第四十八章
零と中林が半壊した廃墟を進むと、黄色の液体が地下に続いている階段に着いた。
中林が怯えているのが、はっきりわかる。
零も、怯えていた。
慎一君の捜索が、今回の任務である以上、地下に入って調べてみるのが仕事だ。
だが。
平井の小隊と、零の小隊の二個小隊でも、危険と判断した場所だ。
たった2人。
ましてや、中林はC級の新人で、戦力として計算出来ない。
この状況で、調べるのは、無謀でしかなかった。
「中林…。地下以外に進めそうな場所を探すぞ…」
零がインカムで伝える。
「りょ…了解しました」
中林の声は、震えている。
暗く、崩れかけた廃墟の中、ライトの明かりを頼りに進めそうな場所を探す。
「誰か…。誰か、いるのか」
ライトの明かりが、瓦礫の隙間から零のいる空間を照らす。
「15小隊の東雲だ。そっちは、誰だ…」
瓦礫の隙間に隊員の顔が近づくがゴーグルとシュマーグで顔を覆っているため、見た目では判別出来ない。
「東雲隊長…。13小隊の橘です。ご無事でしたか…」
橘…。
平井隊長の副官で、B級異能者だ。
零も、よく知っている。
「橘…、平井隊長は…」
「それが…。瓦礫が崩れた際に、バラバラになってしまい…まだ…会えていません…」
「そうか…。でも…お前に会えて…良かったよ…」
零の本音が漏れる。
やっと。
戦力として計算できる隊員に会えたのだ。
「ありがとうございます…。ですが…」
橘が、言い淀む。
「死傷者か…」
「はい……。ライフルマンの足立と南が……」
「瓦礫の下……」
零は、言いかけた言葉を飲み込む。
橘の沈黙が、零の想像が当たっていることを暗に認めていた。
「瓦礫はどうだ?動かせそうか…」
「無理ですね…。異能を使えば…」
橘は爆破系の異能を使うが、この半壊状態の廃墟で爆破系の異能を使えば…
結果は火を見るより明らかだ。
「いや!異能は使うな…。こっちは宮本とインカムが繫がるが…、そっちは誰か出たか…」
「いいえ…。今のところ…生存者は、東雲隊長だけです…」
零の期待は、儚く消え去る。
「そうか……。そっちは…進めそうな場所はあるか?」
「あります。進んでみます…」
「よし…。合流出来るように、お互い努力してみよう…」
「了解しました」
橘が移動を開始する。
零も、中林と共に、廃墟を移動し始める。
それは…。
黄色の液体が続く地下から漂う、更に濃い臭いから逃れるためでもあった。




