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革命勇者  作者: 春風英人
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第六話 勇者式典

第六話です。


色々あり転生してきた主人公ですが、異世界の人達はそんなことを気にしてくれません。


異界に転生して初めての朝から始まります。

朝。


目を覚ますと、見慣れない天井が視界に入った。


夢じゃなかったらしい。


少しだけため息を吐く。


昨日だけで色々ありすぎた。


異世界転生。


勇者召喚。


魔獣との戦い。


そして――人の死。


ベッドから起き上がったところで、部屋の扉が叩かれた。


「勇者様。起きていますか」


フィアの声だった。


「起きてる」


「では準備をお願いします。本日は式典があります」


「あー……」


そうだった。


昨日、王が言っていた。


勇者誕生の式典。


気は進まないが仕方ない。


俺は身支度を整えて部屋を出た。


「おはようございます」


「おはよう」


フィアと並んで廊下を歩く。


途中でふと聞いた。


「なぁ」


「なんでしょう」


「昨日死んだ人もいたよな」


フィアは少しだけ黙った。


「なのに今日は式典なんだな」


数秒。


沈黙。


そして。


「だからです」


「ん?」


「人は死にます」


フィアは前を向いたまま言う。


「魔獣に殺されます」


「魔王軍にも殺されます」


「明日生きている保証はありません」


淡々とした声だった。


だからこそ重かった。


「だから人は希望を求めます」


「勇者に?」


「はい」


フィアは頷く。


「勇者は強いからです」


その答えは妙にシンプルだった。


けれど。


この世界では、それが何より大切なのかもしれない。



王都中央広場。


そこには想像以上の人が集まっていた。


見渡す限り人。


人。


人。


「多っ!」


思わず声が出る。


フィアが小さく頷いた。


「近隣の村からも来ています」


「勇者様を見に」


勘弁してほしい。


広場中央には演台が設置されていた。


その上に王レグルスが立つ。


やがて王が前へ出た。


「民よ!」


歓声が止む。


「昨日、この王国に新たな勇者が降臨した!」


大歓声。


王は続ける。


「勇者は我が国の希望である!」


「王国の未来である!」


「我らは再び繁栄するだろう!」


民衆が沸く。


だが。


なぜだろう。


少しだけ違和感があった。


勇者。


王国。


未来。


そんな話ばかりだった。


魔王の話はほとんど出てこない。


気のせいだろうか。


「では勇者からも一言いただこう」


「え?」


聞いてない。


全員がこっちを見る。


無理だろ。


俺は渋々前へ出た。


「えーっと」


静寂。


「その……」


さらに静寂。


終わった。


そう思った。


「頑張ります」


数秒。


沈黙。


そして。


『うおおおおおおおお!!』


大歓声。


なんでだ。


何も言ってないぞ。


「勇者様ぁ!」


「応援してます!」


「頼んだぞ!」


意味が分からない。


隣でフィアが小さくため息を吐いた。


「結果的には成功ですね」


「そうなのか……?」



式典終了後。


城へ戻る途中。


見覚えのある人物を見つけた。


司祭ユーラだった。


「あ」


向こうもこちらに気付く。


「勇者様」


「司祭さん」


「ユーラで構いません」


相変わらず丁寧な人だ。


「忙しそうだな」


「式典の後処理がありますので」


少し疲れているようだった。


そういえば。


一つ聞きたいことがあった。


「革命」


ユーラの表情が少し変わる。


「何か分かったか?」


少しだけ沈黙。


そして首を横に振った。


「申し訳ありません」


「やはり記録にありません」


「歴代勇者の資料も確認しましたが」


「革命というスキルは存在していませんでした」


やっぱりか。


「ただ」


ユーラが続ける。


「女神様から直接言葉を受けた勇者も確認できませんでした」


「つまり」


「勇者様は全てが前例外です」


全然嬉しくない。


「そうか……」


ユーラは少しだけ苦笑した。


「ですが安心してください」


「分からないことは私も調べます」


「一人で抱え込まないでください」


その言葉は少しありがたかった。



夜。


与えられた部屋へ戻る。


窓の外を見る。


王都にはまだ明かりが灯っていた。


昼の喧騒が嘘みたいに静かだ。


今日は本当に疲れた。


その時だった。


「やぁ」


声がした。


「うおっ!?」


思わず振り返る。


誰もいない。


「……?」


気のせいかと思った。


「こっちだよ」


上から声がする。


見上げる。


窓枠に黒いローブの男が座っていた。


「……」


「……」


魔術師のマーさんだった。


「なんでいるんだ」


「いたからかな」


意味が分からない。


「いつ入った」


「さぁ?」


マーさんは楽しそうに笑った。


「式典見たよ」


「恥ずかしかったんだが」


「歴代勇者の演説より面白かった」


「比較対象がおかしいんだよ」


思わずツッコむ。


マーさんは満足そうに頷いた。


「いやぁ、いいものを見た」


「どこがだよ」


「全部かな」


本当に楽しそうだった。


「勇者って人気者だね」


「疲れるけどな」


「それも英雄の仕事さ」


マーさんは笑う。


相変わらず変なやつだった。


「じゃあまた」


マーさんは窓枠へ腰掛ける。


嫌な予感がした。


「待て」


「ん?」


「ここ何階だと思ってる」


マーさんは少し考えて。


「高いね」


そう言って笑った。


次の瞬間。


ひらりと窓の外へ飛び出した。


「は!?」


慌てて窓へ駆け寄る。


下を見る。


兵士たちが普通に歩いている。


それだけだった。


マーさんの姿はどこにもない。


「……なんなんだあいつ」


呆れたように呟く。


返事はない。


明日からは訓練。


少しでも強くならなければならない。


勇者として。


この世界で生きていくために。

読んでいただきありがとうございます。


今回は戦闘回ではなく、勇者という存在についての回でした。


王国にとって勇者は希望。


ですが主人公本人は、まだ勇者になった実感がありません。


その温度差も少しずつ描いていけたらと思っています。

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