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黒き神と、願いの星  作者: 相田 依人


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第六十六章

「お姉ちゃん!」


 慎一君の叫びが聞こえた


 零が振り返ると、慎一君は既に職員によって運ばれており、慎一君の声だけが廊下に響いていた。


「慎一君!すぐに出してやるから……」


 零は見えなくなった慎一君に叫んだが、出してやる手段を思いつかなかった。


「東雲隊長……。あなたも、検査の途中でなんですよ。時間を取らせないでもらいたいな……」


 前田班長は、薄笑いを浮かべながら呟く。


「わかりました…」


 零は、職員と完全武装した隊員に囲まれ、次の検査室に向けて歩き出した。



「脳内に生まれた部位に、異常は?」 


 ガラス越しに検査ベッドに寝かされた零を見ながら、前田が、職員に尋ねる。


「変化はありません……。大きさ、網目の広がりも昨日と同じです」


 主任研究師の宮内が、モニターを見ながら報告する。


「前頭前野や視床下部の活性値は?」 


 宮内が、キーボードを叩いて、画面を切り替える。


「前頭前野は高い活性値を示しています。先程の半妖魔の子供の件が影響しているものと思われます」


「そうか……。もう少し、高いストレスを与えてみるのも、面白いかもしれんな……」


 前田の目に、邪悪な光が宿る。


「班長……、やり過ぎではないでしょうか?しばらくは普通の生活をしながら、様子を見ていかないと……」


 宮内が、前田に進言する。


 他の研究員は、宮内の意見に頷く者も数名いたが、ほとんどは前田の意見に賛同しているようで、正義の名の下、実験、研究を楽しんでいる様子が見てとれた。


「様子を見てどうする?東雲も、慎一とか言うガキも、半分は妖魔なのだ…。いや……、ひょっとすると半分以上かもしれん……。そんなヤツ等を心配してどうする?」


「しかし、東雲隊長は異能者で、小隊長としての信頼もあります。慎一君も、駄々を捏ねることは、ありますが子供ということを考えたら、聞き分けのいい子だと思います」


「だから…妖魔ではないと…?」


 前田は、ゆっくりと首を傾げた。


「面白いな」


 口元だけが笑う。


「“まだ人間らしく見えるから、人間だ”と?」


「違います……見かけではなく……」 


「『らしく』見せるのは、簡単だよ…。だから……検査を厳しくして、本心を出してもらわにいとな…」


「そうだよ、宮内さん。あまり感情移入しない方がいい。僕達は結果を出すのが、仕事だろ?相手を研究材料だと思うんだ…」


 同じ主任研究師の藤堂が、前田の肩を持つ。


「研究材料ですって!?出来るわけないでしょ!東雲隊長は仲間だし、慎一君も民間人の犠牲者なのよ!」


「だから…何?研究しないと元に戻すことも出来ないんだぜ!言い方を変えたら、彼等のためにもなっているんだ!むしろ、感謝して欲しいくらいだよ」


 藤堂は、勝ち誇ったような笑みを浮かべ、宮内を見ている。


 ーーバン!!


 机を強く叩いて、宮内が立ち上がる。


「前田班長!体調が優れないので早退させてください!」


 宮内の言葉に、前田は冷たい笑みを浮かべたまま、


「構いませんよ、宮内さん。身体は大切にしないとね。なんなら、2〜3日、お休みを取るといい。」


 前田の口角が上がり、


「あなたの代わりは、何人もいますから……」


 宮内は、前田の声の冷たさに、人間以外のものを感じて

しまった。

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