第四十二章
装甲車とトラックが、ゆっくりと停車した。
辺りは、瓦礫のあちこちが黄色く染まっていた。
「全員、降車!」
平井の叫びが、インカムに響く。
トラックの荷台から。
装甲車の後部ハッチから。
完全武装した隊員が、降りてくる。
平井は隊員を見ながら、
「調査班は柴田班長の指示に従え!護衛隊は江崎隊長に従うこと!残りの隊員は、俺と東雲隊長の指示に従うこと!今回は、慎一君及び、元民間人の安否確認、そして保護が最優先だ。妖魔を見かけても、勝手に撃つな!わかったか!」
「了解しました!」
全員が敬礼で答える。
「なお、慎一君は、まだ子供で、銃に対して恐怖心を持ってる。声をかけて、慎一君を驚かさないように!後…通信が途切れる場合があるため、瓦礫には勝手に入らないように」
零が注意を付け加える。
「了解しました!」
「よし、慎一君の捜索を開始する。全員バディ(2名1組)システムを崩すなよ!」
平井の指示が終わると、全員がバディごとに、担当エリアに散っていく。
誰も、黄色の妖魔の血を踏まない。
調査班は、切り離され部位が、別個体として行動した『姉』の肉片を探している。
火炎放射器が当たらず、焼き残った肉片が、まだ、動いている可能性があるためだ。
護衛隊は、調査班を中心に、周囲を警戒している。
「零!」
平井が、零を見ながら呟く。
「特にオマエだ!前回みたいに暴走して、勝手に瓦礫に突入するなよ!」
「はい…」
零も、平井を見て答える。
「とりあえず…昨晩、慎一君らしき妖魔を見たという瓦礫の辺りから調べてみるか…」
「了解です」
平井と零は、昨晩、慎一君らしき妖魔を見たという場所に向かう。
「慎一君!いるなら出てきて!」
「慎一君!昨日のおじさんだ!聞こえてるか」
2人は、廃墟の入り口から、内部に声をかけながら、辺りを捜索する。
しかし…
反応は無かった。
「まいったな…。どこか、別の場所に避難しちまったかな」
平井の呟きに、零が答える。
「慎一君は、昨日の岡田さんとの会話を聞いています。私達が来ると知っているから…避難してても、来てくれると思うんですが…」
「ああ。昨晩の妖魔が…慎一君ならな…」
零が一番聞きたくなかった言葉を平井が口にする。
「最悪の場合…」
平井の言葉に、零の背中に冷たいものが走る。
「これは…俺の思い過ごしだと思うんだが…。昨晩の『成功作』より上の『成功作』が完成していて。その『より上の成功作』が、『成功作』の力を見るために、教えたとしたら…」
平井の言葉を聞いた零は、眩しい廃墟の中にいる自分達が、妖魔の口の中にいる気持ちになっていた。




