第四十九章
1人で廃墟を進む宮本が、立ち止まる。
気配がする。
複数の…。
しかも…。
小さい…。
宮本は、ゆっくりと振り返る。
暗い廃墟の中に。
黄色の小さな光が、複数見える。
その小さな光が。
ゆっくりと宮本に近づいてくる。
ネズミだ!
妖魔化した。
宮本が、ホルスターから拳銃を抜く。
その動きに合わせて、数匹のネズミが瓦礫に隠れる。
静か過ぎる空間に、自分の呼吸音だけが、耳につく。
カサカサ…。
音のした方にライトと、拳銃を向ける。
影が瓦礫に隠れるのが、見えたが、拳銃を撃つ時間はなかった。
たかだか、ネズミだ……。
だが……。
指先が、震えている。
額に汗が浮かぶ。
カサ……
後で気配が流れる。
振り返り、闇をきり裂くライトが、異型のネズミを照らす。
そのネズミは、4本足の他に、背中から生えた2本の腕を持ち、ライトの光を反射する長い爪を持ち上げていた。
敵と判断した瞬間……。
無意識で、普段の訓練の成果が発揮されていた。
素早く狙いを定め…。
躊躇わず、トリガーを絞っていた。
ーータン!
ネズミの頭部を撃ち抜き、身体が破裂する。
黄色の液体を撒き散らし、肉片が飛び散る。
薬莢が瓦礫に当たり、高い音を立てる。
左に気配…。
ライトと銃口が敵を探す。
いた!
ーータン!
ネズミが動いたため、ヘッドショットは外したが、横に逃げようとしたネズミの胴体後部に当たり、身体の半分が破裂し、無くなった。
その時。
瓦礫の奥で。
一斉に“カサカサ”と音が広がった。
宮本の撃った発砲音は、インカムを通して、零と中林の耳に入っていた。
「隊長…、今の音って…」
中林が不安そうな声を出す。
「ああ…。宮本!何があった」
零がインカムに叫ぶ。
「ネズミです。2匹処理しました…」
「噛まれてないか」
「大丈夫です…」
大丈夫と言う言葉の裏に、焦りと恐怖が感じられた。
くそ!
合流出来れば。
ネズミくらい…
零が拳を握る。
「無理して、全部殺そうと思うな!安全を最優先して、行動しろ!」
「了解しました」
零は、隊を分断される怖さを初めて感じていた。
「中林!油断するなよ!」
「はい!」
零は。
ネズミに。
ここまでの恐怖を感じるということを――
知らなかった。
その後。
瓦礫が邪魔をするのか。
距離が離れてしまったのか。
宮本との通話が。
途切れてしまった。




