第二十一章
零は暗い廃墟の中、逃げるものを追う。
バタン!
ドアを閉めるような音が響く。
零がドアの前に着くと、蝶番の壊れたドアが揺れていた。
零は、ドア脇の壁に身体を付け、外の気配を探る。
音はしない。
気配もない。
静かすぎる。
零は外に出る。
そこは、廃墟の裏口らしき場所だった。
明るい陽射しが零を照りつけ、眩しさに目を細める。
背後から、複数の足音が響く。
「零!」
「ここです。平井隊長!」
平井がドアを押し開け、零の横に並ぶ。
「不審者はどこに行った」
「申し訳ありません。見失いました」
ライフルマンが周囲を警戒する。
「東雲隊長!貴様、俺の命令を無視したな!」
零は、頭を深々と下げる。
「申し訳ありませんでした。もし、子供が妖魔に捕まっていたらと思うと…」
「バカ野郎!単独行動して、これまで何人の異能者が命を落としたと思ってるんだ!」
「はい。申し訳ありません。以後、命令違反は致しません
」
隊員たちの前で叱責され、零は一瞬だけ目を伏せた。
その時。
ガタン!
何かが、崩れる音が響く。
全員のライフルが音のした瓦礫に集中する。
「誰だ!誰かいるのか!」
平井が叫ぶ。
「撃たないで…」
子供の声だった。
零が声をかける。
「大丈夫よ。私達はあなたを助けに来たの」
「嘘だ!僕を撃つつもりなんだ!」
少年は姿を見せない。
「そんなことない…。あなたを守るのが私達の仕事なの…」
しばらく沈黙が続く。
「ほんと…?ほんとに撃たない?」
「ほんとよ。だから、お姉さんと一緒に帰りましょ」
瓦礫の奥で、気配が動く。
平井が、ハンドサインで銃を下げるよう指示する。
瓦礫から、男の子の顔が覗く。
張り詰めていた空気が、一瞬緩む。
「さあ、こっちに来て。一緒に帰ろ」
零は身体を屈め、男の子と一緒の目線の高さにする。
男の子は、不信感を露わにして零を見ている。
「怖かったよね。もう大丈夫だから、出て来て…」
子供がゆっくりと瓦礫から、身を出す。
「うわあぁぁー!」
吉田の叫びは、明らかに恐怖からの叫びだった。
吉田は、ライフルを子供に向ける。
「止めなさい!吉田!」
子供が瓦礫に隠れ、
「嘘つき!やっぱり嘘だったんだ!」
と叫ぶ。
瓦礫から出て来た“子供”は、四本の脚で、地面を這うように歩いていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
この話は、何十年も前から、温めていたものです。
時間潰しに読んでいただき、
「面白い」
と、思っていただければ、嬉しいのですが。
また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。




