ナンシー・ガブリエルの店
馬車が止まったので、どこかに着いたようです。
「アンネマリー様、ついたようですよ」
私はまだ憤慨するアンネマリー様の気を逸らす様に馬車が到着した事をわざと大きな声で知らせました。
「あら、ステラ様に今日はとっておきの方を紹介しますわ」
そう言うと開いたドアから颯爽と降り立つアンネマリー様。
彼女に続いて馬車を降りると、そこはなんとこの国一と言われるナンシー・ガブリエルのお店でした。
ナンシー・ガブリエルの店は王室御用達でもあり、デザイナー兼店主のガブリエル夫人に直接会う事が出来るのは、王妃、王女の他は数人の限られた高位貴族の夫人や令嬢だけと言われている上、お店を利用出来る人も選ばれた貴族のみだとか。
私には一生縁のない所だと思っていました。
「あの、アンネマリー様。
ここは選ばれた貴族のみ入れるお店ですよね?
私の様な者が来る場所ではないと思うのですが…」
「何を言っていますの?
ステラ様は我が家のお客様なのですよ。
それにガブリエル夫人と公爵家は昔からの付き合いですから、何も心配はいらないですわ」
そう言うとアンネマリー様はお店に入るように促します。
私は恐縮しながら、おずおずとお店へ足を踏み入れれば、そこは見た事もないほど、きらびやかで色とりどりな色彩が織り成す世界でした。
とても大きなお店のフロアは色のグラデーションが出来る様にドレスが並べられた場所があったり、いくつかのトルソーにかけられたドレスがまるで踊っているように飾られてあったり、
天井から数え切れないほどの帽子が吊るされていたり、右を見ても左見ても色!色!色!
こんなに凄いお店は、見たことがなかった。
私は腰が抜けるかと思うほど呆気にとられて大きな口を開けてポカーンとしてしまった。
「ステラ様? 大丈夫ですか?
ステラ様!」
腕を掴まれて我に返る。
「はっ! す、すいません
雰囲気に飲まれてしまって…」
「初めて来られる方は皆そうですわ。
それがガブリエル夫人の狙いですもの」
とアンネマリー様は面白そうに笑った。




