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革命勇者  作者: 春風英人
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第五話 勇者の仕事

勇者になった初日。


魔獣との戦いを終えた英司を待っていたのは、歓声と感謝の言葉だった。


だが、この世界はそんなに優しくない。


第五話、よろしくお願いします。

「勇者様だ!」

「助かった……!」

「ありがとうございます!」


歓声が響く。

助けられた住民たちは涙を浮かべながら頭を下げていた。


けれど。


俺は素直に喜べなかった。


少し離れた場所では、

兵士たちが遺体を運んでいる。

最初に襲われた兵士だ。

白い布が静かに掛けられる。


「……」


東通りでも同じだった。


フィアが助けた人もいた。

俺が助けた人もいた。


でも。


間に合わなかった人もいた。


「勇者様」


隣でフィアが口を開く。


「どうしましたか」


「いや」


俺は遺体を見る。


「こういうの、よくあるのか」


フィアは少しだけ考えた。


「魔獣の襲撃ですか?」


「ああ」


「月に数回はあります」


思わず顔を上げる。


「そんなにか?」


「今回は王都ですから」


フィアは静かに言う。


「被害は少ない方です」


少ない。


目の前で人が死んでいるのに。


この世界では少ないらしい。


「だから勇者が必要なんです」


その声は変わらず淡々としていた。


「魔王軍との戦いは今も続いています」


「……そうか」


少しだけ沈黙が流れる。


その時。


「気に病む必要はありません」


フィアが言った。


「あなたがいなければ、もっと多くの人が死んでいました」


「でも助けられなかった」


フィアは少しだけ目を伏せた。


「私は王女です」


「うん」


「ですが、誰も救えません」


意外だった。


「剣しか振れませんから」


フィアはそう言った。


その横顔はどこか寂しそうに見えた。



しばらくして。


王都の警戒態勢は解除された。


兵士たちが後処理を始める。


「勇者様」


「ん?」


「城へ戻ります」


「もういいのか?」


「はい」


「他は?」


「騎士団と兵士が対応します」


フィアは周囲を見る。


「勇者様が全てを背負う必要はありません」


その言葉に。


少しだけ肩の力が抜けた気がした。



城へ向かう途中。


城門付近が妙に騒がしかった。


「見たか!?」

「勇者様が魔獣を一撃だぞ!」


兵士たちが興奮している。


「歴代勇者以上じゃねぇか?」

「それは言い過ぎだろ!」


そんな会話が聞こえてきた。


その時だった。


「まぁ勇者なんだからな」


別の声が混ざる。


振り向く。


そこにいたのは若い男だった。


日に焼けた髪。

傷だらけの革鎧。

腰には小さな盾。

そして肩には片手斧を担いでいる。


冒険者だろうか。


「お、レオじゃねぇか!」


兵士が声を上げる。


「依頼帰りか?」


「ああ」


レオと呼ばれた男は軽く手を上げた。


「聞いたぞ」


「勇者様が魔獣を倒したんだってな」


「一撃だぞ!」


兵士が興奮気味に言う。


だが。


「そうか」


レオはそれだけだった。


「なんだよその反応」


兵士が笑う。


するとレオは城の方を見る。


「勇者なんだろ?」


「なら強くて当然だ」


そして。


「俺ももっと強くならねぇとな」


そう呟いた。


兵士たちが笑う。


「お前は相変わらずだな」

「比較対象がおかしいんだよ」

「勇者だぞ?」


レオは肩を竦めた。


「だからだろ」


当たり前みたいに言う。


俺は少しだけその男を見た。


嫌な感じはしない。


むしろ。


本気で強くなりたいと思っている人間の顔だった。


その時。


レオがこちらに気付く。


一瞬だけ目が合った。


「……」

「……」


数秒。


それだけだった。


レオは何も言わず歩いていく。


「知り合いか?」


俺が聞くと。


フィアは首を横に振った。


「いえ」


「ですが有名な冒険者です」


「強いのか?」


少しだけ考えて。


フィアは答えた。


「努力家ですね」


「それ評価になってるか?」


「なっています」


真顔だった。



城へ戻ると。


すぐに謁見の間へ通された。


玉座には王レグルスが座っている。


「見事だった」


王は静かに言った。


「初陣とは思えぬ働きだ」


「どうも」


「民の間でも既に話題になっている」


王は満足そうに頷く。


「勇者の存在は希望となる」


またその言葉だった。


希望。


この世界に来てから何度も聞いている。


「明日」


王が続ける。


「式典を開く」


「式典?」


「勇者誕生を民へ知らせるためのものだ」


俺は少し首を傾げた。


「そんなの必要なのか?」


「必要だ」


王は即答する。


「民には希望が必要だからな」


正しい言葉だと思う。


けれど。


なぜだろう。


少しだけ引っかかった。


「訓練などはどうなるんだ?」


俺が聞く。


すると王は頷いた。


「もちろん行う」


「だがまずは勇者を見せることが先だ」


「勇者は国の象徴でもある」


その時。


隣に立つフィアが僅かに目を伏せた。


ほんの一瞬。


本当に一瞬だった。


けれど。


なぜか気になった。



その日の夜。


与えられた部屋へ戻る。


ベッドへ倒れ込んだ。


疲れた。


異世界に来てからまだ1日も経っていない。


なのに色々ありすぎる。


その時だった。


目の前に半透明の文字が浮かぶ。


レベル 2


「お」


思わず声が漏れる。


レベルアップ。


なんだか少し勇者っぽい。


悪い気はしなかった。


「……」


ぼんやり天井を見る。


明日は式典。


その後は訓練。


そしていつか魔王討伐。


まだ何も分からない。


それでも。


少しだけ。


前よりは前を向けている気がした。



王都のどこか。


月明かりの下。


黒いローブの男が空を見上げていた。


「革命、か」


小さく呟く。


歴代勇者の英雄譚。


そのどれにも存在しなかった名前。


「面白い」


ローブの奥で笑う。


「君はどんな物語になるんだろうね」


誰にも聞こえない声は、

静かな夜へ溶けていった。

マーさんの英雄譚メモ①

魔獣について。

魔獣は魔王軍の兵器だ。

狼型もいれば熊型もいる。

もちろんもっと危険なものもいる。


ちなみに今日の相手は弱い方だ。


本当に弱い方だよ。

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