3人の魔女
実は1ヶ月前に父親が不慮の事故で他界したのです。
今、家には数年前に再婚した後妻のカミラ様が腹違いの弟といるだけです。
父の葬儀の時に、「もうあなたの父親もいなくなってこの子爵家とあなたは何の関係もないのだから、戻って来ないでね」
と言われて子爵家に残っていた私の私物も全部伯爵家に送られて来ました。
だから、私が婚約破棄されたと実家に泣きついても、義母は邸に入れてくれないでしょう。
その事もあり、途方に暮れていたのです。
「じゃあ、君は婚約者の家にも、自分の実家にも帰れないと言うのか?」
ジュリアンは驚いた顔で聞いてきます。
「ええ、それにあの人達が私に渡してくれたのはこの鞄だけ。
ドレスも宝石も私の財産全てを取り上げられてしまったから、お金に換えられる物も少ないわね」
鞄には普段着とお父様の小さな肖像画と日記帳と数冊の本が入っていました。
どれもお金にならないと思って返してくれたのでしょう。
伯爵家の3人の魔女はお金以外に興味はないのです。
そう、私はこの10か月密かに義母になるジータ様と義姉達を伯爵家の魔女と呼んでいました。
これは安い賃金でこき使われていた伯爵家の使用人達が日頃彼女達をそう呼んでいて、私にもこっそり教えてくたのです。
なぜ私にそんな事を教えてくれたかと言うと、私も使用人達に混じって仕事をさせられることがよくあったのです。
伯爵家の嫡男と婚約をして邸にきたはずの貴族令嬢が自分達と同じような扱いを受けている事に、使用人達は同情し自分たちと同じ様に雑な扱いをうけている私に共感してくれたのでしょう。
私は伯爵家の人達よりも使用人達と仲良くなりました。
伯爵家に住むようになってすぐにジータ様に呼ばれてこう言われました。
「これからはいろいろ用事をこなしてもらいます。
これはこの伯爵家の女主人になるための訓練ですから、口答えなどせず黙って従って頂きます」
そして侍女が着そうな色の濃いワンピースを渡されました。
そして子爵家が用意した私の準備金も取り上げられました。
それ以外にも子爵家から伯爵家に援助金として多額のお金が毎月送られていたはずです。
あの3人はいつもそのお金を何に使うか話しては騒いでいました。
そんな母親と姉に何一つ文句を言えないエドガー様。
私達は婚約者になったにも関わらず2人だけで話した事もなく、それどころかエドガー様は私を見ようともしない方でした。
私はそんなエドガー様とこの先夫婦になる未来など、想像も出来ませんでした。
だからまだ父が生きていた頃、1度婚約を解消出来ないか頼んだ事がありました。
しかし父は父で伯爵家と婚姻関係になる事を周りにアピールして事業を有利に進めていたらしく、聞き入れてはもらえませんでした。




