ステラのドレス
「そうだ、アンに頼みがあるんだ」
とアルフォンスがお茶のカップを持ち上げながら言った。
「何かしら?」
兄の言葉を聞いて愛くるしく瞳で見返しているアンネマリー。
「ステラの衣服の事さ。
彼女には公爵家にある予備の物をアンナに用意させているんだが数点の物以外は要らないと言うんだ。
それも凄くシンプルで色も地味なものばかり選ぼうとするのも困ったところでね」
ステラは公爵と晩餐をする用に三着。
部屋着用の服二着をずっと着回していた。
アンナがいくら言ってもこれ以上は贅沢過ぎる。
私は居候している身だからと言うのだ。
それに部屋にいる時なら自分の手持ちで十分だと思っていた。
アンナからそれを聞いていたアルフォンスはその解決をアンに頼んだのだ。
女性の事などよく分からないアルフォンスから見てもステラの格好は若い女性の着るドレスにしては地味に見えた。
しかも彼にとっては女性の衣服の事など口出しし難い話だからアンの帰省は渡りに船だった。
「そう言う事ね。お兄様私に任せて」
それを聞いたアンネマリーは直ぐに理解して胸を叩き、アルフォンスの肩の荷を下ろしてくれた。
「あの、私の事は大丈夫です。
何も不自由しておりません。
これでも私には十分過ぎるほどのご厚意に甘えているですから」
ふたりのやり取りを聞いていたステラはあたふたと慌てている。
「だめよ。 我が家がお客様を十分もてなす事が出来ないと思われてしまうわ。
ステラ様は何も気にせず私にまかせて。
アンナ、ガブリエル夫人に来て貰ってもいいんだけど… いろいろ見たいからこちらから行くわ。
お店に連絡してくれる?」
「かしこまりました。お嬢様」
そう言ってアンナは満足そうに部屋を出て行った。
アンナとしてもアルフォンス同様にこの問題の解決を願っていたのだ。
「そう言う訳だから、ステラ様午後からお出かけよ。
後で部屋に迎えに行くわね。
さて、私は一旦部屋に戻ってこれからの事をどうするか、頭を整理するわ」
そう言うと、アンネマリーも部屋を出て行ってしまった。
ステラはアルフォンスを情けない顔をして見る。
「ぷっ、ステラなんて顔をしているんだ。
大丈夫、アンにすべて任せておきなさい。
これは命令だよ。嫌はなし」
「アルフォンス様… そんなぁ」
さすがのステラも公爵令嬢であるアンネマリーに向かって侍女に言うように嫌とは言えない。
まな板の上の鯉の心境だった。
お読み頂きありがとうございます




