第三話 王国を覆う大結界
リオは丘の上に立ち、両手を空へ掲げた。
七年間の修行が脳裏を駆け巡る。
何万回と繰り返した魔力制御。
何千枚も描いた魔術陣。
師匠に叩き込まれた、魔術の根本原理。
「頼む……届いてくれ!」
リオの足元に巨大な魔術陣が展開した。
青白い光が空へと昇り、山を越え、森を越え、王国の国境まで広がっていく。
やがて、王国全土が透明な結界に包まれた。
王都の人々は空を見上げ、言葉を失った。
「国全体に結界が張られたぞ!」
「いったい誰が……!?」
結界の外では、王国への侵入を企てていた魔物の大群が、見えない壁に阻まれていた。
ーーしかし、そのとき。
大地を震わせる咆哮が響いた。
魔物たちの主――魔王が、自ら姿を現したのだ。
「人間どもめ! 小賢しい結界など、我が力で粉砕してくれる!」
魔王の一撃が結界を激しく揺さぶった。
亀裂が走る。
リオは歯を食いしばり、結界を修復した。
「ここは俺の国だ……! 誰にも壊させない!」
「小僧が! 貴様ごときに何ができる!」
魔王が放った漆黒の炎が、リオへと迫る。
リオは片手を掲げた。
「《魔術分解》!」
炎が一瞬で霧散した。
魔王の目が見開かれる。
「な、何だと!?」
リオは七年間の修行で身につけた技術を駆使し、魔王の魔術を次々と無効化していく。
魔力の量では勝てない。
だからこそ、相手の術式を読み、弱点を見抜き、最小の魔力で最大の効果を生み出す。
それが、リオの戦い方だった。
「俺には、お前みたいな圧倒的な力はない」
リオは魔術陣を展開した。
「だからこそ、誰よりも考えて、誰よりも積み重ねてきたんだ!」
「馬鹿な……! この程度の魔力で、なぜ我の術を破れる!?」
「魔力の量だけが、強さじゃない!」
リオの手から、幾重にも重なった光の魔術陣が放たれた。
「これで終わりだ! 《極光魔導砲》!」
眩い光が魔王を包み込んだ。
轟音とともに大地が揺れ、黒い魔力が消し飛んでいく。
やがて煙が晴れたとき、魔王の姿はなかった。
魔物たちは主を失い、森の奥へと逃げ去っていった。
十七歳の少年は、たった一人で魔王を撃退したのだった。




