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前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


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第34話 停滞する日常

リアナに「監視」と称した妨害をされ始めてから数日。カケルのレベリングは、完全に止まっていた。


(……今日も、伸びなし。)


ギルドから戻ったカケルは、自宅のソファに深く身体を沈めた。


依頼はカケル名義なので、リアナが片づけても報酬だけは入る——だからこそ、伸びないのがきつい。


本来なら、遠征で得た感覚を忘れないうちにレベル10を目指し、新しい家族を迎える準備をしたかったのだが、現実は厳しい。カケルが獲物を見つけるたびに、気配がしたと思った時には、もう銀色が駆け抜けている。


レベルが上がらなければ、新しい召喚枠が解放されることもない。


「にゃーん……」


カケルの沈んだ気配を察したのか、茶渋が膝の上に乗ってきた。彼女も連日の「獲物横取り」で鬱憤が溜まっているはずだが、今はそれ以上に、カケルを元気づけようとしているように見えた。大きな身体を丸め、喉を「ゴロゴロ」と鳴らして甘えてくる。


左肩では、ワサビ君が頭に登ろうとせわしなく前足で髪の毛を引っ張っていた。二本ずつに分かれた独特の指で、カケルの髪を細枝のように掴み、よいしょとよじ登ろうとする力が伝わってくる。


普段なら、全ての家族を同時に顕現させ続けるのは魔力消費が激しく、休息時には数匹に絞るのが常だ。だが、連日リアナが一方的に獲物を片付けてしまうせいで、魔力だけが減らないままだった。


減らない魔力を持て余し、今は茶渋やワサビ君だけでなく、ほっぺに四羽のキンカチョウ、さらには二匹のジャンピングスパイダーまで、家族全員を召喚している。狭い室内は羽音と気配で満たされ、まるで小さな楽園のようだった。


家族たちの変わらない温もりに救われる一方で、リアナの執着は精神的な重荷になりつつあった。悪意というより、本人は「守って導いている」つもりらしい。そう思うと、余計にやりづらい。


(このままずっと、目標の土地を買うための貯金も、レベリングも停滞したままだ。何か、彼女と距離を置く方法を考えないとな……)


翌日、カケルがギルドへ顔を出すと、受付嬢のミラから声をかけられた。


「カケルさん、ちょうど良かった。少し難易度の高い『森の深部での希少薬草採取』の依頼が入っているんですけど、受けてもらえませんか?」


「採取……ですか? 討伐ではなく」


「ええ。ただ、場所が場所だけに少々強い魔物が出る可能性があって。索敵が得意なカケルさんにお願いできれば、ギルドとしても安心なんです」


カケルの頭に、採取が主なら戦いたい盛りのリアナは乗ってこないかもしれない——そんな期待がよぎった。


だが、扉を抜けた瞬間、伸びてきた手がカケルの依頼票を狙った。


「ちょっと見せなさい」


「わっ……リアナさん!?」


リアナはカケルが持っていた依頼票をひょいと奪い取ると、鼻を鳴らして内容を一瞥した。


「あら、今日は地味な草むしり? 相変わらず向上心がないのね」


「……リアナさん。今日は採取依頼なので、シルバーの出番はないと思いますよ。返してください」


依頼票を取り返しながらカケルが精一杯の牽制を投じるが、リアナは鼻で笑った。


「馬鹿ね。森の深部には強力な魔獣も出るわ。私のシルバーがいれば余裕だし、あんたの出る幕は今日もないわよ! さあ、行くわよ!」


結局、彼女を連れたまま、カケルはリスティアのさらに奥に広がる原生林へと足を踏み入れた。


道中、姿を見せたホーンラビットやフォレストウルフも、カケルが指示を出す前にシルバーの爪に沈んでいく。やはり今日も、茶渋たちが経験値を稼ぐ機会はなさそうだった。


深い緑の匂いと、湿った土の感覚。常に周囲を飛び回っているキンカチョウたちの索敵に何かが引っかかったようで、脳内にナビゲーターの声が響いた。


『前方三十メートル。Cランクの魔獣「フォレスト・バジリスク」接近』


「よし、位置は――いや」


カケルが歩き出そうとした、その時だった。脳内に落ちた情報に、反射的に全身の毛が逆立つ。


(……Cランク!? ここに来るまでに出てきた魔獣よりも格段に強い。茶渋、ワサビ君、みんな……しっかり連携を取らなきゃ)


「……リアナさん、止まって」


カケルの声に、先行していたリアナが不機嫌そうに振り返った。


「なによ、急に。どんな魔獣が来たって、シルバーなら一瞬よ」


「違うよ。ランクCの魔物が近くにいる。……しっかり構えて!」


カケルは茶渋の背中に手を置き、【威圧】の準備を整える。一方のリアナは、シルバーの首元を撫でながら、肩をすくめてみせるだけだった。


「ただの鳥の騒ぎでしょ? 臆病な召喚士は困るわね。ランクCだか何だか知らないけど、私のシルバーに勝てるわけないじゃない。……シルバー、行きなさい! 吠え面かかせてあげるわ!」


「えっ、ちょっとリアナさん!?」


カケルの制止も聞かず、不遜な笑みを浮かべたままのリアナは、迷うことなくシルバーに突撃を命じた。銀の狼は主人の意思を汲み取り、木々の間を抜けて凄まじい速度で索敵の『反応』の方角へと飛び出していく。


(……まずい、連携も何もないじゃないか!)


カケルは歯噛みしながら、先行する銀色の影を追って走り出した。

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


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