無駄な抵抗でした
ナンシーマジック…
確かにこの店に入ってから、ズーと魔法に掛けられているよう。
みんなこんな感じでガブリエル夫人に導かれるように自分のドレスを決めていくのね。
そして私もアンネマリー様とガブリエル夫人の質問に答えていく内に普段着5着、夜会用2着、下着、靴、帽子、手袋、小物まで決められていきました。
断る事もお金を出す事も出来ず、なすがままの状態です。
でも服自体はとても気に入るものになってしまったので、断る気も半減しているのです。
だって、とても素敵なんですもの。
ガブリエル夫人が書いてくれるデザイン画は私と話して、私を見て考えてくれたもの。
色は私の好みを聞いて決めるし、嫌う理由がどこにもないのです。
隣で私の慌てる様子やドレスに惚れ込んでしまって苦悩する様子をみて楽しそうに笑うアンネマリー様。
「ステラ様、観念してください。
今日、あなたの衣装一式を揃えるように言い出したのは公爵であるお兄様なんですから、あなたは抵抗できませんでしょ?」
確かにここへ来る事になったのはアルフォンス様の言い付けだ。
「うぅぅ、はぁー、そうですね」
私は無駄な抵抗をあきらめました。
クスクス笑うアンネマリー様。
私達2人を微笑ましく見ている夫人。
肩の力が抜けるとこの瞬間がとても幸せな時間だと気が付きました。
すべて終わって入れ直してくれたお茶を3人で頂いていた時、アンネマリー様がガブリエル夫人に聞きます。
「あなたのお店がこんな風にお客を試す事にしてもう数年経つかしら?
この頃は無礼なお客も減ったのではなくって?」
「そうですね。当初に比べて数ヶ月に1人2人ってところですかしら…
ああ、そう言えばこの前久しぶりに呆れるような親子が来ましたよ」
夫人が言うには、その貴族の親子はまず何の予約もせずにやってきた。
ある程度の高級店になると来店予約をしたり、常連ならこれから行くと数時間前に先触れを送るものなのだ。
だが、その親子はいきなりお店にやって来て、我が物顔で店内を散々見回し店員に威張り散らしてあれこれわがままを言い始めたそうだ。
どこかの親子みたいだわ…
と私は久しぶりに伯爵家の3人の魔女を思い出しました。




