表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒き神と、願いの星  作者: 相田 依人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/78

第三十一章

 振り降ろされた爪は、神速ではあったが、隊員に当たらなかった。


 しかし。



「えっ…」

 


 一瞬の間。


 隊員の横腹から深紅の血が吹き出す。


 遅れて、肉が裂けた感覚がした。



 触れていない。



 だが、斬られている。


 


 ——かまいたち。




「うあっ…」


 斬られた隊員が、傷口を抑え、倒れ込む。




 グチュ…




 左腕の爪を振り上げる頭部が、倒れた隊員に近寄り、何本もの触手が隊員の傷口から体内に入り込む。



 隊員は、目を見開き、全身を痙攣させた。



 喰っているのか。


 それとも。


 体内に侵入しようとしているのか。


 

 平石の足元に転がっていた右腕にも、変化が現れる。


 断面から紫色の肉片が蠢きながら出て来て、肉片が開いたと思ったら、その中には、丸い目があった。


 平石が異能を発動する。



 氷雷!



 大気中の水分を一瞬で凍らせ、「姉」の右腕に叩き込む。


 キン!キン!キン!


 硬く、美しい、その音は、爪が氷を弾く音色だった。



 蠢きながら出て来た肉片の数カ所が膨れ上がり、臓器のような表面を貫いて、蜘蛛のような脚が現れ、素早く動き回る。


「平石!距離をとれ!」 


 渕の声がインカムに響く。


 平石は、再度、異能を使う。


 氷雷!


 氷の弾丸が右腕を貫くべく、叩き込まれる。


 しかし。


 目は、爪で守られ、他の部分に当たって紫の血を出しても、動きは止まらない。


 逆に平石は、異能を使うことで、身体が重くなり、動きが緩慢になってきている。


 

「佐伯!平石のフォロー、出来るか」


 冨田がB級異能者の佐伯に叫ぶ。


「出来ます!」


 佐伯が異能を発動する。




 極炎!




 平石に襲いかかっていた右腕が炎に包まれ、のたうち回る。





 冨田の至近距離に転がっていた、左脚にも異変が生じ始める。


 靴が脱げた裸足の足裏にシワが寄り、シワが伸びると、そこには、丸いだけの目が出来ていた。


「こっちもかよ…」


 冨田は下がり、距離を取る。


 足の指が伸びだし、爪は鋭い刃物に変わる。


「隊長、ランチャーを使います!下がってください!」


 隊員の声がインカムに響く!


「バカヤロー!これ以上、敵の数を増やすな!装甲車の砲手、火炎放射器で、コイツ等を焼き払え!」


 冨田が叫び返す。 




 装甲車の砲手が、火炎放射器を取るために、車内に入る。



 左脚は、蜘蛛のような脚を生やし、かかとからは

鋭い歯が生え、チョロチョロと舌を出し始めていた。


 

 丸く、黒い目が、キョロキョロと辺りを見回すと、素早い動きで、冨田に走り寄る。


 



 重力増加!




 ミシミシ……




 あまりの重力に…。


 左脚周囲の空間が歪む。




「ギィィィ……」





 踵が開き、うめき声のような音を絞り出す。




 見えない何かが、左脚の形をした妖魔を地面へ圧しつける。



 あまりの重力に、地面には蜘蛛の巣状の亀裂が走る。




 次の瞬間、グシャリという嫌な音と共に、妖魔は逃れられぬ圧殺の檻に閉じ込められ、押し潰された。




 冨田は、頭痛に襲われながら、紫の液体をばら撒いたアスファルトを見ていた。

 

 火炎放射器を持った隊員が冨田に近寄る。


「焼き払いますか?」


「ああ…。特に肉片を残さず焼き払ってくれ…」


 2名の隊員が、冨田の「重力増加」によって、押し潰された左脚と肉片、紫色の血液に火炎放射器を向ける。


 特殊燃料のテルミット・ゲルを使用した炎が肉組織に潜り込み、2000度以上の燃焼温度で妖魔を細胞から焼き払う。




「渕隊長!あれを!」


 副官の平石が叫ぶ!


 「姉」の頭部から出た触手を体内に侵入された隊員が、だらしなく立ち上がっていた。


 白目を剥き、口を開けたまま涎を垂らし、脇腹から腰にかけて、「姉」の頭部と左腕がぶら下がっていた。


「吉田!」 


 仲間の呼びかけにも、反応を示さない。


 ただ。


 脇腹からぶら下がる「姉」の顔にある目だけが、獲物を探すように、せわしなく動いていた。


 お読みいただき、ありがとうございます。




 この話は、何十年も前から、温めていたものです。




 時間潰しに読んでいただき、



 「面白い」



 と、思っていただければ、嬉しいのですが。




 また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ