表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/97

第92話 役割を探る

翌朝、ギルドへ向かう道すがら、カケルは昨日見たヤモリたちのステータスを頭の中でなぞっていた。


ヒョウモントカゲモドキは【魔力備蓄】と【尾囮】。

オオバクチヤモリは【すり抜け】と【壁走り】。

クレステッドゲッコーは【夜間索敵】と【樹上跳躍】。


リアナがちらりと横目で見る。


「ヤモリたちのこと、考えてるでしょ?」


「うん……あの子たちのスキルって、使いどころを選びそうだなって。だから、いくつかレベルを上げるためのやり方を考えてみたんだ」


「実戦でいけそう?」


「ある程度はね。あとは、危なくない形で確かめたい」


「じゃあ、その条件に合いそうな依頼を見に行きましょう」


ギルドに着くと、朝の掲示板の前はいつものように賑わっていた。


カケルは依頼票を順に見ていく。その中で、一枚の依頼票に目が止まった。


「ロックサーバルの討伐か」


リアナも隣から覗き込む。


「ランクD。岩場沿いの林道で、荷運びの邪魔をしてるみたいね」


「飛びかかってくるタイプか」


「ええ。岩や木を使って動くって書いてあるわ」


ロックサーバルは、岩場を好む山猫型の魔獣だ。足場の悪い場所でも身軽に動き、岩棚や木の幹から飛びかかってくる。数は多くなくても、地形が合うと厄介になる。


カケルは小さく頷いた。


「これなら、ちょうどいいかもしれない」


受付で依頼票を渡すと、ミアが確認してから顔を上げた。


「ロックサーバルですね。三体目撃されています。林道沿いなので、上からの飛びかかりに気をつけてください」


「ありがとうございます」


依頼票を受け取り、二人はそのまま街の外へ向かった。


現地は、切り立った岩壁と細い林道が続く場所だった。片側はごつごつした岩場、反対側は低い木々と根の張り出した斜面になっている。


リアナが周囲を見回す。


「たしかに、上から来られたら面倒ね」


「うん」


まずはいつも通り、カケルがピー太郎たちを呼ぶ。


「ピー太郎たち、【索敵】お願い」


四羽のキンカチョウが木々の間へ散った。


少しして、頭の奥にナビゲーターの声が響く。


『対象:ロックサーバルの反応を捕捉しました。前方上、岩棚付近、個体数は二、ランクはDです』


『対象:ロックサーバルの反応を捕捉しました。前方右、木の幹付近、個体数は一、ランクはDです』


リアナが目を細める。


「三体、揃ってるわね」


リアナはシルバーを呼び、続けてラプティを出した。カケルも茶渋を呼び出す。


岩棚の上から、灰褐色の影がこちらを見下ろしていた。少し離れた木の幹にも、もう一体張りついている。


カケルはそこで後方に二匹を呼ぶ。


「からし、みかん、おいで」


ヒョウモントカゲモドキたちが、カケルのすぐそばに現れた。


「シルバー、右! ラプティ、【追い込み】!」


リアナの声に合わせて、シルバーが低く構え、ラプティが地を蹴る。


最初の一体が岩棚から飛びかかった。シルバーが迎え撃ち、ラプティが横へ回り込んで退路を狭める。


もう一体が木の幹から降りようとしたところで、カケルは短く指示を飛ばした。


「ダイス、チップ、おいで。【壁走り】」


二匹のオオバクチヤモリが、岩壁と木の幹へ現れる。もっちりした体つきのまま、ぺたりと張りつき、そのままするりと斜めに走る。


木の幹にいたロックサーバルの視線が、そちらへ流れた。


「ダイス、【すり抜け】!」


飛びついたロックサーバルの前で、ダイスが剥がれた皮だけを残すように位置をずらす。魔獣の前脚が空を切り、体勢が崩れた。


「茶渋、行って!」


黒い影が低く走り、横合いから鋭く爪を振るう。短い悲鳴が上がった。


もう一体が岩壁沿いに逃げようとする。


「チップ、【壁走り】!」


チップが先に岩肌を駆け、逃げ道の先を横切るように動く。ロックサーバルが進路を変えた、その瞬間。


「ラプティ、【追い込み】!」


逃げ道を塞がれた魔獣へ、シルバーが飛び込んだ。


最後の一体はシルバーとラプティの前でじりじりと間合いを測る。


その間に、カケルはからしとみかんへ視線を向けた。


「からし、みかん、【魔力備蓄】お願い」


二匹の尾が、かすかに光を帯びた。その直後、カケルの中に、じわりと魔力が戻ってくる感覚が広がる。


視線を落とすと、からしとみかんの尾がさっきよりわずかに細い。


すぐにナビゲーターへ意識を向ける。


『ヒョウモントカゲモドキの尾部備蓄魔力を消費しています』


『尾部完全回復予測時間:約二十四分です』


その通知を受け取ったところで、最後のロックサーバルがラプティの脇を抜けようとした。


「シルバー、左! ラプティ、前!」


二体が同時に動く。動きを止められたロックサーバルへ、茶渋が横から入り込んだ。


「茶渋、行って!」


茶渋の一閃。ロックサーバルは地面に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。


『対象:ロックサーバル(Dランク)の討伐を確認。』


『召喚獣:ヒョウモントカゲモドキのレベルが3に上昇しました』


『召喚獣:オオバクチヤモリのレベルが3に上昇しました』


静けさが戻る。


リアナはシルバーとラプティを順に撫でた。


「お疲れさま」


カケルはからしとみかんを見下ろす。尾はまだ少し細いが、もうわずかに戻り始めているようにも見えた。


それから視線を上げると、ダイスとチップは何食わぬ顔で岩壁と木の幹に張りついていた。


依頼を終えて街へ戻った頃には、もう日が傾き始めていた。ギルドへ戻ると、掲示板の端に夜間の依頼票が何枚か残っている。


その中から、リアナが一枚を抜き取った。


「これ、どう?」


カケルも目を向ける。


「夜の見回り補助か」


「北門近くの畑で、小型魔獣が出てるみたい。討伐そのものは軽いけど、暗くなってからの警戒込みね」


カケルは少し考えてから頷いた。


「うん。クレスたちを見るなら、ちょうどいい」


夜になってから、二人は北門近くの畑へ向かった。


街の灯りが遠く、畑の向こうはかなり暗い。昼間よりもずっと輪郭が曖昧で、木の影も濃い。


カケルは上を見上げた。


「ミカド、シルク、おいで」


二匹のクレステッドゲッコーが、高い杭と木の枝へ現れた。


昼よりも動きが自然に見える。薄闇の中で、目元から後ろへ流れるクレストがいっそう印象的だった。


「ミカド、シルク、【夜間索敵】お願い」


二匹が高い場所を移る。


しばらくすると、頭の奥にナビゲーターの声が響いた。


『対象:ナイトラットの反応を捕捉しました。前方右、距離二十八メートル、個体数は二、ランクはFです』


リアナが目を細める。


「いたわ」


さらに少しして、また声が響く。


『対象:ナイトラットの反応を捕捉しました。前方左、距離三十二メートル、個体数は三、ランクはFです』


「左右に分かれてるのね」


カケルは頷く。


「シルバー、右! ラプティ、左!」


「わかったわ」


リアナが指示を飛ばし、二体が暗がりへ走る。


すぐに短い鳴き声が二つ、遅れて三つ響いた。


『対象:ナイトラット(Fランク)の討伐を確認。』


『召喚獣:クレステッドゲッコーのレベルが2に上昇しました』


カケルは、ようやく肩の力を抜いた。


「なるほど……」


リアナがミカドとシルクを見上げる。


「ヤモリたちの役割?」


「うん。少しだけど……見えてきたかも」


「これまでみたいに、少しずつ探っていきましょう。私も手伝うわ」


カケルはその言葉に頷いた。


からしとみかんは、前に出ずともカケルを支える。ダイスとチップは、壁や木を使ってかく乱する。ミカドとシルクは、夜と高所で索敵する。


強さの形は、みんな違う。でも、その違いがあるからこそ、ちゃんと役目を持てる。


カケルは夜の畑を見渡し、小さく笑った。


────


夜の見回り依頼を終えた頃には、街の灯りもだいぶ少なくなっていた。


北門をくぐって石畳の通りへ戻ると、昼間とは違う静けさがあたりを包んでいる。開いている店はもうほとんどなく、遠くで酒場のざわめきがかすかに聞こえる程度だった。


夜も遅い時間だったが、ギルドの建物内にはまだ灯りが残っていた。遅い依頼の報告や、翌日の準備をしている職員が何人か動いている。


受付にいたミアが、二人の姿を見るなり顔を上げた。


「おかえりなさい。夜の見回り補助も完了ですね?」


「うん。ナイトラットは五体。全部討伐できたよ」


「ありがとうございます」


ミアは手元の書類に目を落とし、手早く記録をつけていく。


「さすがに少し疲れたわ」


リアナが肩を回すようにしながら言うと、ミアがくすりと笑った。


「それでもお二人とも、まだ元気そうに見えます」


「師匠のほうは、途中で新しい子たちの確認までしてたもの」


「新しい子たち?」


ミアが目を丸くした、その時だった。


「……また増えたのか」


低い声が奥から飛んできた。振り向くと、ギルドマスターのヴォルガンが、執務室のほうからこちらへ歩いてくるところだった。


カケルは軽く背筋を伸ばす。


「はい。昨日、新しい子たちを召喚できるようになりました」


ヴォルガンの視線が、じろりとカケルへ向く。


「それで、今日はその確認も兼ねていたわけか」


「すみません、報告が先でしたね……」


ヴォルガンは短く鼻を鳴らした。


「……今、一体何匹になっているんだ……」


カケルは少しだけ視線を上に向ける。頭の中で数をたどり、すぐに答えた。


「えっと……三十匹ですね!」


ヴォルガンの眉間のしわが、わずかに深くなる。ミアも苦笑いを浮かべていた。


けれどヴォルガンは、呆れたように息をついたあと、すぐに表情を戻した。


「新しい召喚獣は、どんなことができる」


カケルは少し考えてから口を開いた。


「夜に敵を見つけるのが得意な子たちがいます。ほかにも、俺の魔力を支えてくれる子とか、敵の動きを乱すのが得意な子とか」


「……夜に索敵できるのか」


ヴォルガンの目が、わずかに細くなる。


「はい。今日の見回りでも使えました」


しばらく考え込むような間があった。それからヴォルガンは低い声で言う。


「なら、明日時間を取れ」


「明日ですか?」


「話だけではわからん。実際に見たほうが早い」


カケルは一瞬、リアナと目を合わせた。


「わかりました」


「明日の昼、応接室を使う。遅れるな」


「はい」


ヴォルガンはそれだけ言うと、踵を返した。残された二人は、しばらくその背中を見送る。


リアナが小さく笑った。


「完全に、何か頼む気ね」


「うん。たぶん、夜向きの依頼だろうね」


「新しい家族、さっそく目をつけられたわね」


「まあ……役に立てるならいいことだよね」


そう答えながら、カケルは少しだけ笑った。


新しい家族たちの役割が少し見えてきた、その直後だ。必要とされるなら、それはきっと悪いことじゃない。

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


本作の他にも、完結済みの作品を公開中です。


■魔王軍、おもてなしの極致 〜聖女の笑顔のために軍予算を「観光」へ全振りしたら、魔界が爆益を上げ始めた件〜

https://ncode.syosetu.com/n1299lr/


■人間嫌いの私は闇の精霊(上級)に転生しました。~見た目が「黒い毛玉」なので無能と罵られましたが、契約主の孤独な侯爵令嬢と共にレベルアップして毒親たちを断罪します~

https://ncode.syosetu.com/n5749lp/


■異世界コンサルはじめました。~元ワーホリマーケター、商売知識で成り上がる~

https://ncode.syosetu.com/n5582kv/


ぜひこちらもお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ