酷い姉妹と優しい軽薄男
「まったく、神経の図太さだけは、あのデボラって伯爵令嬢のほうがよっぽど性悪女だと思ったよ。
どっちにしろ、こんなに後味のわるい依頼は御免だから、前金を返すと言って金を置いて帰ろうとすると、伯爵令嬢である自分に随分と失礼だって言って引き留めるんだ。
その上、怒っている割には僕に色目を使ってきてね。
許してやるから、自分の専属のヒモになれって言い出してね」
呆れ返りながら話すジュリアン様。
聞いてる皆さんも呆気に取られています。
デボラ様は特に美男子に弱いんですよね。
よく大衆演劇を見に行っては、主役のハンサムな役者の姿絵を買い込んで来たり、顔のいい若い男性を見つけては自分の邸で働かないかと勝手に声をかけたりします。
結局は給料が安いから、みんな相手にはしないけど。
「なんて、恥知らずなの… 信じられない!」
アンネマリー様は大事な家族同然のジュリアン様を侮辱されたようで我慢できないようです。
その気持ちはよく分かります。
デボラ様と言う人はなぜか自分の事をこの国の王族並みにみんなが敬って跪いてくれるはずだと思っている方ですからね。
とんだ勘違い女である事は間違いありません。
「最初はこちらも感情を隠して話を合わせていたんだ、前に会った時はデボラって女だけだったのに、今回は姉だって言う女も一緒だったよ」
「イゾッタ様も一緒にですか!?」
私はびっくりして大きな声を出してしまいました。
きっとあの後私がどうしたか聞きたかったのね。
いや、違うな。きっとジュリアン様に興味があったんだ。
イゾッタ様もデボラ様に負けず劣らず面食いなのです。
「あの日自分達が帰った後のステラの様子を知っているかって聞かれてね」
あら、当たった。
本当に気になっていたのか。
でも、あの人達の事だから、私が泣きべそかいて困っていたと聞きたかった筈。
「ジュリアン兄様は何て答えたの?」
先程までの怒りを抑えつつ平静を保つ為に目の前のお茶を口に持っていくアンネマリー様。
「本当の事なんて教えてやる義理はないからね。
婚約破棄されてここで途方にくれて、泣いていたって言ったら2人して喜んじゃってさ。
あまりに愉しそうにするから、ムカついて文句を言ったんだよ。
もっとあちらの動向を伺うつもりだったのに… ごめんねステラ」
それで先程の話に繋がるのね。
そして予想通り私の惨めな話が聞きたくて2人してやって来たのか。
ジュリアン様も優しいから、人を陥れて困っているのを愉しがるような人達に我慢ならなかったのでしょうね。
あの場に居合わせたのがジュリアン様で本当に良かった。
お読み頂きありがとうございます。
作品制作の励みになりますので、いいねやブックマークをよろしくお願いします。




