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前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


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第93話 夜間の採取護衛

翌日の昼、カケルとリアナはギルドの応接室に通されていた。向かいにはヴォルガンが座っている。


「じゃあ、見せてみろ」


「はい」


カケルは頷いた。


「新しく召喚できるようになったのは、三種類のヤモリです」


「ヤモリ? 壁に張りつくあれか?」


「そんな感じです。まずはこの子たちですね。からし、みかん、おいで」


足元に光が広がり、二匹のヒョウモントカゲモドキが姿を現した。やわらかな黄色と橙の体色が、室内でもよく映える。


ヴォルガンの視線が二匹の尾に落ちる。


「こいつらは?」


「尾に溜めた魔力を、俺に供給してくれます」


「ほう」


「使うと尾が少し細くなりますが、時間が経てば戻るのも確認できています」


ヴォルガンは短く頷いた。


「次を見せろ」


「はい。ダイス、チップ、おいで」


今度は灰色の二匹のオオバクチヤモリが現れた。ずんぐりした体つきに、短い足。カケルが壁際へ手を向けると、二匹はぺたりと張りつき、そのままするりと横へ走った。


「……速いな」


「この子たちは壁や木などに張り付いて動けます。敵の動きを乱すのが得意です」


ヴォルガンは短く頷いた。


「最後に、この子たちです。ミカド、シルク、おいで」


小柄な二匹のクレステッドゲッコーが、部屋の高い位置へ現れた。目元から後ろへ流れるクレストが印象的だ。


「この子たちは、夜に敵を見つけるのが得意です」


ヴォルガンが二匹を見上げる。


「……こいつらがそうか」


「はい」


ヴォルガンは机の上の書類を指先で軽く叩く。


「暗い場所の索敵ができるなら、頼みたい件がある。夜光花という花の採取護衛だ」


「夜光花?」


リアナが小さく繰り返す。


「青い花でな、夜のあいだだけ、うっすら光る。朝になると枯れ、効能が落ちる。摘むなら夜のうちに、花のまま採取せにゃならんくてな」


ヴォルガンは続ける。


「最近は魔物の動き自体が荒い。昼も面倒だが、夜は見通しが悪いぶん、なお厄介だ。薬師だけでは危なくて、見送ることも増えている。このままだと製薬にも響く」


書類を二人のほうへ押し出した。


「わりぃが、今夜さっそく行ってくれねえか?」


カケルは書類に目を落とした。


採取場所は北西の森の縁。湿り気の多い場所で、夜光花はそこで群れて咲くらしい。


「わかりました」


ヴォルガンが短く頷く。


「助かる」


────


その夜、カケルとリアナは薬師の男とともに北西の森の縁へ向かっていた。


男は三十代半ばほどで、背には採取用の籠を負っている。名はハルトというらしい。昼のうちにヴォルガンから話は通してあったようで、こちらを見る目には不安と期待が入り混じっていた。


「本来なら、冒険者に採取まで頼めれば話は早いんですが……夜光花は摘み方が少し特殊でして」


歩きながら、ハルトが小声で言う。


「花弁を傷めると効能が落ちやすいんです。だから、どうしても私みたいな薬師が自分で行くしかなくて」


「それで護衛が必要なんですね」


「はい。最近は昼でも魔物が前より落ち着かなくなっていますし、夜は見通しが悪いぶん、どうしても危険で……」


森へ入る前に、カケルは上を見上げた。


「ミカド、シルク、おいで」


二匹のクレステッドゲッコーが、高い枝へ現れる。


「【夜間索敵】お願い」


ミカドとシルクは、木々の高い場所を静かに移り始めた。


道中もしばらくは何も起きなかった。けれど、頭の奥にはずっと気を張っている感覚がある。


夜の森は、昼とは違う重さで静かだった。


やがて空気が少し変わる。湿り気が濃くなり、足元の草も柔らかくなる。


その先で、暗がりの中に淡い青が点々と浮かんだ。


「……あれね」


リアナが小さく呟く。


夜光花は、膝下ほどの高さに咲く青い花だった。強い光ではないが、淡く光るその光景は幻想的だ。


「綺麗ね……」


リアナの声も自然と小さくなる。ハルトは慎重に籠を下ろした。


「では、私は採取を始めます」


「わかりました」


その間に、からしとみかんも呼び出しておく。


「からし、みかん、おいで」


ヒョウモントカゲモドキたちは、ランタンの明かりの届く場所へ静かに現れた。


リアナもシルバーとラプティを呼び出し、二体はそのまま彼女の両脇に控える。カケルは肩のワサビ君を見やり、さらにキョロとチョロも呼んだ。


しばらくして、頭の奥にナビゲーターの声が響いた。


『対象:ナイトウィーゼルの反応を捕捉しました。前方右、距離三十一メートル、個体数は一、ランクはFです』


カケルはすぐに顔を上げる。


「右前、三十一メートル。一体」


暗がりの奥、低い草がわずかに揺れた。細長い影が木の根元を縫うように走る。イタチ型の魔獣、ナイトウィーゼルだ。


「シルバー、右」


リアナが短く指示を飛ばす。シルバーが音もなく位置を変える。


少しして、また声が響いた。


『対象:ナイトウィーゼルの反応を捕捉しました。前方左、距離二十七メートル、個体数は二、ランクはFです』


「左前、二体」


ハルトの手がわずかに止まったが、すぐにまた花へ向き直る。カケルはナビゲーターの位置情報を追いながら、暗がりの中の木と岩を見比べた。


右は木の幹沿い、左は岩陰。クレスたちの拾っている位置を頭の中で重ね、敵の潜んでいるあたりを絞っていく。


「ダイス、チップ、おいで」


灰色の二匹のオオバクチヤモリが、近くの木の幹と岩に現れる。


「ダイス、右の木を上から。チップは左の岩沿い」


二匹がすぐに動く。もっちりした体をぺたりと張りつかせたまま、木と岩をするりと走っていく。


暗がりにいたナイトウィーゼルが、少しずつ位置を変えた。


「見えたわ」


リアナの声が低くなる。


明かりの端に入った一体へ、シルバーが飛びかかった。短い鳴き声が上がる。もう一体は木の陰に戻ろうとしたが、その手前をダイスが横切り、さらにチップが岩沿いから回り込む。


「キョロ、チョロ、【蜘蛛の糸】!」


カケルの声に応え、二匹のジャンピングスパイダーが左右の低木へ糸を張る。進路を変えたナイトウィーゼルがそのまま引っかかり、動きが鈍る。


「ラプティ、【追い込み】!」


リアナの声に応え、ラプティが地を蹴る。逃げ道を狭められたナイトウィーゼルへ、茶渋が低く走り込んだ。


「茶渋、【爪撃】!」


鋭い爪が走り、一体がその場に崩れ落ちる。もう一体は体をひねって逃れようとしたが、その瞬間にワサビ君の舌が弾丸のように飛んだ。


「ワサビ君、【舌撃】!」


叩き込まれた舌撃がナイトウィーゼルの体を貫き、そのまま動きを止める。


『対象:ナイトウィーゼル(Fランク)の討伐を確認。』


ハルトは一瞬だけ顔を上げたが、すぐにまた花へ手を伸ばした。


そのあとも、索敵結果は途切れずに届いた。


『対象:ナイトウィーゼルの反応を捕捉しました。後方左、距離二十五メートル、個体数は二、ランクはFです』


「後ろ左、二体」


リアナがすぐに向きを変える。


「シルバー、後ろ!」


「ダイス、左の木から。チップはその下の岩沿い」


クレスたちが高い位置から気配を拾い、カケルはその位置を頭の中で追う。ダイスとチップが木と岩を伝って動くたびに、暗がりの中の影がじりじりと位置を変える。


「ラプティ、前へ!」


ラプティが飛び出し、進路を狭める。明かりの近くまで出された一体へ、シルバーが飛び込み、もう一体は 巨大化したワサビ君の舌によって絡め取られた。


そのまま大きく開いた口へ収まり、ほどなくして、口元から小さな魔石がぽろりと落ちた。


ハルトの籠の中には、青い花が少しずつ増えていくが、採取はまだ終わらないようだ。


カケルはからしとみかんへ視線を向けた。


「からし、みかん、【魔力備蓄】お願い」


二匹の尾が、かすかに光る。


じわりと、体の奥に魔力が戻ってくる感覚があった。視線を落とすと、尾はやはり少し細くなっている。


すぐにナビゲーターへ意識を向ける。


『ヒョウモントカゲモドキの尾部備蓄魔力を消費しています』


『尾部完全回復予測時間:約二十二分です』


その通知を受け取ったところで、また新しい反応が入る。


『対象:ナイトウィーゼルの反応を捕捉しました。前方正面、距離二十九メートル、個体数は一、ランクはFです』


「正面、一体」


暗がりの奥で草が揺れた。


「チョロ、右。キョロ、左」


二匹の糸が低く張られる。


そこへダイスが木の幹を走り、チップが岩から降りる。クレスたちの索敵結果を追いながら動くオオバクチヤモリたちは、暗がりの中の相手を正確に明かりのほうへずらしていく。


明かりの外縁まで出てきたナイトウィーゼルへ、ラプティが先に圧をかける。逃げた先には糸がある。


動きが鈍ったところへ、ワサビ君の舌が伸びる。ナイトウィーゼルの姿はそのままワサビ君の口元へ消え、少し遅れて魔石だけが地面に転がった。


『対象:ナイトウィーゼル(Fランク)の討伐を確認。』

『召喚獣:ヒョウモントカゲモドキのレベルが4に上昇しました』

『召喚獣:オオバクチヤモリのレベルが4に上昇しました』

『召喚獣:クレステッドゲッコーのレベルが3に上昇しました』


その通知が響いた直後だった。


「終わりました!」


ハルトが最後の一輪を籠へ収め、ほっと息をつく。カケルは周囲へ意識を巡らせたが、それ以上の通知は来なかった。


「よし、こちらも、もう大丈夫みたいです」


ハルトは籠を抱きしめるようにして、何度も頷いていた。


「ありがとうございます……これだけ採れれば、しばらくは持ちます」


帰り道は、行きよりも少し軽かった。


採取を終えたことで気持ちに余裕が出たのか、ハルトの足取りも落ち着いている。ミカドとシルクが高い位置を見て、ダイスとチップが木や岩を伝い、シルバーとラプティが明かりの近くを固める。


森を抜け、街の灯りが見え始めたところで、リアナが小さく息をつく。


「すごいわ。ちゃんとみんな噛み合ってた」


「うん」


カケルも頷いた。


「バクチたちも、クレスの索敵があると動かしやすい」


「ええ。位置がわかるだけで、かなり違うわ」


カケルは少し笑った。


「うん。昨日よりもちゃんと知れたよ」


夜光花の青い光が、籠の隙間からまだわずかに覗いていた。

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


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