第二十五章
その日の夜。
封鎖地区の監視モニターが妖魔反応を感知した。
「妖魔反応出ました。数は…2体」
警戒にあたっていた第1小隊と第14小隊に出撃準備の指令が入る。
第14小隊長の渕が、タクティカルベストを着ながら、
「2体か…なんか…嫌な予感がするな…」
「渕さんも、そう思いますか…最近、2体で来る妖魔とかいなかったから、逆に不気味ですよね」
渕の呟きに、第1小隊長の冨田が返す。
「冨田さん…。今回の妖魔…いつもの妖魔とは違うかも知れませんよ…」
冨田は、苦笑いをしながら、
「渕さん、変なフラグ立てないでくださいよ」
引きつった笑顔で答える。
「妖魔、グリッド7310ー4100ポイントで停止…ここって…昼間、平井隊長が定期パトロールで…」
渕と冨田の顔色が変わる。
「ヤバイ!装甲車を出すぞ!」
「ランチャーを載せろ!」
渕と冨田が叫ぶ。
封鎖地区の境界付近では、民間人と建物への被害を考慮し、ランチャー等の大型火器の使用は禁止されているが、封鎖地区内部なら使用許可されている。
「待ってください。出撃命令は、まだ出ていません。今は準備段階です!」
特異隊指揮所でモニターを監視している隊員が叫ぶ。
「バカヤロー!どう考えても、おかしいだろうが!」
「下手したら、取り返しがつかなくなるんだよ!」
昼間の会議に参加していない監視員には、この状況が理解出来ない。
しかし。
渕と冨田の背中には、平井と零が話をした男の存在が、いかにこの後の戦況を大きく変える存在か理解している。
「平井と東雲にも、連絡しろ!今すぐだ!」
渕が通信担当に命令する。
「り…了解…」
隊員がランチャーを装甲車に積み込み、乗車する。
「準備完了。出れます」
冨田の副官、清水が報告する。
「よし!出るぞ」
渕と冨田も、装甲車に乗り込む。
グゥオン!!
装甲車の図太い排気音が、夜の静けさを叩き壊し、辺りの空気を震わせる。
装甲車は、8輪が砂埃を巻き上げ、瓦礫の上を走り出す。
「たのむから…間に合ってくれよ…」
呟く渕のインカムに、監視員からの連絡が入る。
「モニターに複数の妖魔反応!その数…約10…」
「10…?」
冨田が呟く。
「はい。廃墟の中から…出てきてますが…」
監視員の声が、戸惑っている。
渕の胸がザワつく。
廃墟の中から?。
もし…。
岡田氏に、同じような仲間がいたとしたら…。
その仲間が、廃墟で生活しているとしたら…。
もし、成功作が失敗作と判断された岡田氏等を処分しに現れたとしたら…
「まさか…消えてる妖魔反応があるとか言うなよな…」
渕が、嫌な予感を口にする。
「消えてるんです…。蜘蛛の子を散らすような反応をして…」
「クソッ!」
冨田が、装甲車の内側を拳で叩く。
「福留中隊長から、出撃許可が降りました。ランチャーの使用を許可。岡田氏と慎一君の保護を最優先との命令です。民間人…ですか…」
「……」
通信担当の質問に、渕も冨田も、言葉を詰まらせる。
「福留中隊長に、現状を報告しろ!複数の妖魔反応が廃墟から出てきて、消えていく反応もあるとな!」
渕がインカムに叫ぶ。
「現場到着まで、約3分…」
インカムにドライバーからの声が入る。
「第1小隊ならび、第14小隊の全員に告ぐ。今回の任務は特定の妖魔を保護することにあり。俺か冨田隊長の指示する妖魔以外への攻撃は許さん!わかったな!」
渕がインカムに怒鳴る!
しかし。
渕と冨田は、困惑していた。
岡田氏と慎一君は、動画で見たから見分けられる。
しかし。
それ以外は…。
妖魔との戦闘状態の中で…。
正確に見極めが出来るだろうか…。
「現場到着まで、1分…」
ドライバーの声が、戦場に入ったことを伝える。
「妖魔反応ロスト(消失)!廃墟の内部に入ったものと思われます」
「全員、ランチャーを所持しろ。無闇に撃つなよ…」
指揮官としての重圧が、渕の胸を締め付けていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
この話は、何十年も前から、温めていたものです。
時間潰しに読んでいただき、
「面白い」
と、思っていただければ、嬉しいのですが。
また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。




