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革命勇者  作者: 春風英人
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第四話 勇者

第四話です。


勇者として初めての戦いになります。


楽しんでいただけたら嬉しいです。


――ゴォォォォン!!


鐘の音が街中へ響く。


人々がざわめき、兵士たちが駆け出していく。


「西門付近に魔獣出現!」

「避難を急げ!」


怒号が飛び交う。


さっきまで平和だった街が、一瞬で戦場みたいな空気になっていた。


「勇者様」


フィアが真っ直ぐこちらを見る。


「どうぞ力をお貸しください」


「いきなりかよ」


「もし魔王軍の魔獣なら、勇者様の力が必要です」


そう言うフィアの顔は真剣だった。


冗談を言っている空気じゃない。


「行こうか」


隣でマーさんが笑う。


「英雄譚の始まりには丁度いい」


「お前、本当に楽しそうだな」


「うん」


即答だった。



西門へ近づくにつれ、悲鳴が聞こえてきた。


「きゃああああ!」


「助けてくれ!」


兵士たちが住民を避難させている。


遠くでは建物が一つ崩れていた。


そして。


「……でか」


思わず声が漏れた。


そこにいたのは狼だった。


ただし。


熊より大きい。


黒い毛並み。


赤い瞳。


口から覗く牙は人間の腕ほどある。


その巨体が兵士を一人吹き飛ばした。


「ぐああああっ!」


兵士が壁に叩きつけられる。


「隊列を維持しろ!」

「囲め!」


だが誰も近づけない。


一歩踏み込むだけで死ぬ。


そんな圧力があった。


「グルルルルル……」


魔獣が低く唸る。


その視線が真っ直ぐこちらへ向いた。


「勇者様」


フィアが小さく言う。


「お気をつけください」


「あ」


「どうしました?」


「俺、武器持ってない」


フィアが固まる。


マーさんが吹き出した。


「勇者くん」


「笑うな」


「いや面白くて」


その時だった。


後ろから兵士が走ってくる。


「勇者様!」


手には一本の剣。


豪華な装飾が施されている。


「国王陛下よりです!」


兵士は息を切らしながら差し出した。


「勇者に授けるため用意されていた剣だそうです!」


「今持ってくるのかよ」


思わず言ってしまった。


兵士も少し困った顔をしていた。


「申し訳ありません!」


「いや、お前が悪いわけじゃない」


剣を受け取る。


重い。


でも不思議と持てた。


「グオオオオオオッ!!」


魔獣が突進してくる。


地面が揺れた。


「勇者様!」


フィアが叫ぶ。


気付けば。


俺は走っていた。


怖かった。


でも。


逃げるという選択肢が浮かばなかった。


魔獣が飛びかかる。


巨大な爪。


俺は反射的に剣を振った。


――ドンッ!!


凄まじい衝撃。


次の瞬間。


魔獣の巨体が吹き飛んでいた。


「……え?」


俺が言った。


兵士たちも言った。


フィアも言った。


「……え?」


魔獣は建物へ激突し、そのまま動かなくなる。


静寂。


数秒後。


「おおおおおおおお!!」


歓声が上がった。


「勇者だ!」

「勇者様だ!!」

「すげぇ……!」


兵士たちが叫ぶ。


フィアですら少しだけ目を見開いていた。


俺も驚いていた。


……強い。


なんだこれ。


筋力測定不能って、こういうことか。


その時だった。


「東通りにも魔獣だ!」


「まだいるぞ!!」


歓声が一瞬で消える。


兵士たちの顔色が変わった。


「なっ……」


振り返る。


遠く。


街の反対側から悲鳴が聞こえた。


「助けて!」


「逃げろ!」


「きゃああああ!」


俺は走った。


全力で。


でも。


遠い。


東通りは思った以上に遠かった。


曲がり角を抜けた先で。


一人の兵士が倒れていた。


胸を引き裂かれている。


その先では。


住民が一人。


血を流して倒れていた。


間に合わなかった。


胸が重くなる。


そして。


魔獣がいた。


今度は狼ではない。


黒い豹のような魔獣。


素早い。


母親が子供を抱きしめている。


逃げられない。


魔獣が飛んだ。


「っ!!」


俺は走る。


だが。


間に合わない。


そう思った瞬間。


銀色の光が横から走った。


――ガキィィィン!!


鋭い金属音。


魔獣の爪が弾かれる。


そこにいたのは。


フィアだった。


「下がってください」


母親を庇うように立つ。


青い瞳は真っ直ぐ前だけを見ていた。


魔獣が再び飛びかかる。


フィアは避ける。


受ける。


流す。


斬る。


一つ一つの動きに無駄がなかった。


力任せじゃない。


積み重ねた技術だった。


俺にはできない戦い方。


「はぁっ!」


剣が閃く。


魔獣の肩が裂ける。


住民たちは呆然と見ていた。


「すごい……」


誰かが呟く。


俺も同じことを思っていた。


格好いい。


純粋にそう思った。


魔獣が怒り狂う。


再び飛びかかる。


今度は俺も間に合った。


剣を振る。


轟音。


魔獣の身体が吹き飛ぶ。


壁へ叩きつけられ、そのまま動かなくなった。


静寂。


そして歓声。


「勇者様だ!」

「助かった!」

「勇者様が倒したぞ!」


住民たちが集まる。


だが。


俺は少し離れた場所を見ていた。


最初に倒れていた兵士。


もう動かない。


その近くには住民の遺体もある。


助けられなかった。


強いのに。


間に合わなかった。


その時。


「ありがとうございます……!」


母親が泣きながら頭を下げた。


俺ではない。


フィアに向かって。


「子供を……助けていただいて……」


フィアは少しだけ目を伏せた。


「無事でよかったです」


それだけ言った。


俺は黙る。


確かに俺は強い。


でも。


今日助かった命は。


きっと。


フィアがいたからだ。


少し離れた場所で。


マーさんが楽しそうに笑っていた。


「なるほど」


誰にも聞こえない声で呟く。


「やっぱり君は面白い」


その言葉だけが、妙に耳に残った。

読んでいただきありがとうございます。


今回はえいじの初戦闘回でした。


そしてフィアも少しだけ活躍です。


次回は今回の戦いの続きからになります。


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