表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/78

第49話 地道な一歩と、深まる絆

湿地帯の地図作りという大変な依頼が一段落し、リスティアの町には相変わらずの穏やかな日常が流れていた。カケルたちは今、その周辺に生息するDランクの小型魔獣『スワンプクロコダイル』の駆除という、地道な依頼を引き受けている。


「シルバー、右。イガの足止めに合わせて」


「ガウッ!」


リアナの声が響く。カケルが指示を出すよりも早く、彼女はシルバーへ的確な合図を送った。イガが喉元を大きく膨らませ、【威嚇】で獲物の足を止める。


その隙を逃さず、シルバーの鋭い爪が三体目の獲物の息の根を止めた。


だが、泥の中にまだ別の気配がある。追い詰められたクロコダイルが激しく泥を跳ね上げ、水底深くへと潜り込んだ。一瞬、シルバーが深追いしようと前脚をかける。


「シルバー、待って! 深追いは禁止だよ」


リアナが鋭く制止すると、シルバーは不満げに鼻を鳴らしながらも、素直に後退した。それを見たカケルが、前線で踏ん張っていたイガへ優しく声をかける。


「イガ、君もこれで三体目だね。予定通り交代だよ、一度下がっておいで」


カケルの言葉に従い、前衛で三戦をこなしたイガが控えの仲間と場所を入れ替わる。その円滑な連携を見て、リアナは安堵の息を吐いた。


「……よし。じったんは今日は後衛で休ませて、残りの子たちで囲い込もう」


カケルはその後ろで、家族たちの様子を静かに見守っていた。瞼の裏には、今もあの日の――粒子となって霧散していく光の残像が焼き付いている。胸の奥に、わずかな冷えが残る。


だからこそ、濡れた手袋の中で指を折る。


(――今日は誰も、強制送還されなかった)


その事実に、カケルは胸の内で深く感謝した。


リアナは一瞬、泥で濁った水面をじっと見つめていた。さっき潜った影が、まだ底の方に潜んでいるような気がした。


「……師匠、今日は私が少し前に出すぎたわね。次はもっとシルバーを待たせる配置にするわ」


戦闘後、リアナが自ら反省を口にする。


「いい判断だったよ。リアナがシルバーを止めてくれたから、ちゃんと交代のタイミングも作れた。おかげでみんな怪我なく終われたんだ」


カケルが微笑むと、リアナは少し照れくさそうに、でも誇らしげに笑い返した。


町への帰り道、声をかける者のほうが多くなっていた。


「カケル、いつもの書類頼むな。隊長もあれが助かるってさ」


門番の騎士隊員は、肩を軽く叩いて詰所へ戻っていった。


「シルバー、今日もちゃんと列に並んでる! えらいね!」


近所の子どもが駆け寄り、シルバーの鼻先で手を振る。シルバーは誇らしげに喉を鳴らし、リアナの横を離れずに行進を続けた。


「北の街道も頼むよ。あんたらが見てくれてると聞くだけで、みんな安心なんだ。……辺境伯様の城では狩猟会があるらしいが、森の手入れはあんたらのほうが丁寧で助かる」


商人は笑って、果物を一つ多く袋に入れた。


家に戻り、カケルはいつものように机に向かう。


鉛筆の先が、紙の上を静かに走る。ノートの隅には、彼が思い描く「いつか建てる自分たちの家」のラフスケッチが描かれている。報酬の数字を書き込むだけでなく、その夢を形にするための準備だ。


「……じったんは水辺が好きだから、ここを少し深くして。イガたちは日光浴が必要だから、このテラスは南向きに大きく取ろうかな」


日当たりの計算や、家族それぞれの居場所を設計図に落とし込む。積み上がる金貨の重みは、ただの数字ではなく、この空想を現実に変えるための確かな燃料だった。


大きな夢まではまだ遠い。けれど、家族との絆はこれ以上ないほど強固になり、自分たちの居場所は少しずつ形になりつつある。


窓の外では、夜の静寂が町を包んでいた。


隣の部屋から、リアナの静かな寝息が聞こえてくる。シルバーの低い呼吸音もそこに混じっている。


カケルはそっと、重みを増した貯金箱に触れた。


「この時間を守るためなら、どれだけでも積み上げられる」


明日も、明後日も、この穏やかな日々を積み重ねていく。カケルはそう決意して、ランプの火を消した。

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


本作の他にも、完結済みの作品を公開中です。


■魔王軍、おもてなしの極致 〜聖女の笑顔のために軍予算を「観光」へ全振りしたら、魔界が爆益を上げ始めた件〜

https://ncode.syosetu.com/n1299lr/


■人間嫌いの私は闇の精霊(上級)に転生しました。~見た目が「黒い毛玉」なので無能と罵られましたが、契約主の孤独な侯爵令嬢と共にレベルアップして毒親たちを断罪します~

https://ncode.syosetu.com/n5749lp/


■異世界コンサルはじめました。~元ワーホリマーケター、商売知識で成り上がる~

https://ncode.syosetu.com/n5582kv/


ぜひこちらもお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ