恋心
食堂へ行くと、アルフォンス様がラリーと話をしていました。
アルフォンス様は何かアンネマリー様の為にリクエストを出しているようだ。
「こんばんはアルフォンス様」
私は挨拶をして、席に向かいます。
すかさず、ラリーが席をひいてくれました。
「ありがとう、ラリー」
ラリーさんに、もうさん付けはお止めくださいって言われて、ラリーと呼ぶようになったけど、この公爵家を取り仕切る侍従長の方が子爵家に戻れない令嬢より格上だと思うのは私だけかしら?
「お買い物はどうでしたか? 気に入った物はございましたか?」
と後ろからラリーに聞かれる。
「え? ええ はい。
アンネマリー様にすべてお任せしました。私1人ではとても無理ですもの」
と言ってしまいました。
「そうでしたか、帰られた時のステラ様がお疲れの様子でしたので心配致しました」
「私そんなに顔に出ていたのですか? すみません」
貴族としては自分の体調や感情を顔に出すのはご法度です。
出来損ない扱いされます。
「いいえ。ステラ様が顔に出されていた訳ではありません。
私がそう思っただけですよ」
ラリーは私が落ち込まない様にフォローしてくれたのでしょう。
「安心しろ、ステラ。
いくら私が無表情を決め込んでもラリーには読まれる。
こいつのそれは特技だ」
とアルフォンス様がいいます。
「アルフォンス様も?」
「ああ、だから君が感情を隠せていないわけではない」
そう言って私に微笑まれます。
なるほど、本当にラリーが凄いだけと言う事がわかりホッとしました。
で、でもアルフォンス様にそんなにやさしく微笑まれると…
「そ、そうですか」
まずいです。また耳が熱くなるのを感じました。
もうアルフォンス様をまともにみれません。
落ち着かなければ…
アンネマリー様の言っている事は大袈裟なだけ。
アルフォンス様は使用人に対してだってお優しいのだから、勘違いしてはいけないわ。
私は婚約破棄された傷物ですもの。
そう思ったら、自然と気持ちがスーと落ち着きました。
そうだ、子爵家にいた時のような無垢な令嬢てはない。
指一本どころか目も合わせてもらえない婚約者だったとしても、10ヵ月も同じ家に住んでいた上に追い出された惨めな女なのだ。
こんな私をアルフォンス様が特別に思う訳がない。
もう大丈夫。
私は溢れてきた恋心に蓋をする事に成功しました。
蓋の上に置いた重石は思ったよりずっしりと重く私の心に影を落とした様な気がした。
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