騒ぎの真相
ジュリアンの話によれば、デボラ様とは知り合いではなく、友達に紹介してもらった割りのいい仕事の依頼主だと言う。
デボラ様と会ったのも仕事の内容を聞いた1度だけで、名前も知らなかったようだ。
「仕事の内容はさ、男を誑かしては金を騙し取っている性悪な貴族令嬢がいる。
自分の弟も被害にあったから、凝らしめたい。
力を貸してくれって。
ほら、俺って顔がいいだろ?
だから、相手を骨抜きにして、手酷く振ってくれって言われたんだ」
なるほど、私は男を騙す性悪女に仕立て上げられてしまったのか…
「でも、君を見た時変だと思ったんだよ。
男に全然慣れてないだろ?
それに男を誑かしているって聞いてたのに、目も合わせてくれないし、全然媚も売ってこないしさ。
だから、試しに手を握ったり、ちょっと馴れ馴れしくしてみたけど、凄く身体を硬直させて嫌がっただろ?
さすがに演技には見えなかったから、ますます疑問が沸いてね。
まずは様子を見てみるかな、と思った矢先にあの騒ぎだろ?
これは何か厄介ごとの片棒担がされたと思ってね」
ジュリアンと言う男はやれやれと言うように大きなため息を吐いた。
「そうだったのね。
ありがとう…デボラ様が言った事を信じないでくれて」
私は自分を騙そうとした男に礼を言った。
だって話を聞けばこの人は仕事を請け負っただけだし、見方を変えればこの人も騙された事になる。
そして今度は私の話をした。
「私はあなたの依頼主であるデボラ様の弟の婚約者でした。
さっき破棄されてしまいましたが…
今日、私はデボラ様が友達に頼まれてある男性にプレゼントを渡す事になっているけれど、予定が入ってしまったから代わりに行ってきて欲しいと頼まれたのです。
それから、必ずその男性からお礼の手紙を貰って来てと頼まれました」
全くの出鱈目の作り話だと知らずノコノコとここまで来てしまった訳よね。
まぁ、変に思ったとしてもデボラ様の言い付けを断れる訳がないから、結果は同じだけど。
どうやら、私に不貞の事実を作りそれを理由に婚約破棄をする計画をたてられたのでしょう。
エドガー様がこの計画を知っていたかどうかは分かりませんが、デボラ様が仕組んだ事に間違いはなさそうです。
彼女1人と言うより、ダートン家の姑小姑三人の企みだろうな。
「10か月前から花嫁修業の名目で婚約者の邸宅で同居していました。
でも、先程邸に立ち入りを禁止されてしまったので事実上、身一つで追い出された事になりますね」
私は自分で言った言葉に少しばかりショックを受けてしまった。
言葉に出したその事実に打ちのめされそうだ。
「実家は子爵家だっけ?戻れないのかい?」
「それが…」
私は言葉に詰まった。
私には実家である子爵家に戻れない理由があるのです。




