第五十四章
ギッ……ギッ……
階段を踏む度に、足元が嫌な音をたてる。
踊り場に着いて、ライトで地下一階を照らす。
そこには…
いたる場所に、妖しく光る黄色の蜘蛛巣状の糸が張り巡らせられており、立ち入ることを拒んでいるように見えた。
「さあ…。行きましょう…」
宮本が感情のない言葉で、呟く。
「……」
零は、黙って階段を下り始める。
地下一階に着いたが、目の前には蜘蛛の糸が張り巡らせられており、進めない。
ーーどうするつもりだ……。
ーーこのままじゃ、進めない……。
言葉が出かけた時……
蜘蛛の糸が……
引き上げられ、道を開いた。
「どう…ぞ…。」
宮本の冷たい声が地下に響く。
零は、中林を見る。
顔は青ざめ、立っているが、精一杯といった感じだ。
「宮本……中林はここで休ませろ!この状態で連れていけば、確実に死ぬ」
零は、最悪の事態を口にする。
「どうせ…、死ぬんだ…。なら…死ぬ瞬間を…看取って…やらな…きゃ…」
宮本の言葉に、中林の顔が歪む。
「お前ってヤツは……」
零が、宮本に近づこうとするのを、拳銃で止める。
「さあ…慎一…に…会いたい…んだ…ろ…」
言葉が、途切れる。
舌が、もつれている。
額から落ちた汗が、頬を伝った。
——さっきまでの“それ”とは、違う。
「宮本…お前…」
零の言葉に…
「早…く…行け…」
苦しそうに、告げる。
零は、地下フロアの方を向く。
闇の中にー
妖しく揺れる、
妖魔の糸だけが、
呼吸しているように見えた。
零は闇の中に、入って行く。
一歩。
また、一歩。
地下フロアは、妖しく光る妖魔の糸が、ぼんやりと辺りを照らしているだけで、真の闇に近かった。
ライトの明かりが、闇を切り裂く。
ライトで照らされる一番奥。
その先。
最奥。
かろうじて。
判断出来る。
何かがいる……
四つ足……
低い姿勢……
――あれは。
慎一君に、見えた。




