提案と葛藤
マヒロたちを取り囲む崩壊する校舎の悲鳴は、止まる気配を見せなかった。
割れた窓ガラスが散乱し、天井がきしむ音に混じって、生徒たちの悲鳴が響く。
何人かは崩れ落ちる床と共に闇の底に消えた。
「クソッ……!」
マヒロは歯を食いしばった。拳を握り締める。だが、どう足掻こうと、この状況を一瞬でひっくり返せる術などない。
「みんな、こっちだ!」
カイが叫び、キョウゴが砕け散る壁を素手で吹き飛ばしながら退路を作る。
ルナは負傷した生徒を抱え、必死に走っている。
「……アレク!」
マヒロは声を絞り出し、振り返る。
崩れた廊下の向こう、埃の帳を抜けて現れる長身の男。黒いコートを翻し、整った顔立ちに似合わぬ冷酷な瞳を携えている。
「貴様、いい加減にしろよ……!」
「随分な言われようだな。私はただ、お前たちに提案しに来ただけだ。淡海マヒロ、お前はもう知っているだろう」
アレクは表情を一切変えず、淡々と言う。
「ちっ……」
マヒロが睨む。
「私はサクラ嬢を連れて行きたいだけだ。こちらも無駄に死人は出したくない。大人しく差し出してくれれば、それで済む話だ」
場の空気が凍りついた。サクラが息を飲む。
「……どうして……私を……?」
「理由を話す義務はない」
アレクは冷淡に切り捨てる。
「だが、貴様らタイタニアなら理解できるはずだろう。彼女が“特別”だということくらい」
サクラが震える。
「サクラを……お前らに渡す訳がないだろう……!」
マヒロが低く唸るように言った。
「そうか」
アレクは揺るがない。
「何も貴様ら全員を潰すつもりはない。だが、抵抗するなら……結果は見えているだろう」
その視線は、確信に満ちていた。
「サクラ……」
マヒロが隣を見ると、サクラは唇を噛み締め、一歩前に出ようとしていた。
「……私が行く」
その言葉に、マヒロは反射的に腕を掴んだ。
「ふざけんな……!」
「でも、マヒロ君……」
サクラは必死だった。
「これ以上、誰かが死ぬのは嫌なの……!」
「だからって……お前一人で……!」
「いいじゃない。私が行けば、みんな助かるんだよ……!」
サクラは涙を堪え、笑おうとした。
「私は……マヒロくんみたいに強くないから……!」
マヒロは言葉に詰まる。
「やめろ……そんなの俺は許さねえ……」
目の前の少女が、震える声で、命を差し出そうとしている。
「私なんかで……みんなが助かるなら……」
「ふざけんなって言ってんだろ……!」
マヒロの声が震えた。
「お前がいなくなって、何が助かったって言えるんだよ……! そんなの……そんなのは……!」
視界が滲む。
「俺は……そんな助かり方、望んでねぇ……!」
「マヒロ……」
サクラが目を見開く。
「悪いが、こちらも長くは待てない」
アレクが無情に言い放つ。
「どうする。私にサクラ嬢を渡すか? それとも、力ずくでいくか?」
「……」
マヒロは唇を噛み、拳を握り込んだ。
「お前らが……サクラを狙ってるってんなら……」
マヒロは一歩踏み出した。
「……俺たちを殺す覚悟で来てんだろうが……!」
「……!」
サクラがマヒロを見つめる。
「誰が渡すか……! 俺たちは、絶対にお前らなんかに負けねぇ……!」
その言葉に、仲間たちが呼応する。
「役に立つか分からんが、俺もいる!」
カイが力強く拳を握る。
「芹沢をお前一人に背負わせるつもりはねぇよ」
キョウゴが続く。
「ここでお前らに屈したら……漢が廃るだろ」
ルナも、静かに頷いた。
「……私も……皆さんを守ります」
「お前ら……」
マヒロは仲間たちを見回す。
「くっ……!」
サクラが涙を拭った。
「みんな……ごめん」
アレクはその様子を、淡々と眺めていた。
「そうか……」
彼は一度、小さく息を吐く。
「ならば、仕方ないな」
再び、右手がゆっくりと持ち上がる。
「私も手加減はしない。全力で潰させてもらう」
空間がねじれる。
「構えろ……!」
マヒロが叫んだ。
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




