第七十六章
伊藤を先頭に、階段を降りていく。
ポイントマン(先頭)は、銃口を伊藤に向け、何かあれば即座に対応出来る態勢を取っている。
地下2階には、直ぐに着いた。
僅かに異臭がする。
研究員だろうか?
数名の足音とエアコン、それに何かのモーターのような
音が僅かに聞こえてくる。
「伊藤さん、このフロアには、何があるんだ?」
平井が、伊藤に尋ねる。
「このフロアは……隔離室、材料保管庫…後は……」
隊員は、階段の上下と、フロアの廊下を警戒している。
「……妖魔解析の実験室……ですね……」
「……妖魔解析の実験室……?」
平井が聞き返す。
「何をする場所だ?」
平井の語気が荒くなっている。
「何って……。その名の通り、妖魔の残骸や残留物を調べて、効果的な武器や、薬の原料を見つけるための研究室ですよ……」
少しの間、沈黙が流れる。
「まあ…、たまに生きた妖魔が手に入れば…、それを使って調べますけど……ね」
それを聞いた全員が理解した。
『生きた妖魔』……
それは…
慎一君……だと……。
「貴様!」
鈴木が、伊藤の胸倉を掴む。
「慎一君に…手を出してねぇだろうなあ!」
鈴木の怒りに対して、伊藤は涼しい顔で、
「慎一君……?知りませんよ、そんな人……。我々の仕事は、『妖魔』を研究することなんですから……」
そう断言した伊藤の顔には、冷たい笑顔が浮かんでいた。
鈴木の怒声に、何人かの職員がドアを開け、こちらを見る。
女性職員は、完全武装した隊員に驚き、ドアを閉め、研究室に隠れる。
男性職員は、迷惑そうな顔をしたり、冷たい目で見たりしている。
そんな男性職員の1人が、研究室から歩いてきた。
「冨田隊長……?伊藤……。何かあったんですか」
声をかけてきたのは、上野責任者だった。
「上野さん……、お騒がせして申し訳ありません……」
冨田隊長が、謝罪する。
「異能隊が完全装備で、研究棟に……。ただ事じゃあ、ありませんな……」
「上野さん、東雲隊長と慎一君をもらいに来ました!」
冨田は、ハッキリ言った。
「東雲隊長と……慎一君……?」
「そうです。2人を返していただきます」
上野責任者の方が、立場的に上のため、冨田の言葉は敬語になる。
「東雲隊長は……まだ、検査が終わっていないんじゃないですか?」
「わかっています。それでも、前田班長の扱いに、我々は納得出来ません!」
「扱い……?前田班長が……?」
上野は、少し考え、
「もう一人…慎一…?」
「慎一君です。半妖魔化された…元民間人の子供です」
「あっ!あの妖魔か!?」
上野は何か思い出したように言う。
「何かあったんですか?」
「ああ…。前田班長が腹心の数名だけで研究している妖魔がいたんだ…。それが…子供の声を出していた……」
「前田と腹心だけで!?」
冨田が声を上げる。
全員が、嫌な予感が膨らんでいくのを抑えられなくなっていた。




