第七十章
紺色の戦闘服。
黒のタクティカルベストにガンベルト。
ライフルを抱えた隊列が
——司令部の目を引いた。
「完全装備で歩いている隊員に告ぐ。出動許可は出ていない。直ちに引き返し武装解除するように!繰り返す。出動許可は出ていないーー」
司令部からの放送が流れるが、平井を含む隊員は耳を貸さない。
研究棟だけを見て、歩を進める。
「平井隊長、直ちに引き返してください。出動許可は出ていません!直ちに引き返してください!」
平井の姿を確認したのか、名指しで呼ばれる。
「平井隊長!これ以上は規則違反となります。繰り返します。これ以上はーー」
司令部にサイレンが鳴り響く。
緊急事態と判断された証だ。
司令部から、数名の完全武装した隊員が平井達の進路を防ぐように歩いてくる。
警備隊の連中だろうか……
ち!
平井は舌打ちする。
無駄な怪我人は出したくないんだがな……
完全武装した隊員が、平井の前に立ちはだかる。
全員……異能者だ……。
さすがに見逃してはくれんか……
平井が覚悟を決める。
「どこに行くのかな?平井隊長」
第6小隊隊長の渡辺が、笑いながら平井に聞く。
「研究班に殴り込みとか、面白いことしますね」
第1小隊隊長の冨田だ。
冨田も、笑っている。
「頼む……。見逃してくれ……」
平井が、呟く。
小隊のメンバーにも、緊張が走る。
一瞬の沈黙。
「ズルいぜ……、平井!俺達にも声をかけろよな!」
第14小隊隊長の渕が、楽しそうな顔で言う。
「……!」
平井が顔を上げる。
「あの前田って野郎……いつか叩き潰そうと思ってたんだ!」
第9小隊隊長の千々和が、嬉しそうな顔で言う。
「抜けがけするなよな、平井!仲間だろうが!」
第11小隊隊長の鈴木も笑顔で言う。
「お前ら……」
「零を救出に行くんなら、真っ先にあたしに声をかけなさいよね!」
渡辺が、スネたフリをする。
「研究棟を占拠するのに、その人数で出来るわけないだろ!少しは頭を使えよな!」
渕も、遠慮無しの言葉を投げる。
「お前ら……始末書じゃ済まんぜ……」
平井が笑いを堪えた顔で宣言する。
「何言ってんだよ!『始末書の平井』の隣に名前が載るなら、光栄だね」
鈴木が笑いながら、言い返す。
「……ったく……、特異隊ってのは、バカの集まりだな……」
平井が呆れて言う。
「これだけのメンバーが揃えば、怖いもの無しよ!」
渡辺は、異能者が、これだけ集まって任務を遂行することが楽しくて仕方ない様子だ。
「そろそろ行こうや!研究班の連中……前田も、気がついて、お出迎えの準備をしてるころだろうし……」
千々和が、促す。
「ああ。零と慎一君をもらいに行くか!」
全員が、研究棟を見る。




