第二話 地獄の修行
「立て、リオ!」
「も、もう無理だ……!」
「無理かどうかは、立ってから言え!」
修行は想像を絶する厳しさだった。
朝は日の出前から魔力制御。昼は魔術陣の研究。夜は魔術の理論を叩き込まれ、眠る時間すら惜しむ日々。
魔力が少ないなら、一滴たりとも無駄にするな。
魔術が弱いなら、構造を理解して効率を極限まで高めろ。
才能がないなら、才能ある者が十年かかることを二十年かけて身につけろ。
失敗すればやり直し。手を抜けば最初から。
何度も倒れ、何度も悔し涙を流した。
「師匠……俺、本当に強くなれるのか?」
ある夜、リオは震える手を見つめながら尋ねた。
ゼルガンドは静かに答えた。
「知らん」
「……え?」
「未来など誰にも分からん。だが、ひとつだけ教えてやる。才能がないことは、お前が努力しなくていい理由にはならん」
老人はリオの頭を軽く小突いた。
「お前は何のために強くなりたい?」
リオは顔を上げた。
「誰かが魔物に襲われたとき、助けられる人間になりたい。俺みたいに才能がないって理由で、夢を諦める奴も守りたい」
ゼルガンドは一瞬だけ目を細めた。
「……そうか。なら、明日は今日の倍だ」
「ええっ!?」
「泣き言を言うな!」
こうして七年の歳月が流れた。
リオは才能に恵まれなかった。
しかし、魔術の理論、魔力の制御、術式の構築において、彼の右に出る者はいなくなっていた。
そして十七歳の誕生日。
ゼルガンドは、リオを王国を一望できる丘へ連れていった。
「最後の試練だ」
「何をすればいい?」
「この国を守れ」
リオは目を見開いた。
国全体を覆う結界など、宮廷魔術師が何十人も集まってようやく維持できる大魔術だ。
だが、リオは逃げなかった。
「……分かった。やってみる」




