俺の猫に触れるな
第1章 野性の鋏
2024年1月1日(月)
わずか一年という短い期間で、テヒモシンの世界は彼が想像だにしなかった形で崩れ落ちた。
運命と法則を変える力を持つ、二人の最も親しい友——彼らは去った。
どんなに調べても、すべての手がかりは闇に飲み込まれた。
自らを「神」と名乗る存在——マルクールヴィストとテンラスターに力を与えたというその者——は、ただのぼんやりとした影のままだった。
真実はどこにあるのか?
それとも、神の力そのものが、彼らを墓場へ誘う呪いだったのか?
2024年1月10日(水)
人里離れた田舎の片隅で、遅れた文明と残虐さが暗闇の中で共生していた。
湯の沸騰する音が不気味に響く。
顔に深い皺を刻んだ老人が、湯気を上げるやかんを無表情に持ち上げ、鉄の檻に容赦なくかけた。
中では小さな猫が苦痛に身をよじり、悲痛な叫びを上げていた。
しかし老人はただ歯をむき出し、虚ろな笑みを浮かべるだけだった。
「お前は……人間である資格がない。地獄へ落ちろ。」
冷たい声が背後から響いた。
老人は驚いて振り返り、まだやかんを握ったまま叫んだ。
「誰だお前!? 俺が何を食おうが俺の勝手だろうが!」
「その命、俺が成仏させてやる。」
見知らぬ男はそれ以上無駄な言葉を費やさなかった。
彼は高く跳躍し、両足を鋭く振り下ろした。
死神の鋏のような一撃——シザーズキック。
風を切り裂く音が響き、肉と骨がぶつかる音とは明らかに違う、鉄同士が激突するような重い音が鳴った。
ガキィッ!
老人の頭蓋骨は一瞬で粉々に砕けた。
その足は異様なほど硬く、鋭く、あらゆる物質を切り裂くことができるかのようだった。
老人は呆然としたまま地面に崩れ落ち、息絶えた。
男は静かに着地し、死体を冷ややかな目で見下ろした。
「動物の方が、お前のような人間より生きる価値がある。」
「お前が……リキン・ジル・リュウか。無慈悲な虐待者を殺すという男だな。」
影の中からテヒモシンが姿を現した。彼はじっと先ほどの一撃を見ていた。
リキン・ジル・リュウが振り返る。その全身から、まだ死の気配が濃く漂っていた。
「そうだ。そしてお前は誰だ?」
「よかった……お前だったか。」
テヒモシンはため息をつき、悲しげな目を向けた。
「悪い報せがある。マルクールヴィストとテンラスター……二人が死んだ。」
リキン・ジル・リュウの瞳が一瞬揺れた。
「……なぜ死んだ?」
「俺にもわからない。だからお前を探した。一緒に真相を突き止める必要がある。」
「なぜ俺がお前を信じなければならない?」
リキン・ジル・リュウは目を細め、いつでも戦える体勢を取った。
テヒモシンは静かに答えた。
「マルクールヴィストが言っていた。もしお前と友になりたければ、『猫の話をしてやれ』と。」
沈黙が落ちた。
リキン・ジル・リュウはゆっくりと構えを解き、肩が小さく震えた。
「俺の六ヶ月の子猫が……人間に食べられたんだ。」
テヒモシンは声を詰まらせながら言った。
リキン・ジル・リュウは灰色の空を見上げ、底知れぬ深淵のような声で呟いた。
「俺の猫は生後二十日だった。それも奴らに食べられた。」
血だまりと乾いた木の枝を吹く風だけが、二人の間にあった。
小さな命への共通の痛みが、最も残酷な形で彼らを繋いだ。
テヒモシンはリキン・ジル・リュウの両手を見つめ、それから鉄の檻の方へ視線を移し、最後に静かに尋ねた。
「……お前は思うか?
人間はもう、救う価値があるのか?」
第2章 声なき者たちの慟哭
冷たい風がゴミの臭いのする路地を吹き抜ける。
薄暗い高層ビルに挟まれた、貧困層がひしめくスラム街。
リキン・ジル・リュウはそこに立ち、冷徹な瞳を闇に沈めていた。
彼の手には、まだ乾ききっていない血がこびりついていた。
「なぜ俺がここにいることがわかった?」
低く、鋭い声が静寂を切り裂いた。
テヒモシンは路地の両側に吊るされた犬猫の肉が並ぶ露店を見ながら答えた。
「ここに犬猫の肉が堂々と売られているのを見れば、お前が近くにいることはすぐにわかった。」
リキン・ジル・リュウは唇の端を歪め、世間に対する深い侮蔑を浮かべた笑みを浮かべた。
彼は汚れた階段に腰を下ろし、この五年間続けてきた血塗られた道程をテヒモシンに語り始めた。
「俺には三毛猫がいた。四年もの間、ずっと一緒にいた。」
声がわずかに震えたが、すぐに鋼のような硬さを取り戻した。
「発情期に、たまたま路地の奥に住む男の庭に入ってしまった。そいつの猟犬に噛み殺された。だがそいつはそこで終わらせなかった。
仲間たちと酒を飲みながら、その猫の皮を剥ぎ、肉を切り分けて食った。
俺が駆けつけたとき、そいつは嘲るように笑って言った。『自分の土地に入ってきたものは、全部俺のものだ』とな。」
リキン・ジル・リュウの瞳が殺意で真っ赤に染まった。
「人間は必ず裏切る。だが動物は裏切らない。
なぜなら彼らの小さな純粋な世界では、お前だけが唯一の拠り所だからだ。
もしあの猫が人間の言葉を話せたなら、きっとこう言うだろう。
『あなたが私を愛してくれる百倍、私はあなたを愛します。私が息をしている限り、心臓が動いている限り、私はあなたを愛し続けます』と。
なのに奴は、その忠誠をただの酒のつまみに変えた。」
その場にいた酔っ払いたちは大笑いし、テーブルを叩いた。
「ははは! お前頭おかしいんじゃねえの? 動物が愛とか何言ってんだよ、バカ野郎!」
ドンッ!
一瞬の直撃蹴り。
男の顔面に炸裂し、頭蓋骨が砕け散った。
傲慢な笑みがまだ消えきらないうちに、男は即死した。
「お前らみたいな、弱い生き物に一片の慈悲も持てない人間のクズが、何がわかるというんだ?」
リキン・ジル・リュウは黒い嵐のように残りの男たちへ襲いかかった。
骨の折れる音、喉を詰まらせる悲鳴、血の臭いが部屋中に広がった。
彼は一人ずつ確実に屠りながら言い放った。
「これが動物を虐げた代償だ。」
彼の瞳がさらに暗く沈んだ。
今度は、法が裁けなかったもう一つの事件だった。
ある男が小さな猫を六分間もの間、執拗に痛めつけ、殺した事件。
証拠は明白だったが、法の隙間を突き、その男は平然と自由の身だった。
「法がお前を裁けないなら、俺が裁く。」
リキン・ジル・リュウは人気のない暗い路地でその男を見つけた。
警告もなしに引きずり出し、最も残酷な制裁を加えた。
「お前は動物に痛みも感情もないと思っているのか?」
鉄パイプが男の脛を叩き砕く。
乾いた音と共に男が絶叫を上げた。
「今、お前は自分が与えた苦痛がどんなものか、わかったか?
動物にも痛覚はある。人間と同じように痛いんだ。
そして感情もある。猫だって、絶望すれば泣く。
動物にも、人間と同じように生きる権利がある。」
彼は男をすぐに殺さなかった。
男が猫を苦しめた時間と同じだけ、じっくりと地獄を味わわせた。
一分一秒が永遠の苦痛となり、男は恐怖の中で最後に息絶えた。
その虐待者の死体が発見されたとき、近所の人々は恐怖するどころか、密かにリキン・ジル・リュウを称賛した。
社会が見捨てた真の正義を、影から執行する隠れた英雄として。
リキン・ジル・リュウはテヒモシンを見つめ、拳を強く握りしめた。
「この世界は腐っている。小さな命を軽んじる人間たちによって。
もし誰も彼らのために正義を執行しないのなら——俺がその者になる。」
第3章 命を盗む者たち
蒸し暑い午後。
黒い猫が弱々しく溝の中で泳ごうとしていた。少年が慌てて駆け寄ろうとしたその瞬間——
一人の老人が通りかかり、濁った目が異様な欲望で光った。
「黒猫は体が冷えて美味いんだ。置いていけ。」
まるで命など玩具のように、老人は冷たく言い放った。
返事など待たず、猫を掴み上げ、古びた麻袋に押し込み、口を固く縛った。
猫が必死に爪を立てて抵抗しても、老人は平然と袋を冷たい水の中に沈めた。
弱々しい気泡が幾つか浮かび上がり、やがて消えた。
袋が完全に動かなくなった頃——リキン・ジル・リュウが現れた。
彼は一言も発せず、老人をその溝のほとりまで引きずっていった。
「お前はこの『冷たさ』がそんなに好きか?」
鉄のような両手が老人の頭を水の中に押し込んだ。
老人は先ほどの猫と同じように激しくもがいた。
リキン・ジル・リュウは表情一つ変えず、そのまま押し続け——
やがて水面に静寂だけが残った。
狭い屋根裏部屋。
薄暗い電球の光が、壁一面に貼られた猫の絵を照らしていた。
幼い子供が小さな猫を胸に抱きしめ、規則正しい鼓動を感じていた。
「今夜は一緒に寝ようね。」
無邪気な笑みを浮かべ、子供は幸せそうに眠りについた。
それは純粋な友情と、かけがえのない約束だった。
翌朝。
部屋は異様に静まり返っていた。
ベッド脇の水入れはからからに乾き、毛布の中に小さな影はどこにもなかった。
子供は階段を駆け下り、取り乱した様子で叫んだ。
「お母さん……お父さん……僕の猫、どこ?」
大人たちは食卓に座ったまま、冷たく乾いた声で告げた。
「屠殺場に売った。
餌代ばかりかかって邪魔なんだよ。」
「でも……あれは僕の友達なのに!」
子供は泣き叫び、涙をぼろぼろと零した。
「俺が猫の肉を食いたくなったから食っただけだ。
お前が泣くことなんかねえだろ。」
子供は胸を掻き毟りながら崩れ落ち、嗚咽した。
「お父さん……本当に友達を食べたの……?」
「俺が家に連れてきたんだ。食おうが食うまいが俺の勝手だ。」
男の目には、もはや情など微塵もなく、ただ食欲だけがあった。
リキン・ジル・リュウは廊下の暗がりに立ち、すべての裏切りを黙って見ていた。
彼にとって、これは単なる一匹の猫の喪失ではなく、一つの魂の破壊だった。
彼は暗闇から歩み出た。影が男を覆う。
「お前は正しい。
欲しくなったら食べればいい。」
リキン・ジル・リュウの声は冷たい鋼のようだった。
「だが今からお前が『食べる』のは、この罪に対する判決だ。」
男が椅子から立ち上がるより早く、リキン・ジル・リュウの足が動いた。
死神の鋏のような蹴り——シザーズキック。
二本の足が激しく交差し、空気を切り裂く。
硬質な金属音が響き、男のこめかみを直撃した。
ガキィッ!
頭蓋骨が一瞬で砕け、男の首が不自然に曲がった。
屍は人形のように床に倒れ込んだ。
リキン・ジル・リュウは足を収め、表情一つ変えなかった。
この男の命は、猫への忠誠を裏切った瞬間にすでに終わっていた。
今のはただ、必然の決着に過ぎない。
彼は恐怖で凍りつく母親に向き、静かに告げた。
「旦那さんは人間の皮を被った化け物だ。
お前は殺さない。
だが自分の子供をまともに育てろ。
動物を愛せる子供は良い人間になる。
お前の無関心でその子を殺すな。」
彼は床に落ちた猫の絵を拾い上げ、震える子供の小さな手に握らせると、静かに家を後にした。
真っ暗な夜。
母親が遠くで働く息子に電話をかける声が、震えながら響いた。
「……お父さんが全部袋に入れて……川に捨てたの。
母猫も、お腹に子猫を孕んだ猫も、生まれたばかりの子猫たちも……
家が狭いって……」
リキン・ジル・リュウは川岸に立ち、流されていくいくつもの袋を見つめていた。
そして犯人を探し当てた。
彼は冷たくなった猫の入った袋を手に持ち、男に問うた。
「なぜここまで残虐なことをした?」
男は煙草をふかしながら答えた。
「家を汚すからだ。」
リキン・ジル・リュウの目が刃物のように鋭くなった。
「家を汚しているのは猫じゃない。
お前の心だ。」
「なんだと? 説教かよ!?」
「違う。
ただ、お前が人間であることを思い出させてやっているだけだ。」
母親が駆け寄り、震える猫たちを抱きしめて泣き崩れた。
「ごめんなさい……私、止められなくて……」
男は顔をしかめ、乾いた笑いを漏らした。
「捨てただけだろ。猫くらい、どうでもいい。」
リキン・ジル・リュウは低く、遠い太鼓のような声で言った。
「お前が捨てたのは猫じゃない。
お前の中の『人間』だ。」
男は拳を握りしめたが、リキン・ジル・リュウの眼光に圧倒され、言葉を失った。
「人間が一度でも人間性を失ったら、すでに死んでいる。
死人を殺しても罪にはならない。」
リキン・ジル・リュウは男の指の関節を一本ずつ折りながら続けた。
「動物も痛みを知り、泣くことを知っている。
母猫は冷たい水の中で、最後まで子猫たちを守ろうとした。
お前は獣以下だ。」
男の絶叫が暗い川辺に響き渡った。
リキン・ジル・リュウは男を、男が猫たちを沈めたのと同じ川に蹴り落とした。
急ブレーキの音。悲鳴。
道端で青年の飼い猫が車に轢かれて死んだ。
青年は膝をつき、震える声で言った。
「やめて……行かないで……」
リキン・ジル・リュウが青年を路肩に引き寄せた。
「落ち着け。」
しかし暴走族たちは謝罪するどころか、嘲笑った。
「まだ温かいうちに食っちまえよ。」
彼らは猫の死骸を持ち去り、青年の悲しみを安い酒の肴に変えた。
笑い声が響く宴会の最中、扉が勢いよく蹴破られた。
リキン・ジル・リュウが血を求める赤い瞳で立っていた。
「美味かったか?」
答えを待たず、死神の鋏が再び舞った。
容赦ない蹴りがリーダー格のこめかみを砕いた。
「お前たちは他人の家族を食った。
ならばお前たちの命で償え。」
その夜、死体の宴は終わった。
参加者全員の顎を砕き、二度と何も食べられないようにしてから、リキン・ジル・リュウは彼らをこの世から消した。
彼は瓦礫の中に落ちていた猫の首輪を拾い上げ、強く握りしめた。
「死肉を食らう者はグール。
グールを殺すことに……罪はない。」
第4章 血に飢えた者たちと遺伝する無慈悲
貧しい住宅街。
弟の震えた声が電話越しに響いた。
「お姉ちゃん……お父さんが、お姉ちゃんの猫を食べちゃったよ……」
少女は冷たい床に崩れ落ちた。
出産を終えたばかりのやせ細った体は青白く、両手は力なく震えていた。
この家は彼女にとって安らぎの場所などではなかった。
唯一の家族だったあの猫こそが、彼女のすべてだった。
彼女は小銭を貯めて猫に可愛い服を買い、スパに連れて行き、大切に育ててきた。
しかし酒浸りで、友人たちへの虚栄心しか持たない暴力的な父親は、その愛情を酒の肴に変えた。
ネット上では、道徳を装った者たちが一斉に非難を浴びせかけた。
「親が苦労して育てたのに、猫を親より大事にするなんて」
「なんて親不孝な娘だ」
リキン・ジル・リュウは闇から姿を現し、酒宴に興じる男を冷たい目で見た。
「猫の肉を一度食べると止まらなくなる。
まるで中毒だ。残虐の中毒だ。
お前たちは猫を見ただけで飢えを覚える。
その『飢え』は腹のものじゃない。暴力への飢えだ。」
リキン・ジル・リュウの声は鋼のように硬かった。
「人間性を完全に失った中毒者を殺すことは、善行だ。」
彼のシザーズキックはこめかみを狙わず、男の顎関節を粉砕した。
二度と噛むことも味わうこともできないようにしてから、最後の判決を下した。
彼はネット上の偽善者たちに向け、コメントを残した。
「娘が不孝なのではない。父親が人でなしなのだ。」
つい昨日まで、屋根の上で元気に跳ね回っていた小さな猫。
朝日を浴びて輝く毛並みで、近所の人々のささやかな喜びだった。
しかし今日は、カビ臭い軒下で、信頼していた飼い主に「解体」された。
小さな骸は粗末な針金で物干し竿に吊るされ、古びた雑巾のように風に揺れていた。
リキン・ジル・リュウは軒下に立ち、固まった血で汚れた毛並みを無言で見つめた。
彼の目は冷たく波一つ立たなかったが、周囲の空気は殺気で重く淀んでいた。
彼は乱雑な家の中に入った。
テーブルの上では、犯人が平然と肉を刻み、調味料を振りかけながら、病的な口笛を吹いていた。
「美味そうだろ?」
リキン・ジル・リュウの低い、刃物のような声が響いた。
男が驚いて振り返るより早く、鋼の腕が首を掴んだ。
リキン・ジル・リュウは男を軽々と持ち上げ、足を空中でばたつかせたまま、錆びた肉吊りフックに首の後ろを叩きつけた。
「お前は愛するものを物干しに吊るすのが好きなんだろ?」
リキン・ジル・リュウは目を血走らせ、恐怖で瞳孔が広がる男を睨みつけた。
「だったら、自分が肉として吊るされる気分を味わってみろ。」
首の骨が嫌な音を立て、喉を詰まらせる悲鳴が上がった。
狩人だった男は一瞬で獲物に成り下がり、リキン・ジル・リュウの鉄の脚による最後の審判を待つだけとなった。
静かな川辺の午後。
少年は欄干にしがみつき、目を真っ赤に腫らしていた。
濁った水面の下で、小さな影が浮かんでは消えていく——母親が投げ捨てた子猫たちだった。
母猫は少し離れた場所で震え、大きく目を見開いていた。
普通の鳴き声ではなく、痛みと懇願と絶望に満ちた声で呼び続けていた。
まるでこう言っているようだった。
「どうか……私の子を助けて……」
少年は何もできなかった。水は深く、流れは激しい。
子猫たちは小さすぎて、弱すぎた。
彼はただ泣き叫ぶことしかできず、その泣き声と母猫の声が、誰も聞かない悲しい合唱となった。
母親——加害者——は家の中に立ち、まるで古いゴミを捨てたかのように冷たい目で外を見ていた。
後悔も説明も一切ない。
彼女にとって子猫たちはただの「重荷」だった。
少年は母猫を抱きしめ、せめてもの慰めを与えようとした。
しかし母猫は泣き止まなかった。
慰めなどいらない。失われた子どもたちを求めていた。
リキン・ジル・リュウはいつの間にかその女の背後に立っていた。
彼は川を見つめ、一切の後悔のない女の目を見た。
「あれを重荷と呼ぶのか?」
低い声に殺気が満ちていた。
「なら、お前のような腐った心を持った者も、社会の重荷だな。」
彼は嘲るように言った。
「お前の論理では『重荷は排除すべき』だったよな?」
雷のような蹴りが女を激流に叩き込んだ。
まさに彼女が子猫たちを沈めた場所だった。
「この水が、お前の冷血を洗い流せるかどうか見てみろ。」
家の中では、少年が母猫を抱きしめ、二匹は同じ傷を分かち合うように震えていた。
リキン・ジル・リュウは少年の肩に手を置き、静かに言った。
「覚えておけ——今日の痛みが、お前をあいつらとは違う人間にする。
それこそが、この世界が必要としているものだ。」
少年が母親のことを尋ねると、彼は穏やかに嘘をついた。
「お母さんは良心の呵責に耐えきれず、子猫たちを助けに川に飛び込んで死んだよ。」
公園の午後。
大きな犬が木の陰に隠れた小さな猫に襲いかかった。猫の悲痛な鳴き声が響く。
「殺せ!」
犬の飼い主が興奮して叫んだ。
しかしリキン・ジル・リュウが先に動いた。
彼は犬を押し退け、怪我はさせずに攻撃を止めた。
飼い主が怒鳴った。
「てめえ、狂ってるのか? 俺の犬を殴りやがって!」
リキン・ジル・リュウは鋭く振り返った。
「俺が犬を叩いたのは、弱い者を襲ったからだ。」
一歩踏み出し、もう一蹴り。
「そしてお前を叩くのは、犬を躾けられなかったからだ。」
飼い主は本能的に後ずさった。
「もう二度とこんなことがあれば、人も犬も殺す。」
人通りの少ない三叉路。
茂みに放置された猫の入った袋。
恐怖で目を見開いた猫は、なぜ「家族」が自分をここに置いて消えたのか理解できなかった。
リキン・ジル・リュウは猫を抱き上げ、震える頭を優しく撫でた。
「……捨てられたのか?」
彼は猫を捨てた男の前に立った。
「お前たちは動物に感情がないと思ったらしく、飽きたら屠殺場に売ったり、野原に捨てたりする。
命をゴミだと思うなら、お前たちの命もその程度だ。」
乾いた音が響き、男は捨てられた猫の袋の横に崩れ落ちた。
冷たいトイレの扉が静かに開く。
一匹の猫がゆっくりと入り、便器に飛び乗った——少年Kが教えてきた文明的な習慣だった。
その動画がSNSで拡散され、Kは失われた友だちを見つけた。
彼は多くの時間をかけてその習慣を教え、二人の唯一の絆にしていた。
しかし母親は無慈悲に猫を捨てた。
Kが猫を連れ帰ると、母親は冷たく吐き捨てた。
「捨てたものを拾うなんて。耳のない畜生め。」
リキン・ジル・リュウが闇から現れた。殺気が部屋を凍てつかせた。
彼はKの腕の中で丸くなる猫を見てから、母親に向き直った。
「動物は、たとえ人間に裏切られても、優しさを決して忘れない。」
彼は一歩近づき、恐怖で凍りつく女を血走った目で睨んだ。
「一匹の猫でさえ、教えられたことを大切に守り、文明的な生き物を保とうとする……
なのに、お前は人間として最低限の習慣すら守れない。」
彼は片手で女を持ち上げ、暴れる彼女を無視した。
ガキィッ!
シザーズキックの音が響き、首の骨が折れた。
女の骸はぼろ布のように床に落ちた。
彼はKに向き、わずかに目を和らげながらも厳しく言った。
「これからは、お前とこの子を邪魔する者は誰もいない。」
川へと続く寂しい道。
自転車に二人乗りした二人の少女が無邪気に笑いながら走っていた。
後ろの子の手にはビニール袋があり、中から子猫の悲痛な鳴き声が漏れていた。
迷いもなく、少女は袋を深い川に投げ捨てた。
まるで面白い遊びでもしたかのように、二人は笑い合った。
その冷たい無慈悲さに、リキン・ジル・リュウは深い嫌悪を覚えた。
彼は道の真ん中に立ち、血走った目で少女たちを見た。
「今日、猫を平気で殺せるお前たちは、明日には人を平気で殺す。
お前たちの親のような冷血漢は、みんなこんなところから始まる。」
「今日お前たちを殺すことは、未来の何十という命を救うことだ。」
彼は独り言のように呟いた。
「……俺は善人だ。」
リキン・ジル・リュウは自転車を蹴り飛ばし、二人の少女を地面に叩きつけた。
そして激流のほとりまで引きずり、容赦なく鉄の脚で裁きを下した。
罪の芽を、まだ育ちきらないうちに摘み取った。
川風が逆巻き、泥と死の冷たさを運んでくる。
リキン・ジル・リュウはそこに立ち、長い影を地面に落としていた。
彼は水面を見ず、ゆっくりとテヒモシンの方へ向き直った。
まだ怒りに染まった赤い瞳のまま。
「テヒモシン、俺が一番後悔していることがわかるか?」
テヒモシンは少し離れた場所で、壊れた自転車と静まり返った水面を見つめていた。
乾いた声で答える。
「……何だ?」
リキン・ジル・リュウは深く息を吸い、淀んだ空気を肺に取り込んだ。
「あるガキが、橙色の猫の頭を叩き潰したんだ。猫は何もしていないのに、ただ楽しんで。
そしてそのガキの親の反応がこうだった。『まだ子供だ、何もわかっていない』とな。」
テヒモシンは眉を寄せた。
「猫を殺したのに、そんな言葉が出るのか?」
「ああ。『無垢』という馬鹿げた名目で悪の芽を庇うんだ。」
リキン・ジル・リュウは歪んだ笑みを浮かべ、拳を強く握った。
「だから俺は、その家族全員を殺した。一人も残さず。」
彼はテヒモシンに近づき、重い足取りで言った。
「自分の子を躾けられない寄生虫どもは、悪を容認し、未来の殺人者を育て上げる。
あいつらは畜生以下だ。
奴らを消すのは罪じゃない。
この世界が腐らないための必要な粛清だ。」
夕陽が沈む中、リキン・ジル・リュウは悪魔には見えなかった。
血に塗れた手を正義の道具だと信じきった、殉教者のような顔をしていた。
彼は心の底から信じていた——川底に沈めた二人の少女の未来を断ち切ったことが、正しかったと。
第5章 孤独者の世界が崩れる時
リキン・ジル・リュウはテヒモシンを連れて、ゴミと貧困の臭いが染みついた複雑な路地を進んでいた。
彼は淡々と、しかし凍てつくような声で語った。
「この辺りで猫を飼っているのは俺だけだ。
理由は簡単……他の猫はみんな奴らに食われてしまったからな。」
自宅に戻った瞬間、リキン・ジル・リュウは足を止めた。
いつもの静けさが、馴染みの「にゃあ」という鳴き声で満たされることはなかった。
足元に飛びついてくる小さな影もなかった。
彼には何が起きたのか、はっきりとわかっていた。
怒りは爆発的な叫びにはならず、ただ重く淀んだ殺気へと変わった。
彼は振り返り、隣の家へと一直線に突進した。
隣家のドアが蹴り飛ばされた。
酒を飲むテーブルの上には、まだ肉片と赤黒い血痕が残っていた。
リキン・ジル・リュウは低く唸った。
「なぜ俺の猫だとわかっていながら、返さなかった?
お前たちは猫の肉が欲しくて、人間性を完全に失ったのか?」
隣人は鼻で笑い、汚れた袖で口を拭った。
「ただの猫だろうが。なんだよ、そんなに大げさに。」
「ただの猫……だと?」
リキン・ジル・リュウは一瞬で男の襟首を掴み、地面から持ち上げた。
「お前にとってそれはただの猫かもしれない。
だが俺にとって、あれは俺の娘だった。
俺が絶望の底に沈んでいた時、24時間365日、傍にいてくれた唯一の存在だ。
友達でもなく、家族でもなく……あれは俺のすべてだった。」
彼は手をさらに強く締め、声が怒りに震えた。
「失業して、腹を空かせていた時、俺が食べるものと同じものをあいつも食べていた。
俺が貧乏で、あいつも瘦せ衰えた。
俺は金持ちになったら美味いものを食べさせて、ふっくらした猫にしてやるって誓ったのに……
その約束を果たす前に、お前たちはあいつを食った。
あの猫は……俺の whole world だったんだ。」
リキン・ジル・リュウは男をゴミ袋のように床に叩きつけた。
隣人:「猫の命が人間の命より大事なのかよ?」
リキン・ジル・リュウ:「これは単なる猫か人間かの問題じゃない。
人格と道徳の問題だ。
猫の命が人間より価値がないと言うなら、教えてくれ。
お前の『人間としての価値』はどこにある?
答えられないなら、ここでその命を奪ってやる。」
隣人は恐怖で目を泳がせ、唇を震わせた。
「……お前、狂ってる……」
リキン・ジル・リュウはもう何も言わなかった。
謝罪も、後悔も必要ない。
忠実な命を、ただの食欲を満たすために奪った時点で、そいつはすでに「人間」のリストから抹消されていた。
彼は静かに足を振り上げ、鉄のような一撃を放った。
乾いた骨の折れる音が響き、無意味な存在が終わった。
リキン・ジル・リュウは足を下ろし、周囲の惨状を冷たい、凍てついた湖のような目で見下ろした。
テヒモシンがようやく口を開いた。
「なぜ人間はそこまで動物に残虐になれるんだ?」
リキン・ジル・リュウは虚空を見つめ、無感情な声で列挙した。
「第一に、嫉妬だ。
金が動物に使われるのを見て、自分たち貧乏人が救われないことに腹を立てる。
第二に、動物が自分より有名で愛されていることに苛立つ。
第三に、単なる精神異常者や統合失調症。
そして最後……弱い者を虐げることに興奮と快楽を覚える連中だ。」
第6章 善人の肩にのしかかる重荷
テヒモシンは古びた壁に背を預け、重苦しい空気を断ち切るように尋ねた。
「なぜお前はそこまで動物を愛するんだ?」
リキン・ジル・リュウは言葉を失った。
灰色で冷たい過去の映像が、脳裏に次々と蘇ってきた。
彼は人情のない社会で生きてきた。
いつも無関心に扱われ、いじめられ、殴られ、罵られ、搾取され……
交通事故に遭っても誰も助けようとしなかった。
それでも彼は優しかった。
他人を自分より優先し、常に心配し、気遣っていた。
例えば、グループ発表の時。
彼は他のメンバーの資料だけを作り、自分の分を忘れた。
結果、他の全員が単位を貰い、彼だけが落単した。
リキン・ジル・リュウは内向的だった。
口数が少なく、一人でいることを好み、人付き合いを苦手とし、社会活動を避けた。
「安分守常」「お前が俺を犯さなければ、俺もお前を犯さない」
「誰にも頼らず、自分を頼るのが一番確実」
「嬉しい時も辛い時も、最後に残るのは自分だけ。
困難な時に助けてくれるのも結局は自分だけ」——
(実際、彼は他人の恩を覚えていた。
しかし周囲は皆自分勝手で、彼が助けを求めても無視された。
内向的な人間は社会から「役立たず」と見下される。)
悪い人間が良い人間にする仕打ち——約束を破る、裏切る、恩知らず、
ただの一時的な遊び相手としか見ない……
「世界中が敵に回った時、傍にいてくれるのは自分だけだ。」
「転んだ時、誰も手を差し伸べてくれない。
自分で立たなければ、他人に踏みつけられて終わりだ。」
「外で誰かが待っていてくれると思うな。一人で歩け。
もし一歩遅れたら、待ってくれるか? それとも置いて行くか?」
「この社会は皆自分勝手だ。」
「困難に遭った時、本当に助けに来る者などいるのか? ほとんどの者は避けて通り過ぎる。」
テヒモシンが言った。
「みんなが自分勝手に生きなければならない理由がわかるか?
誰だって自分の重荷を抱えている。
楽に生きたいと思うのは当然だ。だから……他人に頼るな。」
リキン・ジル・リュウが鋭く振り返った。
その瞳はもはや虚ろではなく、激しい憤怒の黒い穴だった。
「みんなそれぞれ重荷を抱えている、だと?」
彼は乾いた、墓場に落ちる枯葉のような笑いを漏らした。
「ならなぜ……なぜ奴らはそのすべての重荷を、善人の肩に押しつけてくるんだ?」
彼は一歩、テヒモシンに近づき、殺気を爆発させた。
「奴らは善人を暇な人間だと思っているのか?
それとも、善人は抵抗しないから、血まみれの肩にさらに石を積み上げてもいいと思っているのか?
この世の善人など聖人などではない。
ただ、息絶えるまで利用され続ける、哀れな存在だ。」
第7章 死が別の道を開く時
リキン・ジル・リュウは自分の過去を静かに語り続けた。
大学に入学した頃、彼はとても哀れだった。
新しい社会環境に溶け込もうと必死になり、社会の基準に合わせようとするあまり、自分にとって最も大切なもの——個性を失ってしまった。
大学では「コミュニケーション能力」と「グループワーク」が特に重視された。
交渉術、批判的思考、説得力、自己紹介、プレゼンテーション、人脈構築——
内向的な彼が心底嫌悪するものばかりだった。
それらのスキルはすべて「友達」が必要だった。
少なくとも一人でも友達がいなければならなかった。
幼稚園から高校まで、ずっと友達がいなかった彼は、ようやく「変わらなければ」と決意した。
友達を作れば、自分は良くなれる。
そう信じて、彼は変わろうとした。
しかし、彼が手にしたのは後悔だけだった。
彼らにとって「友達」という言葉は、ただの道具だった。
彼らは「友達」という言葉を利用して彼を搾取した。
「助けてくれなかったら、もう友達じゃなくなるぞ」と脅し、
感情を人質に取って彼をこき使いながら、自分たちは遊び歩き、恋愛し、酒を飲み、暴走し、喧嘩し、旅行し、好きなことだけをしていた。
彼は常に彼らの個人的な欲求のために利用された。
彼の考えも感情も、彼らには一切関係なかった。
彼はタダで手に入る便利な道具だった。
価値があるときは「友達」と呼び、疲れ果てて助けを求めると、まるで知らなかったかのように顔を背けた。
本来なら、彼は一生利用され続ける人生を送っていただろう。
しかし、ある特別な出来事がすべてを変えた。
ある日、授業を終えて帰宅途中、見知らぬ男が「困っている、助けてくれ」と声をかけてきた。
何の警戒心もなく、彼はついていってしまった。
彼は臓器売買の巣窟に連れ込まれた。
そこにはすでに多くの人間が内臓を摘出され、死んでいる者や、これから摘出される者がいた。
彼らは嘲笑った。
「こいつら全員、お前と同じように簡単に騙される馬鹿ばかりだぜ。」
彼は独房に閉じ込められた。
死に近い状態で、過去の様々な出来事が脳裏をよぎった。
リキン・ジル・リュウは心の底から憎悪した——
「人はみんなそれぞれの人生がある。不相性なら別の人間と付き合えばいい。この子が友達じゃなければ別の友達を作ればいい」
というような浅はかな哲学を振りかざす連中を。
「そんなこと、わかるはずがないだろう?
内向的な人間に、たくさんの友達などいるわけがない。選択肢などないんだ。」
運が良ければ良い友達に出会える。
しかし運が悪ければ、毒になる関係に縛られるしかない。
なぜなら、極度の孤独が怖いからだ。
だから「合わないなら他の人間を探せ」と内向的な人間に言う奴は、
その軽薄さと傲慢さゆえに舌を切られるべきだ。
彼は自問した。
「本当に無意味だった……。
俺は無条件でみんなに優しくしたのに、奴らは俺を何とも思っていなかった。
奴らが頼めば何でも助けた。一度も断らなかった。
なのに俺が助けを求めると、冷たく突き放す。
まるで俺など存在しないかのように。」
「俺はただ、友達が欲しかっただけだ。ただ、誰かに気にかけて欲しかっただけなのに……それがそんなに難しいことだったのか?」
「なぜ奴らは恩知らずで、道理をわきまえない生き方をするんだ?
何か問題が起きれば、全部俺のせいにする。」
彼は思い出した。
クラスにいた非常に嫌な女のことを。
彼女は男好きで、男と遊び歩き、肉欲に溺れていた。
一人で三十人、四十人の男と関係を持ち、
携帯は男からのメッセージと電話番号で埋め尽くされていた。
自己中心で、傲慢で、浪費家で、博打好きで、野心的で、特に金と男に貪欲だった。
出会った男に夢中になり、金が尽きれば即座に捨てる。
当然、クラス中の評判は最悪だった。
しかし彼女は噂を非常に気にしていた。
現在の彼氏がヤクザだと知った時、彼女は噂を流した犯人を探し始めた。
すると彼の「友達」たちは、
「リキン・ジル・リュウが一番あの女を嫌っていた」
「あの悪い噂は全部あいつが流した」
「あの女に関することは全部あいつのせいだ」
と、平気で彼に罪をなすりつけた。
彼は友達を失いたくなくて、馬鹿のように「謝罪して、許してくれ」と頭を下げた。
毒になる関係を維持したかったからだ。
本当に馬鹿だった。
「人は正しいことを言う。『優しすぎるのは馬鹿で狂っている』と。」
彼は心の中で呟いた。
「俺の人生最大の過ちは、他人のために変わろうとしたことだ。
友達を作るなんて、本当に無意味だった。
一人でいた頃の方が、どれだけ幸せで、どれだけ自由だったか。
大学に入ってから、他人を真似て無理に友達を作ろうとした……本当に馬鹿だった。」
「不快だ。不快で仕方がない。」
彼は自分に言い聞かせた。
「愚かさの極みとは、あまりにも多くの人間に優しくすることだ。
俺は変わる。自分のために生きる。
……だが、もう遅いかもしれないな。」
そして、彼は殺された。
内臓を摘出された。
死と虚無の狭間——
最高位の暗黒から、アンモルクザラフトの頭領が現れた。
彼に「影の力」を与え、魂のない肉体を蘇らせ、究極の審判を宿らせた。
「この世界は汚れきっている。
行け。そして、浄化せよ。」
アンモルクザラフトは荘厳な雷鳴のような声で告げた。
臓器売買の連中を皆殺しにし、生き残った者たちを救った後、
リキン・ジル・リュウは自分を救った存在と対話をした。
アンモルクザラフト:「お前は友達が欲しかったが、利用されるだけだったのか?」
頭領は優しく、しかし厳しく教えてくれた。
「世の中には様々な人間がいる。
二面性を持つ者、偽りの者、嘘つき、利己主義者、傲慢者、自惚れ屋、恩知らず、
おべっか使い、名誉と利益に貪欲な者、陰口を叩く者、
信念も原則もない者、正しいか間違っているかも区別できず、
得になる方へ風見鶏のように靡く者、
浅はかで狡猾な者……」
「心に傷を負った者や、孤独な者は、そうした連中にとって最高の標的だ。
彼らはお前を報答しない。お前が助けても、決して返さない。
彼らはお前の孤独と傷を利用しているだけだ。
お前が自分のために時間を使うのを嫌がり、常に側にいさせようとする。」
アンモルクザラフトは静かに言った。
「友達が欲しいなら、動物と友達になれ。」
それ以来、学校でも、家でも、社会でも——
彼はただ、動物たちとだけ友達になった。
第8章 人間を信じられなくなった者
現実に戻り、リキン・ジル・リュウは拳を強く握りしめ、唇の端を歪めた。
社会に対する深い軽蔑を湛えた笑みだった。
「『もし自分が優しさを悪用されていると感じたら、まず相手が自分を軽視していることを認識しろ。そして相手と誠実に話し合ってみろ』なんてアドバイス、本当に滑稽だ。
何のために?
もう軽視され、嫌われているのに、わざわざ話しかけてさらに罵倒されたいのか?
殴られたいのか?
奴らが俺の説明なんか聞くと思うか?
説明すればするほど、ますます見下されるだけだろう?
自分を軽視する相手に対して唯一正しい対応は、
そいつを存在しないものとして扱い、できるだけ遠ざけ、一切の関わりを断つこと。
あるいは……この世界から排除することだ。」
テヒモシンは彼を見て、静かに言った。
「さっきお前は『一人でいる方がずっと幸せだった』と言ったな。
あれは孤独じゃない。
あれは……独りだ。」
第9章 リキン・ジル・リュウという名の空白
2024年7月1日(月)
リキン・ジル・リュウは忽然と姿を消した。
痕跡すら残さずに。
テヒモシンは激しい怒りと無力感に苛まれていた。
彼は瞬間移動を使い、ジョウ・セーレを呼び出した。
「出てこい、ジョウ・セーレ。主がお前を選んだ。」
虚無の空間から柔らかな光が広がり、ジョウ・セーレが優雅に姿を現した。
彼女は首を傾げ、穏やかに微笑んだ。
「ご主人様、お呼びでしょうか。」
「『魂呼び』を使って、死者を呼び戻してくれ。
聞きたいことがある。」
「はい、ご主人様。呼び出す対象の持ち物はありますか?
その人の魂の痕跡が残った導きが必要になります。」
テヒモシンは足元で哀れに鳴いている生後3ヶ月の子猫を抱き上げ、彼女に差し出した。
「この子猫でどうだ?
3ヶ月前に俺がリキン・ジル・リュウに贈ったばかりの猫だ。
この部屋でずっと一緒に過ごしていた。
これで足りるか?」
「はい、十分です、ご主人様。
3ヶ月も一緒に暮らしていれば、体温も魂も十分に結びついています。」
ジョウ・セーレは猫の頭に両手をそっと置いた。
複雑な魔法陣が回転を始め、穏やかな緑色の光が部屋中に広がった。
光は隅々まで染み入り、死の世界からわずかな信号でも探し出そうとした。
しかし、時間が経つにつれ、部屋は恐ろしいほどの沈黙に包まれた。
光が次第に弱まり、ジョウ・セーレの顔が青ざめ、困惑の色を浮かべた。
今まで見たことのない表情だった。
「……おかしいです、ご主人様。」
彼女の声が震えた。
「ご主人様が呼び戻そうとしている魂……どこにも見当たりません。
天国にも、地獄にも……この世をさまよう幽霊としても存在していません。」
テヒモシンは石のように固まった。
これは彼のどんな予想をも超えていた。
「これは……ますます奇妙になってきたな。」
彼は虚空を睨みつけ、独り言のように呟いた。
ジョウ・セーレは心配そうに近づき、彼の服の裾をそっと掴んだ。
「あの……ご主人様、
何かとても危険なことを調べているんじゃないですか?
隠さないでください。」
その不安げな表情を見て、テヒモシンは言葉に詰まった。
彼は無理に微笑み、ぎこちなく彼女の頭を撫でた。
「そんなわけないよ。
ただの古い友人が亡くなったから、少し話を聞きたくなっただけさ。
あいつも若くして死んじまってな……ははっ。」
主人は嘘をついた。
ジョウ・セーレをこの危険なことに巻き込みたくなかった。
彼女には、これからも無邪気で、のんびりと、幸せな日々を送ってほしいと願っていた。




