第六十九章
平井が隊員の前に立つ。
本来なら、2個小隊で24名いるはずだが、先日の廃墟崩落事故により、多数の隊員が負傷、死亡したため、今、平井の前に立つ隊員は、平井を含めて17名しか居なかった。
居並ぶ隊員の全員が、今回の出動がいかに特殊なものか理解していた。
通常なら、警報と放送で招集される。
任務内容も、
状況も、
すべて共有される。
——だが今回は違う。
平井の名前だけで集められただけだ。
誰もが、気がついていた。
だが。
誰も口にしない。
「全員、集まったな」
平井が隊員を見回す。
「これより、救出任務を遂行する。救出対象は、東雲隊長と慎一君だ!」
空気が張り詰める。
東雲隊長と慎一君の救出任務……
2人は研究棟で、精密検査をしている……
筈だ……。
「なお、今回の任務は俺の個人的な感情による任務だ。無理にとは言わん。やりたくない者は今直ぐ、外れてくれ」
誰も動かない。
誰か外れる者がいたら、自分も……と、周りを見回す者もいない。
全員が、平井を見て、指示を待っている。
「ありがとう……みんな……」
平井が感謝を述べる。
「隊長、慎一君の救出任務は継続中の任務です。13、15小隊、任務を継続します!」
橘が発言する。
「東雲隊長の救出任務となれば、15小隊は全員で任務を完遂します!」
平山が次いで発言する。
平井の口角が、ニヤリと上がる。
満足気に。
「わかった!全員にとってのやりかけの任務だ!今日で、この任務にケリを付ける!」
「はい!」
全員が答える。
その顔には、恐怖ではなく——
任務に立つ者としての昂りが浮かんでいた。
「ただし!」
平井が叫ぶ。
「今回の相手は、特異隊研究班……ハッキリ言って……主に、前田班長とその取り巻き連中だ。発砲はするな!」
平井は、少し躊躇って…
「妖魔以外はな!」
と、付け加える。
「了解しました!」
「よし!行くぞ!」
ーーこの事案…、俺の首だけで済めばいいがな…
平井は、1人で隊員の責任を抱え込む。
平井を先頭に、集まった隊員が歩き始める。
初めて——
“人間”を相手に。




