ハンバーグ
十月の夕方、スーパーの野菜売り場で蒼と合流した。
「今日は何が食べたい?」
聞いてから、自分で笑ってしまった。仕事帰りに誰かと夕飯の材料を買うなんて、半年前は考えもしなかった。
「ハンバーグ」
蒼は待っていたみたいに即答して、目を細めた。
蒼がカートを押し、私は玉ねぎを選んでから合いびき肉とパン粉と卵を入れた。横から蒼が、何も言わずに牛乳とプリンを足す。
「それも買うの?」
「デザートです」
蒼が真顔で言うので、私はそのままにした。
レジに並ぶと、前にいた小学生くらいの女の子が、お菓子を握りしめて母親にねだっていた。
「かわいいですね」
蒼が小さく言った。園で子どもを見ているときと同じ顔だった。
会計を終えると、蒼が重い方の袋を持った。部屋までの道を、二人で並んで歩いた。
キッチンに立ち、玉ねぎをみじん切りにする。
蒼は横でフライパンを出したあと、何をすればいいかわからない顔で手を洗っていた。
「お皿出してくれる?」
蒼が顔を上げて、「はい。何枚ですか」と聞いた。
「二枚。あと、焦げないように見てて」
「責任重大ですね」と言って、蒼は食器棚を開けた。
ひき肉にパン粉と卵を混ぜ、塩と胡椒を振って手のひらで丸める。形は少しいびつだった。
フライパンに並べると、じゅう、と音がして肉の焼ける匂いが部屋に広がっていく。蒼は火加減を見るために、コンロの前へ戻った。
テーブルにはハンバーグとサラダ、みそ汁が並んだ。蒼が淹れてくれたほうじ茶から湯気が上がっている。
向かい合って座り、二人で「いただきます」と手を合わせた。
箸を入れると湯気が立ち、自分で食べたくて作ったものを口に運ぶ向かい側で、蒼も同じものを食べていた。
蒼がハンバーグを飲み込んで、目を細めた。
「おいしいです」
「よかった。初めてデートしたときの、ファミレスのより?」
「……それは、比べるものじゃないです」
そう言いながら、蒼はもう一口食べた。答えないところが答えみたいで、私は笑ってしまった。
食べ終わるころには、窓の外が暗くなっていた。
半年前、莉子からのLINEに返事をしながら、私はどうせまた延期になるんだろうなと思っていた。
蒼が皿を流しに運び、私は冷蔵庫からプリンを二つ出した。
「次は何作ろうか」
そう聞くと、蒼は少し考えてから「オムライス」と答えた。
「じゃあ、今度作ろう」
プリンを一つ蒼の前に置くと、蒼は「はい」と言って、ふたを開けた。




