第四十三章
「平井隊長、ちょっと来てもらえますか?妖魔の血らしきものが、瓦礫の中に続いてるのを発見しました」
平井の隊の、ライフルマンから報告が入る。
「色は…色は、何色だ!」
平井が聞き返す。
平井と零が、振り返り場所を確認する。
「黄色です…。これって…」
2人の位置から約30メートル、2つ先の瓦礫の入り口に立っている隊員の1人は地面を確認し、もう1人が手を上げて場所を教えている。
「直ぐに行く。待ってろ!」
平井と零は、瓦礫の上を駆け足で向かう。
現場には路上の瓦礫から、廃墟内部に点々と粘液質の液体が続いている。
全員に緊張が走る。
零が、廃墟内部に声をかけてみる。
「誰か、居るの?慎一君?聞こえたら、返事して!」
暗い廃墟に、零の声がこだまする。
「……入りますか」
「……慎一君なら、返事をするはずだ」
平井の声は低い。
「それでもしないってことは――」
言葉を、切る。
視線の先。
黄色の血痕は、まるで導くように、暗闇へと続いている。
「……罠かもしれん」
誰も、否定しない。
慎一君は、岡田氏との会話を聞いていて今日、特異隊が来ることは知っている。
さらに、昨晩の『成功作』の襲撃を味わっていたら、助けを求めてくるはずだ。
相手は、まだ、子供なのだ。
しかし…、返事はない。
しかも、特異隊を誘うかのような血痕まで残している。
零の耳に、平井の歯ぎしりする音が聞こえた。
「進むしか…ないか…」
平井が苦い顔で呟く。
「全員に告ぐ。これより、廃墟内部に侵入し、保護対象者の捜索を行なう!ただし……罠の可能性をある!マガジンに持ってきた血液を流し込め!」
異能者を含めた隊員が、ライフルのマガジンに持ってきた輸血用の血液を流し込む。
昨晩の戦闘では、これが上手くいったため、全員に装備させてきたが、絶対の効果を保証するものではない。
詳しいことは研究班の解析を待つしかないが、可能性があるなら、やってみるしかない。
隊員がマガジンに血液を流し込むと、調査班が血液の入っていたパックを回収する。
万が一にも、血の臭いが妖魔を呼び寄せたりしないように。
平井が隊員を見渡し、
「もう一度言う!妖魔を発見しても、勝手に発砲するなよ」
隊員の緊張が、はっきり伝わる。
「特に…4足歩行の妖魔にはな…」
眩しい日差しの下。
廃墟入り口から見る内部は、暗く。
ところどころ、穴や崩れた壁から、直線的な光が差し込んで。
その中は。
魔界のようにも見えた。




