第十四章
最後の妖魔が粘糸を振り回す。
建物は瓦礫に変わり、辺りが一気に荒廃していく。
あと一体…
なんとしても…
仕留める。
「装甲車の砲手、妖魔を狙えないか」
零はインカムに叫ぶ。
「脚は瓦礫が邪魔して不可。頭部、胴体なら狙えます」
「やってくれるか」
「了解」
装甲車の機関砲が、妖魔を叩く。
外殻を砕き、紫色の液体が辺り一面に飛び散り、嗅いだことのない異臭が鼻につく。
だが――
妖魔は、まだ動く。
ズシン。
ズシン。
瓦礫を踏み砕きながら、妖魔が歩く。
距離は、二十メートル。
粘糸がうねる。
ブォン!
空気を裂く音。
零は咄嗟に横へ飛んだ。
直後、背後の瓦礫が粉砕される。
衝撃で地面に転がる。
肺から空気が抜けた。
「東雲隊長!」
インカムから誰かの叫び。
零は歯を食いしばり、起き上がる。
ランチャーを構える。
だが。
粘糸が、再び唸りを上げた。
パァァァン!!
パァァァン!!
二度。
三度。
逃げ場を塞ぐように振り下ろされる。
粘糸が引き起こすソニックブームが、零を襲う。
零の頬から血が垂れる。
「くっ…!」
零は瓦礫の陰に転がり込む。
その時。
肩に掛けていたランチャーが、抜け落ちる。
しまった…!!
ランチャーまで3メートル…
取りに行こうとするが、唸る粘糸が邪魔をする。
そして…
ガシャーーン!!
音速を超えるスピードの粘糸が、瓦礫と共にランチャーを叩き折る。
「そんな……」
限界まで戦ってくれた…
恵子
千々和隊長
そして…
岡崎…。
宮岡も、限界を超える戦いをしてくれた…
なのに…
私は…
みんなの期待に応えられなかった…。
いや…
まだ、戦える…
零の瞳に『希望』と『覚悟』が宿る。
一度だけ、
深呼吸をした。
妖魔を睨む。
空間切断!!
一瞬――
妖魔の動きが止まる。
首は落ちない。
失敗した…?
次の瞬間。
妖魔の頭部がゆっくり傾いた。
紫色の液体を噴き上げながら、頭部が瓦礫の上に落ちる。
……倒した……
自衛隊と特異隊の隊員が遮蔽物から立ち上がり、喜びの声を上げる。
それは地鳴りのように、零の耳に入った。
「やりましたね、東雲隊長!」
「妖魔をやっつけましたよ!」
隊員からの叫びがインカムから入る。
薄れゆく意識の中で、歓声を聞きながら、零の身体は瓦礫の上に倒れ込んだ。
お読みいただき、ありがとうございます。
この話は、何十年も前から、温めていたものです。
時間潰しに読んでいただき、
「面白い」
と、思っていただければ、嬉しいのですが。
また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。




