々しく語り始めた。
「隠すことじゃないが……最近、詐欺師どもが狂ったように活動している。人としての良心が完全に欠落している。まず奴らは俺の祖母を狙った——癌と闘う高齢者だ。俺が交通事故で重体、手術を待っているという残酷な嘘をでっち上げ、急いで入院費用を送るよう迫った。病身の老人が、孫が事故に遭ったという報せを聞かされるなんて……本当に最低だ!」
オプマルテイクは歯を軽く噛みしめたが、ソガンストマイルムはまだ止めなかった。
「それだけじゃない。足が不自由な叔父も逃れられなかった。叔父は俺に贈るために新品のスマホを貯金して買ったというのに、箱を開けたら中身はただの石ころだった。そして最近は俺自身が標的にされた。配達を装った奴が『誰かが贈り物を送金済みだ』と言ってきて、SNSで友達追加するよう強要してきた。本当の目的は個人情報を盗む罠だった。」
ソガンストマイルムは灰色の夜空を見上げ、怒りと失望で声を震わせた。
「いつから……詐欺が『職業』になったんだ? この社会は一体どこまで腐りきっているんだ?」
三人の視線が交わった。彼らは理解していた。独裁的な軍隊が肉体を殺すなら、この詐欺師たちは人々の間に残された僅かな信頼すら殺しているのだと。
第4章:記憶の灰
空気が急に重くなった。テヒモシンが静かに口を開き、沈黙を破るように好奇心に満ちた質問を投げかけた。
「ソガンストマイルム、君の話に両親のことが出てこないけど……彼らは今どこに?」
ソガンストマイルムは動きを止めた。瞳が一瞬、虚ろになった。心が過去の黒い穴へと引きずり込まれたようだった——そこには血と裏切り、そして「路地の王」を自称する者たちの吐き気を催す嘲笑だけがあった。
それは呪われた国だった。ギャングの数の方が警察よりも多い土地。非道が栄達への最短ルートとされる世界。暴力と混沌の中で、組織は雨後のキノコのように増殖した。ある者は守られるために、ある者は狂った興奮を求めてその道に足を踏み入れた。
しかし実態は、卑劣で下品で教養のない屑の集まりに過ぎなかった。彼らは理由もなく人を殺し、麻薬、賭博、高利貸しといった露骨な手段で法を嘲笑った。
悲劇は、ソガンストマイルムの両親が偶然、組織のトップ同士の粛清現場を目撃した瞬間に始まった。命など塵芥同然。彼らは正義を求めて警察へ向かったが、返ってきたのは残酷な裏切りだった。賄賂を受け取り、犯罪者と同席する警官たちが、彼らの身元を組織に売ったのだ。
その夜、血が流れた。両親は残虐に殺害された。ソガンストマイルムは闇に覆われていたおかげで顔を見られず、辛うじて生き延びた。
復讐の炎を燃やし、彼は組織に潜り込み、子分を装ってボスを仕留める機会を待った。しかし現実は甘くなかった。計画は失敗し、彼は捕らえられ、人間として耐え難い凄惨な拷問を受けた。
運命の一発が響いた。体は袋に詰められ、ゴミ同然に冷たい川へ投げ捨てられた。
生死の狭間で、アンモルクザラフトの力が彼を引き戻した。朦朧とした空間に、指導者の声が現実を引き裂くように響いた。
「お前は知っているか? 奴らに殺された者たちの末路を。身内がいる者は、たとえ警察が無能でも遺体は見つかる。しかし、お前のような孤独な者は……永遠に無名の死体だ。誰も覚えず、誰も気にかけない。完全な忘却の中で死ぬ。それを変えたいか?」
ソガンストマイルムは拳を握りしめ、血がにじむほど力を込めた。憎悪が爆発し、彼は燃える瞳でアンモルクザラフトを見上げた。
「もし俺があのクズどもを皆殺しにしたら……警官どもは存在理由を失うんじゃないか?」
彼は悟った。恥知らずで下劣な連中に対して、普通の正義など無力だと。必要なのは絶対的な審判——容赦なき粛清だ。
現実に戻り、ソガンストマイルムはテヒモシンとオプマルテイクを見て、唇を固く結んだ。
「彼らはもういない。そして俺はここにいる……誰も彼らのように、忘却の中に消えていくことがないように。」
第5章:世界に拒絶された者たち
ソガンストマイルムの血と涙に塗れた告白の後、空間は息が詰まるほどの沈黙に包まれた。テヒモシンは視線を、神秘的な空間エネルギーを宿す青年に移し、低い声で尋ねた。
「君の過去はどうなんだ、オプマルテイク?」
オプマルテイクは目を閉じ、両手が微かに震えた。軍隊の名の下に人格を監獄に閉じ込めた記憶が、終わりのない悪夢のように蘇った。
物語は名門の軍事アカデミーから始まる。そこでは公正など紙の上だけの贅沢な概念に過ぎなかった。当時のオプマルテイクはただの平凡な生徒だったが、残酷な現実と向き合っていた。「コネの息子たち」だ。
国防省や公安省の高官の血筋を背景に持つ彼らは、法を蔑ろにし、一般の入隊者をいじめることを病的な娯楽にしていた。オプマルテイクと親友のドッドは、その主な標的だった。
オプマルテイクは耐え、苦痛を飲み込んで平穏を望んだ。しかしドッドは違った。武人の家系で誇り高い性格の彼は、侮辱されることを決して受け入れなかった。
「我慢しろよドッド、奴らは大勢だ。お前は一人なんだぞ!」——オプマルテイクは何度も諫めた。
だが悲劇は起きた。いじめグループのボスの父親の旧友である上官が、ドッドを全校の前で「武術訓練」と称して呼び出した。彼はドッドを辱めようとしたが、逆にドッドの一撃で倒されてしまった。
屈辱は殺意に変わった。上官は子分たちに鉄パイプを使って集団リンチを命じた。ドッドはその場で殴り殺された。
オプマルテイクは呆然と、悪魔たちが平然と偽装工作を話し合うのを聞いていた。
公安省の孫:「首吊り自殺にしようか?」
国防省の孫:「ダメだ、体中痣だらけで自殺なんて不自然だ。崖から落ちたことにするか?」
空軍省の孫:「理由は?」
海軍省の孫:「訓練中のうつ病による自殺。これで終わりだ!」
権力の全てのシステムがその犯罪を隠蔽した。オプマルテイクがドッドの家族に真実を伝えようとした時、連中の残忍さは頂点に達した。彼らはドッドの家族全員を殺害し、その罪をオプマルテイクに着せた。
一瞬にして、オプマルテイクは世界指名手配の極めて危険な犯罪者となった。世界中から獣のように追われ続けた。誰も彼の説明を聞かず、ただ功績のために捕らえようとした。
寂れた港で、警察の銃口が彼を捉えた。乾いた銃声が響き、弾丸がオプマルテイクの心臓を貫いた。彼は冷たい大海に落ちた。
彼は死んだ。しかし虚無の狭間で、闇の力が彼を見つけ、蘇らせた。
「見てみろ。この社会はあまりにも汚れきっている。お前が浄化しなければならない。」
アンモルクザラフトの声が、威厳と理解に満ちて響いた。彼はオプマルテイクを見て続けた。
「お前は私が最初に救った人間だ。この世界は我々に敵対している。だから同じ志を持つ者たちを集めて変えたい。一人では到底できない……お前たちの力を借りたい。」
現実に戻り、ソガンストマイルムは地平線を見つめ、尊敬の眼差しで言った。
「俺たちは皆、アンモルクザラフト指導者を心から尊敬し、絶対的な敬意を捧げている。もし彼がいなければ、俺たちはこの世界の不正に埋もれた無名の亡霊と何ら変わらなかっただろう。」
テヒモシンは二人の友人の間に立ち、彼らの絆が単なる力ではなく、運命に拒絶された者たち共通の痛みから生まれたものだと理解した。
第6章:光と闇の交点
静まり返った夜の空気の中で、テヒモシンが静かに呼吸を整えた。彼は二人の仲間へと視線を向け、好奇心を隠さずに尋ねた。
「私はアンモルクザラフト指導者に直接お会いしたい。どのような方法でなら、あのような偉大な人物に会えるだろうか?」
ソガンストマイルムはわずかに唇の端を上げ、これまで常に緊張を帯びていた顔に意味深な笑みを浮かべた。
「会いたいのか? 実は思っているよりずっと簡単だぞ。」
オプマルテイクが引き継ぎ、指導者の名を口にする際に瞳を尊敬の色に輝かせた。
「現在、指導者は巨大な教育システムの学園長を務めている。幼稚園から大学まで一貫した教育機関だ。『コ・アンテザ』という名前の学校を探せばいい。」
テヒモシンは少し言葉を詰まらせ、驚きが心をよぎった。
「その場所は知っている。世界一の理想的教育環境として名高い学校だ。どの親も我が子を預けたいと願う場所……。」
ソガンストマイルムは腕を組み、声の調子を少し落として考え深げに言った。
「指導者自身も、かつては学校いじめの被害者だった。あの頃のいじめっ子たちの残虐さを身をもって味わったからこそ、それを芽の段階で摘み取る方法を誰よりも理解している。」
「献身的な学園長だ……」オプマルテイクは小さく頷いた。「指導者は誓っている。どんな生徒も、自分が過去に歩んだ苦い道を二度と辿らせないと。あの学校は、社会の腐敗から子供たちの純粋な魂を守る最後の要塞なのだ。」
テヒモシンの周囲の空気が、事実の重みによって薄くなったように感じられた。彼は二人の友人を真っ直ぐに見つめ、決定的な質問を投げかけた。
「では、あの巨大な教育帝国を築くための莫大な資金の出所についても、私の見立ては間違っていないはずだ。マルクールヴィストから得たもの……そうだな?」
オプマルテイクは一切躊躇せず、鋭い眼差しで答えた。
「その通りだ。あの学校の光は、相応しくない者たちからマルクールヴィストが奪い取った闇の金銭によって灯された。この世界の歯車を回すために必要な、必然の均衡だ。」
第7章:「コ・アンテザ」の大樹の陰で
「コ・アンテザ」の校門は威厳がありながらも静謐な美しさを湛え、外界の混沌から完全に隔絶された世界を現していた。
本館のホールでは、大きなガラス窓から差し込む陽光が柔らかく降り注ぐ中、彼らはついに一人の男と対峙した——帝王のような気品を纏ったアンモルクザラフトその人だった。
アンモルクザラフトの眼光は鋭く、相手の心の奥底まで見透かすようだった。彼はテヒモシンをじっと見つめ、低く重々しい声で言った。
「お前は誰だ? 私が選んだ者たちの中に、お前の姿はない。」
テヒモシンは背筋を伸ばし、表情一つ変えずに落ち着いて答えた。
「私もまた、神々に選ばれた者です。この世にはモゴドト、ヒゴダー、バゴドリーなど、数多くの至高の存在がいます。そして君たちを選んだ神は、おそらくボゴドフォーでしょう。」
ソガンストマイルムは首を少し傾げ、聞き慣れぬ名前に戸惑いを浮かべながら繰り返した。
「ボ……ボゴドフォー? それは誰だ?」
テヒモシンは直接答えず、思索に満ちた声で続けた。
「君たちの神はどのような姿をしている? 例えば私を選んだ神は、強大な九尾の狐の姿をしている。」
アンモルクザラフトはしばらく沈黙し、虚空を見つめるようにして自身の力の源を回想するかのごとく言った。
「私の神は……純粋な『黒』だ。形もなく、姿もなく、ただ果てしない深淵だけが存在する。」
「私はその神にお会いできるでしょうか?」——テヒモシンが突然提案した。
アンモルクザラフトは小さく首を振り、口元に無力感の笑みを浮かべた。
「私自身が、積極的に会う方法すら知らないのだ。お前に道を示すことなどできるはずがない。」
その時、ずっと様子を窺っていたオプマルテイクが一歩前に出て、好奇心を瞳に宿して尋ねた。
「随分と焦っているようだな。ボゴドフォーに会わなければならない、よほど重要な用事でもあるのか?」
テヒモシンは三人の顔を真っ直ぐに見据え、周囲の空気を凍てつかせるような冷たい真実を告げた。
「人類はいつか必ず絶滅し、より進化した別の種が地球を支配するだろう。私はただ一つだけ、あの神に問いたいことがある。——人類の終焉の日は、もう来ているのか?」
アンモルクザラフトは目を細め、彼の周囲にあった無形の圧力が和らぎ、代わりに神秘的な理解の色が浮かんだ。
「……なるほど。お前の目的はそれか。」
第8章:絆の要塞
学園長室の清浄な空間の中で、テヒモシンは静かに茶を一口啜った。彼は目の前にいる権力ある男を好奇心の眼差しで観察し、荘厳な沈黙を破った。
「アンモルクザラフト、世界一の教育帝国を築き上げた傑出した学園長となる秘訣を、ぜひ聞かせてくれないか?」
アンモルクザラフトは背もたれにゆっくりと寄りかかり、瞳が遠い過去を辿るように霞んだ。埃まみれの古い日記をめくるかのようだった。
「この地位に就く前、私は重度の社会恐怖症を患っていた。学校の椅子に座っているだけで悪夢の連続だった。他人の視線が怖く、発表で手を挙げること、教材を買うこと、公共トイレを使うこと、人ごみの中で食事すること……あらゆることを避けていた。ただ、虚空に消えてしまいたかった。」
テヒモシンは目を細め、鋭い分析を口にした。
「社会恐怖症……つまり、君は三つの最も残酷な要因に晒されていたわけだ。学校いじめ、家庭内の激しい対立、そして外部社会からの冷遇と苛め。」
「その通りだ。」アンモルクザラフトは頷き、気配が一瞬で鋼のような強さを帯びた。「だからこそ『コ・アンテザ』を築く際、私は二度とどの子供も私のような孤独を味わわないシステムを作り上げた。」
彼は教育哲学を熱く語り始めた。瞳に情熱の炎が灯る。
「私は全ての生徒に、社会的交流を伴う活動への参加を義務付けている。それは単なる遊びではなく、情報交換とコミュニケーション能力を鍛える訓練だ。ここにはスポーツ、音楽、科学技術などの様々な趣味の部活動から、大規模な部員募集祭まで揃っている。」
アンモルクザラフトは立ち上がり、窓辺へ歩み寄って賑わう校庭を見下ろした。
「多文化文化祭、仮装パーティー、ストリートパーティー……生徒たちにはボランティア活動や才能コンテストへの参加を奨励し、特にK-popアイドルやインスピレーショナルスピーカー、著名な科学者との交流の場を設けている。全ては社会的感情教育(SEL)を育むためだ。」
彼は一言一言に力を込めた。
「SELを通じて、生徒たちは感情の管理、他者への配慮、そして自らの選択に対する責任を学ぶ。私は五つの柱を重視している。自覚、自信、創造性、継続、そして『つながり』だ。この学校の至上ルールは『誰一人として孤立させない』。全ての生徒は最低一つの部活動に所属し、各グループは最低四名以上で構成される。」
テヒモシンは指で机を軽く叩き、鋭い視線を向けた。
「強固なつながりのシステムだ……しかし、四人グループの中でいじめや孤立が発生したらどうする? その『抜け穴』にはどう対処するんだ?」
アンモルクザラフトはすぐには答えず、ゆっくりと部屋中央の制御パネルへ歩み寄った。そこには校内の生徒数千人分の人間関係図が表示されている。温かくも強い無形の圧力が空間を包んだ。
「鋭い質問だ、テヒモシン。四人グループにおける孤立は、魂の破壊の芽だ。だから私は『鏡の仕組みと生存連鎖』で対処している。」
彼は振り返り、揺るぎない瞳で語った。
「まず、私のシステムは行動だけでなく、感情(SEL)を監視する。グループ内で誰かが孤立の兆候を見せれば、残り三名の『つながりポイント』が大幅に減点される。コ・アンテザでは、仲間が枯れていく状況で個人の成績など無意味だ。私は彼らに理解させる。孤立を傍観する者こそ、罪の共犯者だと。」
彼は画面上のグループ活動を指差した。
「次に、各人の役割が唯一無二となる課題を作成する。誰かが排除されれば、その課題は必ず失敗する。言葉ではなく、現実を通じて互いの価値を気づかせる。いじめっ子が、自分が孤立させていた相手こそが試験突破や栄光への鍵だと悟った瞬間、傲慢は尊敬に変わらざるを得ない。」
アンモルクザラフトは少し声を低くした。
「そして最後に、意図的で悪質な孤立が続いた場合……『立場逆転』の罰を科す。主犯は学校全体から完全な沈黙を浴び、一週間を過ごす。他者に与えた『存在しない』という感覚を自ら味わわせる。その底から這い上がった時、彼らは挨拶一つ、気遣う視線一つがどれほど価値あるものか理解するだろう。」
テヒモシンは小さく頷き、厳格でありながらも人間味あふれる回答に満足した様子だった。
「互いを守る自己完結型のシステム……さすが世界一の学校だ。」
アンモルクザラフトは静かに微笑んだ。
「私の生徒たちは知識だけでなく、『人としての在り方』を学ぶ。なぜなら私が誰よりも知っているからだ。本当の痛みは殴られることではなく、世界から存在を否定されることなのだと。」
第9章:神々が開戦するとき
「コ・アンテザ」での出会いから数日後、偽りの平穏は突然引き裂かれた。テヒモシンが気だるげに欠伸をしようとした瞬間、動きが止まった。アンモルクザラフトがそこに立っており、常に冷静だった最高指導者の顔が恐ろしい怒りに歪んでいた。
「どうしたんだ、アンモルクザラフト? その顔はただ事じゃないぞ。」テヒモシンが尋ね、不穏な予感を覚えた。
アンモルクザラフトの声は震えていた。恐怖ではなく、計り知れない喪失感からだった。
「ソガンストマイルムとオプマルテイクが……死んだ。私は二人の息吹も存在も、この地上から感じ取れなくなった。」
テヒモシンは呆然とし、目を大きく見開いた。
「まさか! 時間と空間を操る二人を倒せる者がこの世にいるというのか?」
「わからない。」アンモルクザラフトは歯を食いしばり、床がひび割れるほどの圧力を放った。「しかし、二人の痕跡が一瞬で消えた。これは犯人がまだ近くにいる証拠だ!」
テヒモシンは即座にいつもの冷徹さを取り戻した。
「何を待っている? 行こう。私が北、君が南だ。必ず犯人を見つけ出す。」
一人になったテヒモシンは、鋭い推論の海に意識を沈めた。時間と空間の二人を倒す方法は一つしかない……
彼らを葬るには、絶対的な虚無の領域を作り出すしかない。空間も時間も物質もエネルギーも存在しない、物理法則すら無意味な場所だ。
「モゴドト……お前たちだな?」
テヒモシンが虚空に向かって呼びかけると、空間が大きく揺れた。眩い光が現れる。モゴドトの神々(チジウシン、スイズシン、フエザシン、ユチュバースターツ)をはじめ、ヒゴダーの神々(ブングンドク、カイテイクール、バラウツェアミ、グラサルジェチ、ラングハンスセント)、そして「子神」たち(ゴンドララカ、オヴィムチ、シュネヴィティ、ウィルコ、チョウカゼリ)までもが一斉に降臨した。
「我々は神だ。」チジウシンが絶対的な威厳で宣言した。「この惑星の存亡を脅かす者を、一切合財滅ぼす。」
カイテイクールは前方を指差し、殺気を漲らせた。
「黒幕がついに姿を現した。いつまで待つ気だ、早く粛清しよう。」
テヒモシンは強大な存在たちに囲まれながらも冷静に答えた。
「全ての背後にいる真の黒幕は……闇の力を宿した神だ。」
ゴンドララカは小さくため息をつき、哀れむような目でテヒモシンを見た。
「またかよ……悪く思うなよ、テヒモシン。お前は優しすぎる。だからいつか利用されるぞ。」
テヒモシンの瞳に、揺るぎない意志の炎が燃え上がった。
「もしお前たちがあの人を滅ぼすことを諦めないというなら……私がお前たちを止める。」
彼は片手を高く掲げ、瞬間移動で仲間たちを呼び出した。
「出てこい、12人の女神守護者!」
一瞬にして、圧倒的な力を纏った12の紅の影が現れた。ネーベルゼレ、ファゼシン、ディーススワノ、ギギェウム、ダルジョアムーン、ジョウセーレ、セイントリーシュ、エルライビジン、アン・フオヒコ、ユウセインダー、レイ・ジョニジ、アエギキット。彼女たちは陣を組み、天界すら相手に戦う構えを見せた。
「テヒモシン、もう間違ったものを守るのはやめろ!」スイズシンが大声で叫んだ。
テヒモシンは唇の端を上げ、正義の本質を抉るような問いを投げかけた。
「誰が正しく、誰が間違っている? そして、それを決める権利は一体誰にあるというのだ?」
第10章:闇と罪の王国
極度の緊張が張り詰める中、重く圧倒的な力が大地に降り注いだ。アンモルクザラフトが姿を現し、黒いマントが殺気の嵐の中で激しく翻った。彼の顔は激しく歪み、裏切りの炎が瞳の中で燃えていた。
「裏切り者め!」
アンモルクザラフトの咆哮が空を震わせ、テヒモシンに向かって放たれた。
テヒモシンは慌てて手を前に突き出し、制止しようとした。
「待ってくれ、説明させてくれ、アンモルクザラフト!」
「説明などいらん!」
相手に言い訳の機会すら与えず、アンモルクザラフトは手を振るった。極限まで凝縮された純粋な黒の奔流が光速で飛来した。まだ友情を信じていたテヒモシンは全く防備をしていなかった。胸の中心に直撃した闇の掌は彼を遥か遠くへ吹き飛ばし、意識を失って地面に倒れた。
この時、闇の指導者の怒りは制御を超えていた。膨大な暗黒が体から溢れ出し、空全体を覆い尽くし、太陽の光を飲み込み、昼を瞬時に永遠の夜へと変えた。
アンモルクザラフトは虚空の中心に立ち、冷たい笑い声を夜を切り裂くように響かせた。
「誰もが善人になりたがる……誰もが被害者、弱者の役割を演じたがる……ならば、誰が悪役を演じる? 誰が悪者になる? この世界が偽りの正義ばかりなら、私がその悪役を引き受けよう! 世界の全ての罪を、この身に背負ってやる!」
主人が重傷を負ったのを見て、ネーベルゼレは苦痛と怒りに満ちて吠えた。
「この死に損ないが! 我が主に傷を負わせるとは! 姉妹たちよ、かかれ!」
残りの十一人の女神守護者たちが一斉に叫んだ。空間を揺るがす声が響き渡る。
「殺せ!」
神をも滅ぼす規模の総攻撃が爆発した。
ネーベルゼレ:万物を腐食させる「酸の雨」を降らせる。
ファゼシン:「天国に咲く花」で死の気配を帯びた花弁が標的を包囲。
ディーススワノ:「地獄の音色」を奏で、聴覚を切り裂く。
ギギェウム:「全火力展開」で2ギガトンTNT級の爆発を空間に焼き付ける。
ダルジョアムーン:「天地を震わせる衝撃」で全ての物理構造を崩壊させる。
ジョウセーレ:「魂を引き裂く」攻撃で霊的な本体を直撃。
同時に、残りの六人も最上級の絶技を放った。
セイントリーシュ:「金界滅殺!」——空間を貫く万の金属剣。
エルライビジン:「絶対ダイヤモンド・ゼロ・フラクチャー」——現実を永遠のダイヤモンド構造で凍結。
アン・フオヒコ:「天使の浄化の炎」——あらゆる邪念を焼き払う。
ユウセインダー:「至高の死神雷撃」——黒い運命の雷。
レイ・ジョニジ:「超高出力プラズマ」——全ての物質を溶かすエネルギー流。
アエギキット:「始原の十二獣」を召喚し、太古の力を解放。
十二の神級の力が一つに集束し、大陸すら消し飛ばすエネルギー爆発を生み出した。しかしその圧倒的な力の前に、アンモルクザラフトはただ片手を軽く上げただけだった。
「地獄堕とし。」
一撃のみ。深淵なる闇の渦が開き、全ての絶技を飲み込み、十二人の女神守護者をまとめて弾き飛ばした。彼女たちは大嵐の前に散る花びらのように地面へ落ち、闇の指導者の圧倒的な力量の前に完全に沈黙した。
第11章:子神たちの舞踏と至高の闇の鎮圧
十二人の輝かしい紅の影――誇り高き女神守護者たちは、今や地面に散らばり、弱々しい息だけを繰り返していた。先ほどの戦いは対等な戦いなどではなく、格の違いを残酷に示すものだった。アンモルクザラフトの前では、彼女たちの力など夜の嵐の前の蝋燭に過ぎなかった。
煙が晴れぬうちに、新たな五つの影が空へ舞い上がり、闇の指導者を包囲した。それは「子神」たち――最高位の神々の純血を引く実体たちで、戦闘意志が顔に溢れていた。
警告など一切なしに、攻撃が始まった。
まず海を操るウィルコが先制した。彼女は手を振り、「ウォータースラッシュ」——巨大な水の刃で空間を切り裂いた。更に水圧を数千倍に凝縮した「ハイドローリック・スラッシュ」、そしてダイヤモンドすら切断する超高圧の流れと、風を切り裂く速度の「トルペド・スラッシュ」を連発し、アンモルクザラフトの急所を狙った。
即座に、ゴンドララカが火山の力を爆発させた。彼は咆哮を上げ、炎の大太刀を振り下ろし「ボルケーノ・ゴッド・スラッシュ」を放つ。空間の裂け目から溶岩の奔流を呼び起こし、恐るべき炎の地獄を創り出した。続けて「ラヴァスラッシュ」「マグマスラッシュ」と、数千度の熱を伴った斬撃を浴びせ、戦場を焼き尽くす火の海に変えた。
地面からはオヴィムチが大地を操った。彼は足を強く踏み鳴らし、「ランドスラッシュ」「サンドスラッシュ」で巨大な土石流と砂嵐を巻き起こした。「ロック・スラッシュ」「マウンテン・ゴッド・スラッシュ」が続き、大地から鋭い山々を突き上げ、巨大な槍のように敵を貫こうとした。
氷雪の化身シュネヴィティは冷たい一撃を放った。「フロストスラッシュ」で空気中の水分を無数の氷の矢に変え、最後に「氷の剣」で現実を凍てつかせ、アンモルクザラフトの周囲の闇の動きを封じようとした。
空を支配するチョウカゼリは狂風を呼び起こした。「ウィンドスラッシュ」で鋭い風の刃を浴びせ、「神風掌」「偶発の旋風」で巨大な竜巻を発生させ、最後に「風神の怒り」で全風力を一点に集中させた真空の拳を放ち、恐るべき圧力爆発を起こした。
五つの元素の力が同時に総攻撃を仕掛け、未曾有の破壊の光景を生み出した。しかしアンモルクザラフトは微動だにせず、表情一つ変えなかった。
「派手ではあるな。」冷たい声が元素の咆哮の中で響いた。「しかし、まだ弱すぎる。」
彼はゆっくりと片手を高く掲げた。周囲の闇が捩れ、一点に凝縮されていく——この世の何よりも深く、恐ろしい一点の黒へ。
「闇の絶頂残殺。」
一撃のみ。その黒点が爆発した。それは通常のエネルギー爆発ではなく、完全なる「消滅」だった。至高の闇が広がり、火山の炎を飲み込み、氷を溶かし、大地を崩し、水を蒸発させ、狂風を消し去った。
五人の「子神」たちは叫ぶ間すらなく、巨大な闇の圧力に吹き飛ばされ、完全に沈黙した。彼らのどれほど偉大な力も、アンモルクザラフトの極致の闇の前では無に等しかった。
第12章:傲慢なる神々と闇の帝王の分身
十二人の女神守護者と子神たちが倒れる光景を前に、ヒゴダーの神々は一切の憐憫を示さなかった。むしろ、彼らの唇には傲慢で侮蔑に満ちた笑みが浮かんだ。存在の頂点に立つ者たちにとって、下々の失敗などただの人間の低劣さを証明するものに過ぎなかった。
グラサルジェチは失望したように首を振りながら言った。
「弱すぎる。時間の無駄だったな。」
「ふん、人間の力など所詮この程度か。」ブングンドクが雷鳴のような声で唸った。
バラウツェアミが一歩前に出て、深く冷たい青い瞳を光らせた。
「これからお前たちに、凡人と至高の神々の絶対的な差を見せてやろう。」
言葉を終えると同時に、ヒゴダーの神々が一斉に突進し、ありとあらゆる現実を粉砕するエネルギーの嵐を巻き起こした。五方向からの猛攻を受け、アンモルクザラフトは目を細めた。ここで手加減する時ではないと悟った。
「分身。」
一瞬の呼吸の間で、アンモルクザラフトの影から四つの完全なる分身が分離し、それぞれが濃密な闇を纏って各神と正面から対峙した。
惑星を震撼させる激しい戦いが始まった。
カイテイクールが咆哮を上げ、「火山噴火」を呼び起こした。大地が裂け、数千トンの溶岩が空高く噴き上がり「怒れる溶岩流」となった。更に火山岩を凝縮した「溶岩岩石嵐」——炎の隕石の雨を敵に降り注がせた。
アンモルクザラフト(本体)は静かに立ち、マントを微かに揺らしながら囁いた。
「地獄堕とし。」
カイテイクールの足元に虚無の穴が開き、全ての溶岩を飲み込み、そのまま神を深淵の底へと引きずり込んだ。
ラングハンスセントは杖を振り、「聖なるサイクロン」と「神聖なる旋風」を生み出した。光を帯びた二つの竜巻が光速で回転し、大陸すら吹き飛ばす圧力を生み出した。
アンモルクザラフト(分身1)は手を前に突き出した。
「絶頂闇消滅。」
至高の闇の奔流が放たれ、竜巻の核を切り裂き、神聖なる力を漂う塵へと変えた。
バラウツェアミは数百メートルの「破壊の津波」を召喚し、大陸を沈めんとする海の怒りを解放した。最後は「爆裂水晶」——数百万の水の結晶が炸裂する高圧爆弾の雨を降らせた。
アンモルクザラフト(分身2)は冷たく告げた。
「闇の吞噬。」
黒い霧が降り注ぎ、霧の通った場所で大海は蒸発し、水晶は完全に虚無へと分解された。
グラサルジェチはエネルギーを凝縮し、「氷心寒気」を展開した。絶対零度の巨大な氷の球体が投げられ、通り道の時間さえ凍結させた。
アンモルクザラフト(分身3)は優美な弧を描いて手を振った。
「闇の裂痕。」
漆黒の剣閃が空間を切り裂き、巨大な氷の球を真っ二つにし、修復不可能な現実の亀裂を残した。
ブングンドクは拳を地面に叩きつけ、「地震打撃」を発動。大地を粉砕し、大陸を砕かんとする土石の津波を起こした。
アンモルクザラフト(分身4)は震源に強く足を踏み下ろした。
「無限の闇。」
足元から広がった闇が大地を固定し、ブングンドクを揺るぎない闇の鎖で拘束した。
戦いは始まった時と同じく急速に終わった。強大だったヒゴダーの五神は、先ほどまで他者を批判していた者たちが、今やアンモルクザラフトの五つの存在の足元に倒れ伏していた。
アンモルクザラフトは神々の瓦礫の中心に立ち、何事もなかったかのように冷たい視線を保っていた。
「次の神は誰だ?」
第13章:神々の傲慢と闇の海
煙が徐々に晴れ、ヒゴダーの神々が地面に散らばり、荒い息を繰り返す荒廃した光景が露わになった。それを見たモゴドトの神々は救うどころか、辛辣な嘲笑を浴びせた。
チジウシンは腕を組み、侮蔑を浮かべて口の端を歪めた。
「普段から享楽に耽って、修業を怠っていたのだろう? 神界の面汚しだな。」
カイテイクールは地面に手をつきながら、苦しげにだが恐怖を隠せずに言った。
「違う……お前たちにはわからない。あの感覚は……まるで十人のアンモルクザラフトと同時に戦っているようだった。」
「一対十だと?」スイズシンが冷笑を漏らした。「目の前にあるのは明らかに一対一だ。自分の弱さを言い訳にするな。」
ラングハンスセントは鋭い目で闇の指導者を観察しながら頷いた。
「カイテイクールの言う通りだ。あいつは、これまで倒した者たちの力を完全に吸収・統合したようだな。」
「つまり『時間と空間の二人組』や『三神』『四聖』の力か……」フエザシンが呟き、名状しがたい圧力を感じ始めた。
バラウツェアミが深刻な声で言った。
「とにかく、あいつと戦う時は絶対に油断するな。」
最も神秘的な権能を持つユチュバースターツが一歩前に出て、輝くオーラを放ちながら宣言した。
「わかった。では我々がいく! 覚悟しろ、アンモルクザラフト!」
四人のモゴドトの神々が圧倒的な威勢で降臨し、アンモルクザラフトの分身を抹殺せんと襲いかかった。
チジウシンは雄叫びを上げ、杖を地面に叩きつけた。「神聖地震」で空間を捩じ曲げる大地震を起こし、「大地神降臨」で母なる大地の精華を宿した巨大石柱を突き上げ、分身1を平らに押し潰した。
スイズシンは水流を操り、「無限の海嵐」を展開。恐るべき水圧の竜巻で全てを薙ぎ払い、「水神降臨」で上界の聖水を降らせ、分身2を完全に浄化・消滅させた。
フエザシンは狂風を呼び、「神威の竜巻」で風の刃を空に撒き散らし、「風神降臨」で真空の嵐を発生させ、分身3を闇の欠片へと引き裂いた。
ユチュバースターツは指を標的に向け、「虚無爆破」を発動。空間を爆ぜさせ、最後に「全能神降臨」で揺るぎない運命として、分身4を現実の流れから抹消した。
全ての分身が綺麗に消滅するのを見て、アンモルクザラフト(本体)はわずかに表情を変えた。深い瞳に一瞬の懸念がよぎった。
「さすがは本物の神の力……しかし残念ながら、私はお前たちより一枚上手だ。」
アンモルクザラフトは両手を大きく広げた。足元の影から闇が滝のように溢れ出し、突然分裂を始めた。一人、十人、百人、千人……そして数十万ものアンモルクザラフトの姿が地平線を埋め尽くし、世界を真っ黒な人の海へと変えた。
「卑怯だぞ、小僧!」チジウシンが歯ぎしりし、汗が流れ落ちた。
「こうなるなら、俺も先に『分身』の技を学んでおくんだった……」スイズシンが苦々しく呟いた。
モゴドトの神々は再び最強の絶技を放った。しかし恐るべき光景が広がった。数十万のアンモルクザラフトが同時に動き、神々の技を完璧に模倣しながら、それを死の闇バージョンへと変換した。
「闇の爆破!」
「闇の神威!」
「闇神降臨!」
……
数万の闇のエネルギーが同時に爆発した。空は黒い雷と暗い炎の雨で炸裂した。偉大な権能を持つモゴドトの神々も、数と反属性の絶対的優位の前に為す術なく、次々と闇の海に沈んでいった。
神々の光は次々と消え、永遠の闇が世界を包み込んだ。
第14章:最強者の正義
数万の闇の分身が空を埋め尽くす中、テヒモシンがゆっくりと立ち上がった。アンモルクザラフトの一撃による圧力は、まるで跡形もなく消えていた。彼は闇の指導者を真正面から見据え、冷たくも揺るぎない眼差しで告げた。
「アンモルクザラフト。私はお前を止める。」
アンモルクザラフトは目を細め、嘲るような笑みを浮かべた。
「止めるだと? 道徳論で俺を説教するつもりか? それとも救世主気取りで悪を改心させようというのか?」
「違う。」テヒモシンは拳を強く握り締め、指の間から純粋な光が漏れ始めた。「私はこの両手で直接、お前を止めてみせる。」
「やってみろ!」アンモルクザラフトが吼えた。
テヒモシンが光速のように突進した瞬間、地面に倒れていた神々は驚愕を隠せなかった。
「ついに本気で戦う気になったのか……?」チジウシンが血の付いた口元で呟いた。
スイズシンは空を見上げ、声を震わせて言った。
「教えておくぞ。我々の陣営で、本当に最強なのはあいつだ。」
ゴンドララカは疑わしげに言った。
「あいつが? 俺はあいつが直接戦うところを一度も見たことがない。ただ後ろで俺たちを支援しているだけじゃなかったか?」
「そうだな。」オヴィムチが続けた。「いつも『力の倍増』『力の融合』『力の回復』……そんな支援ばかりだった。」
フエザシンは小さく首を振り、尊敬の眼差しを浮かべた。
「三柱の至高神があいつに出した卒業試験の内容を知っているか?」
シュネヴィティ:「何だ?」
チジウシン:「あいつ一人で、我々三人を同時に相手にしろというものだった。」
「子神」たちは言葉を失った。
スイズシンは続けた。
「だからユチュバースターツ、お前とあいつの戦いを俺たちが止めに入らなければ、お前も負けていただろうよ。」
ユチュバースターツ:「どれほど強いか、見てやろうじゃないか。」
ウィルコが疑問を口にした。
「なぜだ? あんなに強いのに、なぜ力を隠していたんだ?」
最も賢いギギェウムが誇らしげに微笑んだ。
「それが我が主人の流儀だ。主人はこう言っていた。『なぜ俺一人だけが強くなる必要がある? 皆が一緒に強くなれるなら、それを選ぶ』と。」
テヒモシンは虚空の中央で停止し、闇の海と対峙した。彼は静かに手を天に掲げた。
「光剣の雨!」
大気圏から数百万の光の剣が流れ星の雨のように降り注いだ。一呼吸のうちに、アンモルクザラフトの数十万の分身が蒸発し、強い日差しに溶ける霧のように消え去った。
アンモルクザラフトは歯を食いしばり、接近戦に持ち込んだ。
テヒモシンが手を振るう。
「ライトスラッシュ!」
アンモルクザラフトが即座に模倣した。
「闇の斬撃!」
二つの相反するエネルギーが激突し、現実を揺るがす大爆発を起こした。
テヒモシンは体を翻し、極限の熱量を凝縮した。
「太陽爆撃!」
アンモルクザラフトも引けを取らず、応戦した。
「闇の爆撃!」
大地が二つの極の圧力で大きく裂けた。
テヒモシンは光の嵐を呼び起こした。
「光影風暴!」
アンモルクザラフトが吼え、再現した。
「闇の風暴!」
戦いは神の目ですら追えない速度で展開した。しかしテヒモシンは突然、リズムを変えた。単発の技ではなく、複合攻撃へ移行した。
「光速追撃!」と「光明爆破!」の融合。
この時、テヒモシンの速度は時間の限界を超えていた。アンモルクザラフトが技を模倣する間もなく、巨大な光の球体が胸の真ん前で爆発した。
ドォン!
純粋な光が闇の力を内部から貫き、分解した。アンモルクザラフトは地面に激しく叩きつけられ、深く巨大な穴を穿った。闇の海は完全に消え去り、世界に青い空が戻った。
テヒモシンはゆっくりと降下し、穴の縁に立ち、激しい死闘を終えたとは思えないほど落ち着いた呼吸を保っていた。
第15章:邪神降臨 — 光の死
煙が晴れると、テヒモシンはゆっくりと巨大な穴の縁まで歩み寄った。弱々しく息をするアンモルクザラフトを見て、彼はとどめを刺さず優しく手を差し伸べ、珍しく温かい声で言った。
「アンモルクザラフト、大丈夫か? ここで終わりにしよう。『コ・アンテザ』に戻ろう。子供たちが待っている。」
アンモルクザラフトは上を見て、苦い笑みを浮かべた。
「ふん……本当に馬鹿みたいに優しい奴だな、テヒモシン……」
ズシャッ!
肉を切り裂く乾いた音が響いた。漆黒で長く冷たい獣の牙が、アンモルクザラフトの背後から胸を貫いた。闇の指導者の体が震え、黒い煙となってテヒモシンの目の前で消滅した。
闇の残骸の中から、異様で忌まわしい生物が這い上がってきた。それは普通の生物の体ではなく、死の集合体だった。
中心に巨大な毒牙の蛇の頭を持ち、四肢の代わりに四つの蛇の頭が口を開けて獲物を待っている。胴体と長い尾も無数の小さな蛇の頭で構成され、絶え間なく蠢き、夜を切り裂くような不気味な音を立てていた。
ブラックリムドスカの動き一つ一つが、蛇の頭の恐ろしい連鎖を生み、見る者に背筋を凍らせた。
チジウシンが恐怖に震えて叫んだ。
「あれは……ブラックリムドスカ!」
「ブラックリムドスカとは何だ?」テヒモシンが構えを取りながら問うた。
スイズシンは歯を食いしばり、恐ろしい記憶を蘇らせた。
「覚えているか? 俺たちが別の宇宙へ乱を鎮めに行った時のことだ。あの宇宙には六柱の神が支配する二つの惑星があった。力、知性、感情、因果、存在、変革の神だ。」
フエザシンが続けた。声が震えていた。
「しかし、その宇宙の『力の神』は腐敗した。他の神々を皆殺しにし、唯一の独裁者になろうとした。それは多宇宙の禁忌だ——一つの宇宙に一柱の独裁神など許されない。そしてその者が……ブラックリムドスカだ。」
「我々はあんたを倒したはずだ!」スイズシンが叫んだ。「なぜまだ生きている!?」
ブラックリムドスカは鱗が擦れるような不気味な笑い声を上げた。
「愚かな神どもめ……お前たちは俺を倒したが、俺の牙の一つがお前たちの一人に付着し、この地球に落ちた。可哀想なアンモルクザラフトは偶然その牙を踏んでしまった。俺はあいつの不幸な幼少期を利用し、復讐の力を与えた。代わりに、あいつには俺の復活のための闇のエネルギーを集めさせた。」
彼は消えた黒い煙を見つめながら言った。
「しかしあの安物は『人間』すぎた。ただ自分に酷いことをした者だけを殺し、無関係な者は殺さなかった。だから社会に虐げられ、いじめられ、孤立した者たちを選び、力を与えて自ら復讐させた。復讐が終わったら俺の命令に従わせ、本当に殺すべき者——怠惰な人間、犯罪者、性的に逸脱した者などを指示して殺させた。」
彼は軽蔑を込めて吐き捨てた。
「人を殺すことで闇の力を集める。悪人の死をエネルギー源にした。しかし俺にとっては、その『選別』は遅すぎて退屈だ。俺は無差別な大量破壊を望む!」
「我々はあの宇宙であんたに勝った。二度目もある!」フエザシンが叫んだが、体は既に限界だった。
「どうかな……自分の姿を見てみろ。お前たちは全員、廃人同然だぞ。」ブラックリムドスカは地面に倒れた神々を嘲った。
ユチュバースターツは這うように体を起こし、テヒモシンを指差した。
「我々にはまだ最強の者がいる。あいつが貴様を虚無へ送る!」
テヒモシンは一歩前に出て、輝く光のオーラを纏い、審判の眼差しを向けた。
「ブラックリムドスカ、驕るな。ここで貴様を倒す。」
シュッ!
無駄のない動きで、ブラックリムドスカはただ軽く指を鳴らした。
「凝縮の闇!」
小さな、しかし銀河の質量を宿した漆黒の球体が、テヒモシンの光の防御を一瞬で貫いた。皆が呆然とする中、テヒモシンの体は崩れ落ち、生命力は一撃で完全に失われた。
ブラックリムドスカは傲慢に笑い声を上げた。
「あいつは確かに強かった。それは認める。しかし俺はもっと強い。あいつはか細い太陽に過ぎない。俺は……この銀河全体を覆う暗黒物質だ! 俺の思考はシンプルだ。殺せば殺すほど、俺は強くなる。」
彼は動き始め、世界規模の虐殺の準備を始めた。一人一人の死が、彼の独裁復活のための糧となる。
ネーベルゼレは主人の遺体を抱きしめ、震えながら涙を流した。
「あの男……本当に神なのか……?」
ユチュバースターツは歯を食いしばり、苦々しく答えた。
「あいつは確かに神だ……しかし、邪神だ。」
第16章:全能創造主と現実の終焉
テヒモシンの心臓が止まり、希望が消えかけたその瞬間、荘厳な現象が起きた。停止した胸の奥から眩い光が溢れ出し、神という概念を遥かに超えた気品を持つ存在へと凝縮した。
ファゼシンが驚愕した。
「あなたは誰……? なぜ我が主人の体の中から出てくるのですか?」
その存在は静かに微笑んだ。その笑みには何十億という銀河の運行が宿っていた。
「私はヒムシエルデウス——全能創造主だ。」
ディーススワノが慌てて尋ねた。
「なぜあなたのような方が、主人である人間の体の中にいたのですか?」
「少し待て。」ヒムシエルデウスはすぐには答えず、軽く指を鳴らした。すると自分と全く同じ分身が現れた。「BlackRymdSkaと少し遊んで来い。」
分身は光のように飛び去り、本体は思索に沈んだ表情で語り始めた。
「これは数十億年前の話だ。私は自分の宇宙を創造することに夢中になりすぎた——何千万億という宇宙を生み出した。その代償として私は疲弊し、深い眠りについた。次元を漂流し、最終的にこの宇宙へ辿り着き、この子供の体に入ったのだ。」
チジウシンが呆然とした。
「つまり……テヒモシンの体は神の器だったというのか!」
「その通り。」ヒムシエルデウスは頷いた。
スイズシンが叫んだ。
「なるほど……だからテヒモシンは我々三柱の神を同時に倒せるほど強かったのか。」
フエザシンが興味深げに観察した。
「しかしなぜ創造主が人間のような姿をしているのですか?」
「器がどのような形なら、私はその姿で現れる。」
ネーベルゼレと残りの11人の女神守護者たちが一斉に跪き、額を地面に付けた。
「どうか……我が主人をお救いください!」
「いいだろう。」ヒムシエルデウスは指を二度鳴らした。
瞬時に、テヒモシンの胸が再び上下し始めた。彼は飛び起きて周囲を見回し、呆然とした。
「ここは……? あなたは誰だ?」
「二度説明する必要があるのか?」ヒムシエルデウスは舌打ちした。「私は全能創造主だ。」
テヒモシンは混乱したまま聞いた。
「なぜあなたがここに?」
「なぜならお前は今死んだばかりだからだ。器が死ななければ、私は完全に顕現できない。」
ディーススワノが疑問を呈した。
「でも主人は以前にも一度死んだことがありますよね?」
ギギェウムが頷いた。
「そうだ、エルライビジンを救った時に死んだ。」
ヒムシエルデウスは薄く笑った。
「あの死は私が仕組んだものだ。エルライビジンをダイヤモンド形態へ進化させるためにな。ダルジョアムーンが必ず救うことも分かっていた。全ては私の脚本通りの駒だ。」
ジョウセーレは身震いしながら感嘆した。
「さすが創造主……世の全てが御手の内にあるのですね。」
「もういい。」ヒムシエルデウスは手を振った。「話はこれくらいで十分だ。お茶でも飲んで菓子でも食べようか?」
突然、彼は動きを止め、遠い地平線を見つめた。
「あ……ああ。BlackRymdSkaが私の分身を倒したようだ。一時間もかかったのか? 弱すぎる。それで二つの宇宙最強を自称するとはな。」
セイントリーシュが恐る恐る尋ねた。
「創造主よ、宇宙の名前はどのような法則で付けているのですか?」
「簡単だ。」彼はあっさり答えた。「例えばこの宇宙には生命のある惑星が一つある。だから宇宙1。BlackRymdSkaの宇宙には二つあるから宇宙2だ。」
アン・フオヒコが聞いた。
「複数の宇宙に同じく一つの生命惑星があった場合は?」
「宇宙1a、1b、1c……という具合だ。では私は行く。」
一瞬の後、ヒムシエルデウスはBlackRymdSkaの眼前に出現した。
「こんにちは。」
BlackRymdSkaが吼えた。
「さっき一人倒したばかりだというのに、また新しいのが出てきたのか!?」
ヒムシエルデウスは哀れむような目で彼を見た。
「お前は気づいているか? たった今、お前が一時間かけて戦っていたのは、私の1%の力の分身だったということに。」
「何を言っている!」BlackRymdSkaが激昂した。「私を侮辱する気か!?」
彼は黒い嵐のように突進した。ヒムシエルデウスは静かに指を三度鳴らした。
パチッ。パチッ。パチッ。
爆音も血しぶきもなかった。邪神BlackRymdSkaの体は風に吹かれる塵のように虚無へと消え去った。
ヒムシエルデウスはモゴドト、ヒゴダーの神々、子神たち、そして12人の女神守護者の前に降り立った。彼は空を見上げ、次に大地を見下ろし、全員を凍りつかせる冷たい宣言を下した。
「そろそろ……この宇宙を破壊する時間だ。」
第17章:終末後の新たなる始まり
ヒムシエルデウスの宣言は死刑宣告のように全てを凍りつかせ、万物を極度の恐怖に陥れた。死のような沈黙の中、テヒモシンが一歩前に出て、懇願した。
「どうか……私を器として長年使ってくださった御恩を汲んで、この宇宙に一度だけ機会を与えてください。」
ヒムシエルデウスは長い間沈黙し、過去と未来を全て見通す瞳で彼を見つめ、静かにため息をついた。
「いいだろう。しかし、代償として均衡を整えねばならん。私は全ての神聖な力を回収する。これより先、お前たちは皆、ただの普通の人間だ。」
彼は指を四度連続で鳴らした。
パチッ! パチッ! パチッ! パチッ!
神々から放たれていた光のオーラが消え、翼と権能が虚無へと溶けた。虚脱感が広がったが、命は確かに残っていた。ヒムシエルデウスはさらに指を五度鳴らした。
パチッ! パチッ! パチッ! パチッ! パチッ!
テヒモシンが呆然と尋ねた。
「今……何をなさったのですか?」
「現実を再構築した。」彼は落ち着いて答えた。「これからは地球に大陸は6つだけ。そのうち4つだけが生命を維持できる。世界人口はちょうど10億人になった。お前たちは自分の手で、この惑星を一から作り直せ。」
ヒムシエルデウスは遠い星々を見上げた。
「あちらには生命のない宇宙が多すぎる。今回は何十億の宇宙を破壊しに行く必要がありそうだ。この人間の姿をしばらく保ったまま旅を続ける。では別れだ。」
そう言い残し、創造主は虚無へと溶けるように消えた。荒廃しながらも希望に満ちた新しい世界を残して。
瓦礫の中で、突然いくつかの人影が現れた。ゴンドララカの妻と14歳の双子の娘二人、そしてオヴィムチの妻と12歳の娘だった。
「どうして……どうしてみんなここにいるんだ?」ゴンドララカは涙を流しながら家族を抱きしめた。
「私にもわからないわ。」妻は涙を浮かべて答えた。「光に包まれたと思ったら、いつの間にかここにいたの。」
テヒモシンは微笑み、優しい眼差しで言った。
「きっと創造主が去る前の最後の贈り物だよ。」
しかし感動の空気は長く続かなかった。チョウカゼリがテヒモシンに近づき、意味深な目で言った。
「ねえ……君、妻や子供はまだいないよね?」
テヒモシンは頭を掻きながら苦笑した。
「いないよ。彼女の一人もまだいない。」
「じゃあ君は……」チョウカゼリが言いかけた瞬間、シュネヴィティが割り込んできた。
「……私の夫になってくれない?」
「この子、ずるい! 私の言葉を横取りする気か!」チョウカゼリが吠えた。
ウィルコも加わった。
「チョウカゼリ、また人のものを横取りするの?」
「どういう意味よ?」
シュネヴィティ:「私たちももう30歳よ。結婚もしたいし、会社にも後継者が欲しいわ。」
「私たちって……二人ともってこと!?」チョウカゼリが驚いた。
「ええ。」ウィルコが断言した。「こんな良い男は今後なかなか見つからないわ。だから……夫を共有しましょう。」
「そんなの認めないわ!」スイズシンが突然真剣な顔で言った。「彼は私の夫になるの。」
ユチュバースターツ:「あんたも参戦するの!?」
スイズシン:「私は誓ったの。私の顔を見た男は、夫にするって。」
ユチュバースターツ:「なるほどね。」
フエザシンも前に出て堂々と宣言した。
「彼は私のものよ。」
ユチュバースターツ:「今度はあんたか。理由は?」
フエザシン:「私の誓いは『私を倒した男を夫にする』よ。」
空気が一気に熱を帯び始めた時、チジウシンが恥ずかしそうに前に出た。
「私は彼と一番長く接して観察してきたわ。それに……寝ている間に、彼は私と『あのこと』をしたの。」
「えっ!? 『あのこと』って何!?」ユチュバースターツが慌てて叫んだ。
テヒモシンは大慌てで手を振った。
「ただ血を採ってギギェウムを救っただけだよ! みんな何を想像してるんだ!?」
ネーベルゼレが近づき、テヒモシンの手を握った。
「私は彼と8年間一緒に暮らしてきたわ。私が一番相応しい!」
テヒモシン:「お前まで参加するのか!?」
「私たちも!」残りの11人の女神守護者たちが一斉に声を上げ、逃げ場のない包囲網を形成した。
ユチュバースターツが呟いた。
「私も何か理由を作って夫にしないと……」
ヒゴダーの女神たちまでもがざわつき始めた。
「終末後のこの世界で、こんな極上の男はもう見つからないわ。すぐに彼のことを調べないと!」
全ての女性たちが一斉に近づき、大声で叫んだ。
「結局、誰を選ぶのよ!!」
テヒモシンは冷や汗を流し、周りを見回したかと思うと突然全力で逃げ出した。
「ごめん! 俺は孤児院の45人の女の子たちの面倒を見ないといけないんだ! デートしてる暇はない! 助けてくれー!」
黄金色の夕焼けが照らす新しく生まれた世界に、笑い声と追いかけっこが響き渡った。戦争と神々の苦しみは遠ざかり、騒がしくも幸せな日常のトラブルへと変わっていった。
こうして新しい世界は始まった。
少し騒がしい……けれど、皆にとってのハッピーエンドとして。
続く




