犠牲者たち
「――皆、大丈夫か?」
廊下に立つ淡海マヒロの声は、張り詰めた空気に吸い込まれるように消えた。
彼と共にいるのは、サクラ、ルナ、カイ、キョウゴ、そして救出されたミホと石田。全員がそれぞれ傷を負いながらも、ようやく合流を果たした。
彼らは、異常事態の収束を確信していた。戦いは終わり、学園は平穏を取り戻す――そう思いたかった。
だが、現実は違った。
「……」
教室の扉を開けた瞬間、一同は言葉を失う。
そこにいたのは、泥だらけで、血にまみれ、怯えきった生徒たちだった。
ある者は机に蹲り、肩を震わせて泣いている。ある者は、服を裂かれた傷口を押さえ、痛みに堪えている。そして――。
「あ……」
壁際にうずくまっている男子生徒がいた。腕は不自然な角度に曲がり、額には乾ききらない血の跡。その隣には、同じ制服を着た少女が寄り添っている。
「……何、これ」
サクラが小さく呟く。
「……お互いにやらせたんだろうな」
キョウゴが低く言った。「操られてたんだ。そういうことだろ」
マヒロやルナも思い当たる。片上ユリカが操られ、マヒロを襲った時のこと。あれは氷山の一角に過ぎなかったのだ。
(まさか……こんなに……)
マヒロは息を呑む。手が震える。だが、次の瞬間。
「おい、来たぞ……!」
「……あいつらだ!」
「バケモノだ……!」
教室の隅にいた生徒たちが、次々と顔を上げる。怒り、恐怖、嫌悪――あらゆる負の感情が入り混じった視線が、マヒロたちに突き刺さった。
「ふざけんな……! なんで、俺たちがこんな目に……!」
「全部、あんたたちのせいだろうが!」
「……死ねよ。お前らの顔なんて見たくない……!」
生徒たちは怯えながらも、怒号をあげる。血走った目で、震える声で、彼らは拒絶を示した。まるで、自分たちを破壊者だと罵るかのように。
「違う……!」
サクラが反射的に声を上げる。
「私たちは、皆を守ろうと――」
「守る? ふざけるなよ! だったら何でこんなことになったんだよ!」
男子生徒が机を叩いて叫んだ。
「お前らが変な“力”を持ってるせいで、こんなことになったんだろ!」
「消えろよ! もう関わらないでくれ!」
(――ああ)
マヒロは痛感した。彼らの言葉は理不尽だった。だが――正しい。
マヒロたちは、確かに戦っていた。だが、その“結果”として、生徒たちは巻き込まれ、傷つけられ、恐怖に晒された。
「マヒロ!」
弾かれたように前に出たのは、片上ユリカだった。
「みんな、誤解してる! マヒロ君たちは――」
「片上、お前……」
「まだそいつらに脅されてるのか?」
疑いの眼差しがユリカにも向けられる。
「違う! マヒロ君は……私たちを助けてくれた!」
ユリカは力強く叫ぶ。
「私、操られて……マヒロ君に酷いことをして……でも、マヒロ君は私を助けてくれたの!」
「……!」
ユリカの告白に、生徒たちはざわめく。
「……信じられねえよ」
「……嘘じゃない。私は、見た。マヒロ君が必死にみんなを守ってた」
ユリカは拳を握り締め、涙を堪えながら必死で訴える。
「お願い……もう、責めないで……!」
その横で、同じくイザヤ戦を共にした生徒たちも口を開いた。
「あの時……俺も助けてもらった」
「淡海は……命懸けで、守ってくれたんだ」
「……だから、責めるのは、やめてくれ」
言葉が重なる。最初は疑念に満ちていた生徒たちも、少しずつ怒りが薄れていく。それでも恐怖や不安は消えない。誰もが傷つき、限界だった。
「……おい、もうやめようぜ」
一人の男子生徒がポツリと呟いた。
「俺たち、今は……休むべきじゃねぇのか」
「ああ……そうだな」
怒号が静まり、教室内には沈黙が戻る。
マヒロはホッと息をついた。
「ありがとう、片上」
小声で伝える。ユリカは涙を拭いながら、微笑んだ。
「ううん。私……助けてもらったから」
マヒロは、ぎこちなく頷いた。
(……俺たちは、守れたのか?)
心の中には、まだ答えの出ない問いが残っていた。
その後、生徒たちを落ち着かせ、応急処置を施しながら、マヒロたちは校舎内を回って安否を確認した。
廊下には血の跡が残り、割れたガラスが散乱していた。倒れている生徒の中には、意識が朦朧としている者もいた。彼らを担ぎ上げ、保健室へと運ぶ。
その道中も、生徒たちの視線は冷たかった。まるで、“力を持つ者”を異物だと見るかのように。
(これが、力を持つってことか)
マヒロは噛み締める。“力”を持つことは、守ることもできる。だが同時に、“力”を持つ者は、恐れられる。
「……」
マヒロは拳を握った。どんな視線を浴びせられても――前に進むしかない。守るために――。
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




