表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒き神と、願いの星  作者: 相田 依人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/78

第二十三章

「これからの会話は、録画させてもらいます。あなたからしたら、気乗りしないかも知れませんが…。私達も仕事で、上に報告しなければなりませんので…」 


 零が、男に録画する旨を伝える。


「構いません…。いつかは…この日が来ることを…わかっていましたから…」


 男は慎一を見ながら呟く。


「中林、録画を」


「はい」


 中林は、スマホを出して録画を開始する。


 零が確認し、


「お願いします」


 と男に促す。


「先ずは、名前を教えてもらえるかな?」


 平井が男に問いただす。


「岡田 洋介だ。地震の前は◯◯町に住んでた。この子は慎一。近所に住んでた子供だ」

 

 平井は頷いて洋介に言う。


「詳しく話してもらえるか」



 洋介は、深いため息をつくと、ゆっくりと話し始めた。



「全ては、あの地震からだ…。犠牲者は大勢いた…。けど…生き延びた人も大勢いたんだ…。」


 ライフルマンが周囲を警戒する中、零も、平井も男の話に耳を傾けている。


「みんな…負傷者の救出や、家族の名前を呼んで…そりゃ…地獄みたいだったさ…。

そこに、奴らが来たんだ…」


 四つ足で地面に張りついた慎一は、目を伏せ、顔を背けた。


「奴らは、警察だと言ったんだ…。負傷者の救助は…レスキュー隊に任せて、余震で建物が崩壊する可能性があるから…安全なシェルターに避難しろと…」


 男の表情は。


 思い出したくない。


 許せない。



 それらが、混じりあっていた。



 「みんな…避難したさ。そいつ等に感謝し、礼も言った。」


 零も。


 平井も。


 誰も…喋らない。


「連れて行かれたのは、廃墟の地下だったよ…。暗い…手掘りのようにな通路を歩かされ…。不気味な祭壇らしきものがあった。祈り…呪文…よく分からない言葉を唱えてる奴が何十人もいた…。ここで、おかしいと思ったんだ…。どう見ても公共施設とは違う。明らかに…なんか…良くない場所だと…。説明出来ないが…本能が叫ぶんだ…」


「逃げろと…」




 零は想像していた。


 暗い地下洞。


 壁はコンクリートではなく、岩が剥き出しのまま、露呈している。


 奥から聞こえる悪魔めいた呪いの声。


 そして…


 見えてくる不気味な祭壇らしきもの…


 祭壇の前には、大勢の人間が膝を付き、こうべを垂れて、本能が拒否する呪文を唱えている風景を。


 思わず、鳥肌が立つ。



「ここに入れ…と言われた時は…もう…遅かった…。そこは…鉄格子で逃げられないように作られた…牢屋ろうやだったんだ!」


 最後の言葉は、叫びに近かった。


「奴ら…俺達を押し込め…、一人づつ連れ出したんだ…。帰ってこない奴もいたよ…」


「俺に点滴を打ち…。激しい痛みが全身を襲ったよ…」


「妖魔化する苦しみが、わかるか……肉が裂け、骨が縮み、神経が燃え上がる痛みだった…」


 男の頬に涙が落ちる。


 慎一の嗚咽が聞こえる。


 零は、妖魔化した男の涙に、彼の人間としての悲しみを感じた。


「俺達は…失敗作だったんだよ…。奴ら…俺達を…こんな身体にして…。妖魔のいる瓦礫に置き去りにしやがった…」


 平井が拳を握る。


「本当なんだな…、今の話…」 


 平井が怒りを押し殺して聞く。


「ああ…。好き好んで…こんな身体になる奴がいると思うのか!」


「…くっ…、許せない…」


 零が漏らしたその言葉は、その場にいた全員の気持ちを代弁していた。


「だいたいの事情は、わかった」


 平井が話す。


「だが…、まだ、その話を信用するわけにはいかない」


「ああ…。わかってるよ…。俺の話がでっち上げだと言う可能性があるからな…」


 平井は苦虫を潰した表情になる。


「そのとおりだ。申し訳ない…」


 沈黙が流れる。


「今の話を持ち帰り、上の者と相談させてくれ…」


「君達の立場は理解している。それで構わん」


「なるべく…お前等を保護するようには働きかける。これは約束する」


「ありがとう…」


「明日、もう一度、ここに来る。それでいいか」


「わかった…。しかし…君も来てくれ…。君が居ない場合…私は姿を見せない」


 平井は、


「了解した。また、明日」


 そう言うと、


「よし!パトロールの続きを行なう!この人達の安全を確保するんだ!」



 全員に声を張り上げた。

 


 この時、誰も気づかなかった。


 少し離れた瓦礫の影から、こちらを見ている“何か”の存在に。

 お読みいただき、ありがとうございます。



 この話は、何十年も前から、温めていたものです。



 時間潰しに読んでいただき、


 「面白い」


 と、思っていただければ、嬉しいのですが。



 また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ