第四十六章
崩れかけた廃墟の中を、零と中林は慎重に進む。
天井から、外れかけた天板が傾き、外れた天板の中から、配電用のコードが垂れ落ち、不気味に揺れている。
床一面の瓦礫は、足をおろすたびに不安定に傾き、ガラガラと音をたてて崩れていく。
暗い廃墟の中、通れそうな場所をライトで探しながら進む。
廃墟の中を進む零は、生臭い臭いが漂っているのが、気になった。
「東雲隊長!倒れている隊員を見つけました」
かろうじてインカムが繫がる宮本から、報告が入る。
「誰だかわかるか」
零が聞き返す。
「確認します…。隊長、13小隊の伊達です…」
伊達…伊達!
インカムの向こうで、宮本が伊達の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「伊達…ライフルマンか…」
「そうです…。しかし…」
宮本が言葉を詰まらせる。
「どうした?」
宮本の話し方に、零の不安が一気に膨らむ。
「脚を瓦礫に挟まれて……意識がありません……」
「瓦礫は…。瓦礫は動かせそうか?」
零の中で、様々な考えが混ざりあう。
助けなければ…。
しかし…。
意識の無い負傷者を連れて、
この瓦礫の中を。
進めるのか。
いや…。
その前に。
助けられるのか。
そもそも、
宮本と合流出来るのか。
僅かな時間で、目まぐるしく考えが浮かび。
消える。
「無理です……。ジャッキアップしないと……浮かせそうにありません……」
零は唇を噛む。
「伊達のライトは…。ライトと水筒は取れるか…」
「ライトも水筒も取れます…。しかし…ライトや水筒で、どうするんですか…」
「水筒を伊達の手の近くに置いて、ライトを点けて水筒を照らせ。伊達が気付いたら、灯りと、水が手に入るし…、気付かなくても、救出班に居場所を知らせる助けになる…」
「そんな…見捨てて行くんですか?伊達は新婚で…まだ、生きてるんですよ!」
零は拳を握る。
「どうやって瓦礫を動かすつもりだ!まだ、私達と合流も出来てないんだぞ!」
零の叫びが、怒声になる。
宮本は、言葉を失う。
零も沈黙する。
お互いに。
理解している。
相手の感情も。
判断も。
しばらく。
沈黙が続いた。
「了解……しました……」
宮本の声は、震えていた。
「先ずは……私達と……合流することを……考えるんだ……」
零の声も。
震えていた。
その判断が。
正しいと分かっていても。




