第五十三章
零が先頭を歩き、中林の負傷した右腕を、宮本が左手で掴みながら、右手には拳銃を持って零を狙っている。
拳銃で撃たれた場所を、握られている中林は、汗を滲ませ、苦痛の声を漏らしている。
「宮本…。なにも、傷口を握る必要はないだろう…。中林の傷口から手を離してやれ。」
零が立ち止まり、宮本に声をかける。
「隊長……。僕の楽しみを取り上げるつもりですか…。あまり…説教されるのは…好きじゃないんですよ……オレ……」
宮本は、中林の傷口を握る力を強める。
「ううっ…」
中林の…
汗と…
血が…
埃だらけの床に、
染みを作る。
「わかった…、宮本…。もう言わないから…力を緩めてやってくれ…」
宮本は、
フン!
と鼻を鳴らし、傷口を握る力を緩める。
「そこを左だ。瓦礫の間を潜れ…」
宮本の指示に従い…
瓦礫の隙間を抜けた、その先――
……零の足が、止まる。
見覚えがあった。
そこは…
黄色の液体が
地下へと続いている階段だった。
「宮本…。ここは…」
零が宮本を振り返り、声を出す。
「さあ……。慎一君を探してるんでしょ……」
宮本が顎をしゃくり、階段を降りろと指示する。
零の前に続く階段は、砂埃が蓄積し、震災の影響か、ところどころにヒビが入っている。
そして…。
先程…。
この階段を見つけた時には――
無かったはずの…
昆虫のような足跡…
妖魔の足跡…だ…。
暗い廃墟の…
さらに、暗い地下…
そこは…
零の希望を飲み込んでいく…
場所だった。




