第三十四章
「なんだ…。お姉ちゃんも、大したことないな…」
男の子が、ぽそりと呟く。
異能隊は、ランチャーの爆発で吹き飛ばされた『姉』の身体に死人まで出しながら、苦戦していた。
『弟』は、それを見ているだけだった。
笑いながら。
『姉』の残骸に乗っ取られた吉田は、脚を氷雷で貫かれ、立てないようにされた筈だった…が。
今は、氷雷で貫かれた傷口から生えた何本もの触手が脚を覆い、瓦礫を這い、身体を支えて、立ち上がっている。
「お姉ちゃん…もう少しは働いてよ…。じゃないと…このハサミで、ちょん切っちゃうよ」
男の子は、腕のハサミを
『カチリ』
と、鳴らした。
吉田の身体に、変化が生じた。
戦闘服が波打ち始めた。
モゾモゾと…。
戦闘服の下で、何かが蠢いている。
「ライフル射撃!撃てぇ!」
全員の対妖魔ライフルが吉田に銃弾を叩き込む。
吉田の身体に孔が開き、削り取られていく。
そう見えた。
しかし。
吉田の身体の変化は、特異隊の想像を超えていた。
吉田の身体から、何十本…いや…何百本という触手が現れた。
その触手の一本一本が、飢えた捕食者が獲物を探すかのように波打ち。
先端を左右に振り。
そして…。
隊員に狙いを定める。
ヒュン!
ヒュン…ヒュン!
触手が風を切って、隊員に伸びる!
1人の隊員は、瓦礫に身を伏せ、触手の攻撃から逃れたが…。
2名の隊員が触手に巻かれてしまう。
「ぐっ…!…痛っ!」
首に触手が巻き付いた隊員が、声を上げる。
触手には、針のような毛が生えており、その毛が皮膚を貫通して、体内に入り込む。
「うあっ!…ぁぁぁ…」
その針のような毛は…血液を吸い上げる注射器の役目を果たしていた。
腕に触手が巻き付いた隊員も、同じだった。
「いて!」
何十本もの針が腕に差し込まれた痛みに、思わず声を出し、急速に意識が遠くなる。
隊員の身体に巻き付いた触手が紅くなり、巻き付かれた隊員は、血の気を失い、顔が青白くなっていく。
1人の隊員が、ナイフを引き抜き、腕に巻き付かれた隊員を救出しようと不用意に遮蔽物から走り出す。
「止めろ!大菅!」
冨田の声がインカムに響くが、大菅は戻らない。
ヒュン!
触手が風切音をたてて、大菅の胴に巻き付く。
大菅は手にしていたナイフで斬りつけるが、歯が立たない。
「大菅!」
冨田が、大菅に巻き付く触手に、ライフルの銃弾を浴びせるが、細く、波打つ触手に――照準が合わない。
触手に生える針のような毛は、戦闘服を貫通し、肌を貫いた。
大菅の顔色が青白くなっていく。
「大菅!」
冨田の叫びを否定するかのように…。
大菅の手からナイフが落ち、腕が力無く垂れ下がった。
お読みいただき、ありがとうございます。
この話は、何十年も前から、温めていたものです。
時間潰しに読んでいただき、
「面白い」
と、思っていただければ、嬉しいのですが。
また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。




